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ウワサを検証!「美肌のためには22時から2時のゴールデンタイムに寝ないといけない?!」

皆さんはしっかりと睡眠を取れていますか?
忙しい日々を過ごしていると毎日十分な睡眠時間を確保することは難しいのではないかと思います。

『美肌のためのゴールデンタイムがあるらしい』というウワサについて、
一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?

アンケート調査によると、
「22時~2時までのゴールデンタイムの睡眠は美肌に良い」と
72.7%「そう思う」と回答しました。

図1:アンケート調査結果「22時~2時までのゴールデンタイムの睡眠は美肌に良いと思いますか」
引用:美肌にまつわる12の都市伝説】「美肌のゴールデンタイムを信じる人は7割以上」も、医学的根拠なし!? 調査結果の正誤を美容専門ドクターに聞いてみた、東京イセアクリニック¹⁾より転載

多くの人が信じているこのウワサ、果たして本当なのでしょうか?

今回は、
・ウワサの真実
・睡眠と肌のメカニズム
・美肌に影響を与える生活の工夫

について解説していきます!


「22時~2時までのゴールデンタイムの睡眠は、美肌に良い」このウワサの真実は?!

①「睡眠のゴールデンタイムは22時~2時である」は本当か?

このウワサについては、結論としては正しい理解ではありません。
ゴールデンタイムとは、22時から2時という決められた時間のことではなく、正しくは"睡眠中に成長ホルモンが盛んに分泌される時間帯”のことを指します。
睡眠中の成長ホルモン分泌のタイミングを調べた研究結果では、"成長ホルモンの分泌量のピークと睡眠の深さが関係している”という報告があります²⁾。
つまり、朝方に入眠したとしても、深夜0時前に入眠したとしても、深い眠りにつく時間をゴールデンタイムというのです。

①の誤解が生まれた経緯

では、なぜこのような誤解が生まれてしまったのでしょうか。

はっきりとはわかりませんが、
・一般的に入眠時間が22時~2時という人が多く、(後ほど詳しく説明しますが)入眠後90分~3時間程度で深い眠りにおちいる人が多いということから、この22時~2時の間に成長ホルモンが多く分泌されるだろうと推測された³⁾説
・子供の夜更かしを改善し、寝かしつけるための文言から派生した説
などが言われているようです。

実際に私も小さい頃に母親から「22時までに寝ないと大きくなれないよ!早く寝なさい!!」と言われていた時期もありました(笑)

"寝る子は育つ”ともいわれていますし、子供の成長を気づかう親の想いが、いつしか世の中で共通の認識として広がってしまったのかもしれませんね。

②「睡眠と美肌は深いつながりがある」は本当か?

このウワサについて、結論としてはつながりがあります。
睡眠の質の低下は肌の老化に影響するのかを調べた研究結果において、"睡眠の質が良い人(※1)、睡眠の質が悪い人(※2)に比べて肌のバリア機能の回復が 30% 高くなった”ということが報告されています⁴⁾。

※1:睡眠の質が良い人
睡眠時間5時間以上で、PSQI(睡眠障害の程度を評価するためのスケール)にて睡眠障害の程度が低いと判断された人
※2:睡眠の質が悪い人
睡眠時間5時間以下で、PSQI(睡眠障害の程度を評価するためのスケール)にて睡眠障害の程度が高いと判断された人

では、睡眠によってどのように美肌に導いているのでしょうか?
睡眠が美肌に導くメカニズムについて解説していきます!

睡眠と美肌のメカニズム

■睡眠と成長ホルモンの関係

入眠して成長ホルモンが分泌されるまでのメカニズム⁵⁾⁶⁾は以下であると考えられています。

①入眠すると間もなく、大脳視床下部の神経細胞から下垂体前葉へ「成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)」と「成長ホルモン抑制因子(GIF)」が分泌される
②「成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)」と「成長ホルモン抑制因子(GIF)」によって「成長ホルモン(GH)」の分泌量が調整される
③調整された「成長ホルモン(GH)」が下垂体前葉から肝臓へ分泌される

図2:睡眠と成長ホルモン分泌メカニズム(イメージ図)

■成長ホルモンと肌の関係

成長ホルモンと肌の関係について解説します。

成長ホルモンと肌の関係は様々な研究が行われています。
その中でも「成長ホルモン(GH)」によって肝臓から分泌される「インスリン様成長因子(IGF-1)」で、うるおい成分やコラーゲンなどを作る角化細胞と線維芽細胞の生成を促進することが報告されています⁷⁾。

図3:IGF-1を添加した細胞増殖率
引用:成長ホルモンの美肌効果が加齢によって阻害されるメカニズムを解明、MENARD⁸⁾より転載

以上のことから、肝臓へ分泌された成長ホルモンと肌との関係は以下のメカニズムが一因として考えられます。

①「成長ホルモン(GH)」によって肝臓から「インスリン様成長因子(IGF-1)」が分泌される
②「インスリン様成長因子(IGF-1)」によって「角化細胞」や「繊維芽細胞」などのタンパク質の合成が促進される。
③うるおい成分やコラーゲンなどが生成され、肌の再生機能や代謝機能が正常に保たれる

図4:成長ホルモンと肌のメカニズム(イメージ図)
引用:成長ホルモンの美肌効果が加齢によって阻害されるメカニズムを解明、MENARD⁷⁾より転載

つまり、

睡眠をとることで成長ホルモンが分泌される
       ⇩
肌に必要なタンパク質が作られる

というつながりが考えられるのです。

美肌に影響を与える生活の工夫

【1】睡眠によって美肌に影響を与えるには

上記で睡眠と肌のメカニズムについて解説しましたが、
美肌に影響を与えるには「成長ホルモンの分泌」が重要な要素の1つになります。

では、成長ホルモンの分泌を高めるにはどうしたら良いのでしょうか?

成長ホルモンの分泌を高めるためには、最低でも3時間以上の‘‘まとまった睡眠時間の確保‘‘が重要です。
何度も途中で目覚めて細切れに長時間寝るのではなく、まとまった時間寝ることが大事です。

まとまった時間寝ることができた健康な睡眠では、約90分周期でノンレム睡眠(※1)とレム睡眠(※2)が交互に訪れます⁸⁾。
この睡眠リズムが保たれていると、入眠後90分~3時間程度でノンレム睡眠という深い睡眠時で成長ホルモンが分泌されます。
睡眠リズムが分断されてしまうと、成長ホルモンの分泌量も減ってしまいます。

図5:睡眠リズムと成長ホルモンの関係性
引用:NATIONAL GEOGRAPHIC「健やかな睡眠のカギを握る「メジャースリープ」とは」
国立精神・神経医療研究センター三島和夫氏の研究データより転載⁸⁾

まとまった睡眠時間が取れても、深い眠りに陥らないと成長ホルモンは十分に分泌されません。
つまり、細切れな睡眠時間では十分な成長ホルモンの分泌が見込めないことがわかりますね!

お昼寝をよくとる私ですが、成長ホルモンの分泌を高めるには関係がないことを1つ勉強しました(笑)

※1:ノンレム睡眠
入眠直後に現れる深い睡眠。脳も身体も休める目的があると言われている。次のレム睡眠出現が近づくにつれ、眠りが浅くなっていく。
※2:レム睡眠
脳は覚醒状態で体を休める目的がある睡眠と言われている。

【2】美肌のために成長ホルモンの分泌を高める工夫

成長ホルモンの分泌を高めるためには、‘‘まとまった睡眠時間の確保と深い睡眠‘‘が重要ですが、とはいえ、忙しい毎日を過ごしていると、寝る時間を十分に確保できなかったり、気になることが多くて浅い睡眠になってしまうことも多いですよね。

そんな忙しい毎日を送る皆さんに、成長ホルモンの分泌を高めるために工夫できることを2つお教えします!

①日中空腹を感じる時間を作ること

睡眠時間以外にも成長ホルモンの分泌を促進する「グレリン」という物質は、日中空腹に感じる時間を作ることが重要です。
「グレリン」とは、胃から分泌されるペプチドで胃が空になると産生促進されます⁹⁾。
「グレリン」は、空腹を感じさせるという特徴もあります。
つまり、空腹を感じた頃には「グレリン」が分泌されているため、
空腹を感じるまで食事の間隔を空けることが重要であると考えられます。

よく病院で伝えられている絶食とは、大体3~4時間程度食事を取らないことだそうです。
食事の間隔を過度に空けすぎて倒れないように気をつけてくださいね(笑)

図6:グレリンと成長ホルモンの関係
引用:グレリンの構造と機能,生化学 第79巻 第9号,pp.853-867,2007⁶⁾より転載

②寝る時には部屋の明かりを暗くすること

グレリン以外にも「メラトニン」という物質を分泌させると、成長ホルモンの分泌が高まります。
「メラトニン」とは、脳から分泌され、夜間に室内照明を含む光を浴びると分泌が抑制されることが報告されている⁵⁾物質です。
「メラトニン」は、強力な抗酸化作用を持つ特徴もあります¹⁰⁾。
肌の酸化は、炎症を引き起こしたり、シミやシワ、たるみやくすみなどの肌トラブルの原因を引き起こします。
そのため、「メラトニン」はこのような肌トラブルを防ぐことにもつながるのです。
つまり、成長ホルモンの分泌を促進するためにも、肌トラブルを防ぐためにも、就寝時にはしっかり照明を落とし、メラトニンの分泌を促進させることが重要であると考えられます。


この記事のまとめ

ここまでの流れをまとめると、以下のようになります。

★ PM10時からAM2時=ゴールデンタイムは誤解である
★ゴールデンタイムは、睡眠中深い眠りにおちいり成長ホルモンの分泌が高まっている時間を言う
★ ゴールデンタイムが美肌にいいは本当
★ 睡眠と肌のメカニズムは、「睡眠をとることで成長ホルモンが分泌され、それによって肌に必要なタンパク質が作られる」と考えられる
★ 睡眠によって美肌に影響を与えるには‘‘まとまった睡眠時間の確保と深い眠りにおちいる睡眠の質‘‘が重要
★ 質の高い睡眠が確保できない場合は、「日中空腹を感じる時間を作ること」と「寝る時には部屋の明かりを暗くすること」で美肌になれる

この記事を書いて、夜更かしせずに早く寝てしっかり睡眠時間を確保できるように心がけようと感じました(笑)。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
この記事が肌をきれいに保つために、生活スタイルを変えるきっかけになれば幸いです。

(執筆:平田)

参考文献)
1)美肌にまつわる12の都市伝説】「美肌のゴールデンタイムを信じる人は7割以上」も、医学的根拠なし!? 調査結果の正誤を美容専門ドクターに聞いてみた,東京イセアクリニック,PRTIMES,(参照:2023/10/17)
2)Growth hormone secretion during sleep,Y. Takahashi,J Clin Invest,47(9),2079–2090,(1968)
3)睡眠のゴールデンタイムは22時〜2時という「嘘」,小林孝徳,JAPANForbes,(参照:2023/10/17)
4)Does poor sleep quality affect skin ageing?,P Oyetakin-White,Clinical and Experimental Dermatology,Volume 40,Issue 1,Pages 17–22,(2015)
5)睡眠関連ホルモンの計測,田ヶ谷浩邦,生体医工学,46(2),169-176,(2008)
6)成長ホルモンの適正使用に関する見解,公益財団法人 成長科学協会,(参照:2023/10/17)
7)成長ホルモンの美肌効果が加齢によって阻害されるメカニズムを解明,日本メナード化粧品株式会社,MENARD研究・商品開発,(参照:2023/10/17)
8)健やかな睡眠のカギを握る「メジャースリープ」とは, 株式会社日経ナショナル ジオグラフィック, Webナショジオ, (参照:2023/10/17)
9)グレリンの構造と機能,児島将康,生化学,第79巻 第9号,pp.853-867,(2007)
10)メラトニンの抗酸化作用と生殖,Hiroshi Tamura,Glycative Stress Research,ISSN 2188-3610,(2019)