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卒論で横浜国立大学野球部の2023年シーズンの打順構成を検証してみた。

先日卒業論文を執筆しました。私の卒論テーマは、

「マルコフ連鎖に基づく最適打順の検討」

です。先行研究に則り、マルコフ連鎖(行列)を使って野球のシミュレーションを行いました。使用したプログラミング言語は R です。今回の研究の主な目的は、私が所属した横浜国立大学硬式野球部(以下、国大野球部)について、その2023年シーズンの打順構成を数理的に検証することです。私自身が、2023年シーズンの国大野球部の打順構成に深く関わっていたため、私の考えを数理的に検証してみたくなりました。
それぞれの選手は、打席ごとに打撃成績が残ります。単純ではありますが、その成績からこの選手は何%の確率でアウトになり、何%の確率でヒットを打つといったデータを作成できます。そのような選手の成績(=データ)を元に、それぞれの選手が自らの持つ確率通りに行動すると考えてシミュレーションを行いました。ただし、打撃成績は、
「アウト」「四死球」「単打」「二塁打」「三塁打」「本塁打」
に限定しています。盗塁や併殺などは考慮していません。今回は、2023年秋季リーグ戦で主力として活躍した9選手について、2022年11月から2023年10月に行われた計64試合(AチームOP戦とリーグ戦)の成績を元にシミュレーションを行いました。以下は、卒論の全文です。

9選手の打順について、考え得るパターンは全部で 9! = 362, 880 通りあります。そのうち最も得点を取れる確率が高いのは、以下の表 4 の打順でした。その期待得点(平均的に取れる得点)は、 3.8361 点です。ちなみに、今回参考にした全64試合の平均得点は4.0625 点です。この乖離は、シミュレーションではバント、盗塁、犠飛などの諸要素を考慮していないことが原因です。また、表 5 には、国大野球部が2023年のリーグ戦全23試合の中で最多得点(11点)を挙げた試合の打順を載せました。

結果として、以下の考察が得られました。このような考察に至った経緯は、卒論に詳しく書いています。また、この考察は、「あくまで国大野球部で2023年シーズンに主力として活躍した 9 選手の打順構成について言及したものである」ということにご留意ください。全ての野球チームにあてはまる普遍的なことを述べているわけではありません。

最も優秀な打者は 1 番に置くべき
出塁(アウトにならない)能力が高い打者は、より前の打順を打つべき
・打順の循環する性質から 9 番打者と 1 番打者の繋がりが重要
最も優秀な 1 番打者の前にランナーを置くために、 8 番打者も重要
最も打撃成績(特に出塁に関する指標)が悪い打者は 6 番前後に置かれるべき

実際の打順と比較すると、秋季リーグ戦でリーグ 3 位の打率を残した鈴木が 8 番を打っていたことは、かなり得点力の向上に寄与したことがわかります。他のチームでシミュレーションをしたら、また違った面白い発見があるかもしれません。
この研究は、あくまで数理的に最適な打順構成を検討しています。正直、現役当時の私がこれを見せられてもだから何だとなります。選手の走力、盗塁能力、犠打の技術、打球方向、相手投手との相性、作戦系の想定、打撃の調子、与える役割といった、打順を検討する際に考慮する面白さが何も反映されていません。ただ、コンピュータを使って野球をシミュレーションできるということそれ自体には価値があるのではないでしょうか。実際、シミュレーションの期待得点と、実際の平均得点との差は約 0.2 点のみであり、かなりの精度です。例えば、この数理モデルを使ってチームの得点力を予測することで、リーグ戦前に、10試合以上に及ぶリーグ戦の戦い方を議論する材料になるかもしれません。
気が向いたら、盗塁、バント、併殺などの概念を導入したモデルを作ってみようと思います。また、プログラミングに苦しみ非効率なコードになっているので、効率化のためにどなたかご教授いただきたいです!このチームの検証をして欲しい!してみたい!などあれば私のXのDMでご連絡ください!

https://twitter.com/coachingninjatk?fbclid=PAAaa01yZ-3DvtIGN7Loq3MW1VYsAYVPkKhjz0Zd94et2ZXy5C2gBb2TxHjRM_aem_AejC-On02KNpp3KZnUt4SYTBifLzaROFnOo3y3762cp8TQGroLPtqvXBbKYX9dJsDxs


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