映画『LOVE!TAMAGAWA!』脚本【VOL.4】
○203号室
瞬、出来上がったパスタをテーブルに並べて、食べながら小林裕のバラエティ番宣を見る。
男の司会「今度は小林裕さんと黒木彩華さんにスタジオにご来場いただきました。これから放送するドラマ、お二人のご出演ですよね」
女の司会「少しネタバレしていただけないでしょうか。視聴者のみなさまはきっと私と同じように楽しみにしているはずです」
小林「簡単に言うと、夏頃に起きたラブストーリーです」
黒木「夏といえば、恋の季節というイメージですよね」
男の司会「小林裕さんはデビューしてから15年経ったんですよね」
小林「はい、15年経ちました」
男の司会「この長い間、あんまり恋愛ドラマ出演してないような…普段もクールというイメージが強いですし」
女の司会「でも今回小林さんは撮影現場で黒木さんのことに特別に優しくしてくれたようですね」
黒木「実は小林さんは私たち撮影チームのみんなに親切にしてくれていて、本当に素敵な方です」
女の司会 「小林さんのタイプをお伺いしてもよろしいでしょうか」
小林「まあ、そうですね〜前にも言ったと思うんですけれども、仕事にはまじめで、生活面ではちゃんと自分のお世話が上手な人がいいですね」
女の司会「へえ~聞けば聞くほど、黒木さんのイメージがわいてきますね」
瞬(独り言)「黒木彩華、なんか聞いたことがあるような名前。肌つるつる…目も私の倍ぐらいかな…しかも顔は私の半分(指でスクリーンに映る目と顔をはかる)」
○204号室
食事しながらスマホでエゴサをする寛 人。インスタ、ツイッター、一通り検索したところ、新しい住所にかかわる投稿は何も書いていない。ほっとする寛人。
○204号室・ベランダ(夜)
寛人、壁にもたれてiPadで漫画を読む。隣からベランダの扉を開ける音が届く。
○203号室・ベランダ
瞬、壁にもたれてiPadで音楽を流しな がら台本を書く。
○204号室・ベランダ
寛人「サインをもらいに来ないのかよ…まさか、俺のことを知らないとか…はないよな」
漫画を読む気がなくなる寛人。
隣から松田聖子の歌声が届く。落ち着きを取り戻す寛人。
╳ ╳ ╳
201号室からやかましいドラムの音が流れ込む。
○203号室・ベランダ
瞬、iPadを持って部屋に戻る。ベランダの扉を閉める。
○204号室・ベランダ
寛人、立ち上がり周囲を見回る。音の源が確認できず、驚いてもどうしようもない寛人。部屋に戻り、ベランダの扉を閉める。
○土手(夕)
マスクも帽子もなしのままジョギング をする寛人。周りの通行人の視線が気になり、避けるようにする。松葉杖をつくおばあさん、金髪の少年たち、足を急がせるサラリーマン姿のおじさん、自転車の乗り方を教える若いお母さん、次から次へと寛人のそばを通り過ぎる。気づいてくれる人が誰もいない。寛人、スピードをあげ、遠くない先の商店街へ。
○商店街 八百屋
客でいっぱいのお店に、寛人が入る。
果物や野菜がずらりと並んでいる。何を買ったらいいか迷う寛人。隣のおばさんがジャガイモを選び取る。寛人もジャガイモを選び取る。何周か回ったら、隣にいる主婦の後をつける。主婦の買った通りに買う。レジ横のスイカが目に入る。
寛人「スイカを一つください」
販売員「お一人でしょうか。半分で十分ですよ」
寛人(逡巡する)「やっぱり一つで」
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