恋の季節は、風を探して
かすかに桜の匂いがする。
深夜の散歩が気持ちのよい季節になってきた。
春が始まろうとしている。
出会いの季節が、心弾む恋の季節が、始まろうとしている。
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恋の季節は、心が優しくなる。
冷たい時間が終わり、胸の中にじんわりと温かいものが広がる。
冬、長い試練を乗り越えた人もいるだろう。
その先で出会った自分は、優しさを身に纏っている。
優しくなった自分は、新しい恋を、受け入れるだけの余裕がある。
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例えば、入学式の時。
名前も知らない、その子の横顔を見つけてしまった。
一瞬だ。
恋に落ちるのなんて、一瞬だ。
春の重力に対して、僕らはどうすることもできない。
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恋の季節は、生きててよかったと思う。
苦しいこともあるかもしれないけれど、それでも、生きててよかったんだ、と思う。
キラキラしたものを目の当たりにして、人生も案外悪くないんだな、と知る。
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例えば、新しい会社への就職が決まって上京をした時。
これから住むことになる家は、それなのに、どこか懐かしい匂いがした。
その空間で、これから繰り広げられるであろう、輝かしいドラマを想像する。
新しい出会いを、自分に訪れるであろう美しい逢瀬を、無邪気なほど純粋に、夢見る。
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恋の季節は、風を探したくなる。
この気持ちはどこからやってくるのだろう?
この風は、どこから吹いてくるのだろう?
そんな、考えたところで絶対にわからない問いに対して、悶々と思いを巡らせては、妙に嬉しい気持ちになる。
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そろそろ、そんな恋の季節がやってくる。
世界中で生まれようとしている新しい恋に、想いを馳せながら。
僕はいま、風を探している。
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