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海の見える街

潮を含んだ風が私の身体にまとわりつく。
一定の流れる波を見ていると、すべての感情を連れ去ってくれるような気がする。

暗い夜の海に浮かぶ船、明るいライトを照らしているのはイカ釣り漁船だから、そう教えてくれたのはあなたでしたね。

地元にもこんなに綺麗な海があったことも、その海への近道も、教えてくれたのはあなたでした。

車の中はいつもあなた色でしたね。
好きな音楽は同じでも、選曲はまったく違くて、私の選曲は眠くなる、と毎度言っていましたね。
私はあなたの選曲はテンションが上がりすぎて疲れました、なんてね…この曲達を聴いていると今でもあなたを思い出します。
やっと私にも思い出と音楽が繋がったようです。

夏が好きと言いながら、汗を掻くのは嫌なんだと、トンチンカンな事を言っていましたね。
活発なようで意外とゆっくりする事の方が好きなんだと、あなたの秘密を知ったようで嬉しかったです。

意外といえばもう一つ。
あなたはマメでしたね。デートプランなんてほとんど立てていなかったけれど、次はここに行こう、これをしようと引っ張ってくれました。
覚えていますか?
みんなで行った、ニンニク屋さん。
私は次の仕事の事を考えて食べるのを控えていたら、あなたは空いた時間に一緒にコンビニに連れて行ってくれましたね。
場の空気を汚さないようにいつも気を配っていて、私は心配でした。

そういえば、いつも2人の時は私にご飯を選ばせてくれていましたね。
不機嫌になるから。
本当、その通りです。

あなたとの最後の晩餐は何でしょう。
ラーメンかな。
ダイエットしろなんて言うのに、いざ本格的に始めて深夜のラーメンを断ったら、つまらないなんて文句を言って。
あの時ダイエットなんてしなかったら良かったのかな・・・なんて。

海はいつまでも綺麗です。
「海の見えるところに住みたい」
同じ夢を見ていましたね。
叶いましたか?
あなたの見ている海は綺麗ですか?
同じ海を見ていますか?


ザッザッザッ


「おーい、帰るぞ〜」

私は来月ママになります。

この、海の見える街で。


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