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人生で無駄なこと。

黒澤明監督作品の「生きる」を観た。

映画好きと自覚しつつ黒沢作品は観ておらず、瀧本哲史氏の著書「君に友だちはいらない」に黒沢監督の映画の作り方が紹介されていたことで興味を持ち、「七人の侍」「天国と地獄」「生きる」を立て続けに観た。

いずれもモノクロ作品で映像や音声は最新の映画とは比べ物にならないが、作品の質はそんなものを吹き飛ばすものだった。

で、先日「生きる」を観終えたのだが、今回観た3作品の中ではもっとも好きな作品である。

ストーリーは、市役所で活気なく仕事をしている男性が病気を機に、その後の生き方を変えていくというもの。

その男性のセリフに、「私には人を恨んでるような時間はない」というものがある。

病をおしながらすすめる仕事の過程で対立する人について口にしたセリフだが、今まさに人間関係に悩む私にとって強烈に刺さる言葉だった。

劇中の男性は病を背負いながら、いつまで体が動くかという状況であったが、先のセリフは万人に通じる。

人生がこれからどれくらいあろうと、「人を恨んでる時間はない」のだ。

お金でも時間でも、食べ物だって、残りが多ければその価値を軽く考えがち。締切の前日、財布の100円、チョコレートのラスト1かけ。本来どの瞬間であってもその価値は変わらない。

健康であり、人生の終わりがまだ見えないとき、どうでもいいことに時間を使ってしまう。

「どうでもいいこと」は別に生産性のないことだったりボーッとすることではない。

まさに「人を恨むこと」だと思う。

その時間で誰も得しない。相手はそれを知らず、自分はそれを考えることで心の安定を失う。得どころか損しかない。無駄中の無駄である。

このタイミングでこの映画を観れてよかった。

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