俊山英/コーチング心理支援

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俊山英/コーチング心理支援

俊山英ToshiyamaSuguru/障害児支援に従事した後、脳の多様性の観点から広く一般の社会人の成長を支援するため起業。社会人の心の発達支援を広めるため協会設立。一般社団法人日本産業コーチ協会代表理事。特定非営利活動法人ホスピタリッチ理事長。行動分析学会。

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  • 私説コーチング論

    コーチングによる心理支援を専業にし、個別提供実績3500時間を経て思うことを綴るエッセイ。

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    「COACHECK」(コーチェック)『資格取得のためではなく、人の心を支える支援に役立つ情報』をコンセプトに、対人支援をされている方・カウンセリングやコーチングで起業を目指されている方向けに発信。

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「共感」の定義は変更されていた

最近のSNSやマーケティングの中で頻出するキーワードに「共感」があります。 他者の体験や表現を見聞きし、自分も同様の体験や想いをしたことがあるという認識にもとづいて「わかる」と反応することを指して、このキーワードが使われることが主流になっているように思います。 カウンセリングやコーチングなどの対話を中心とした支援でも、この「共感」という言葉が登場しますが、世間とは別の意味合いで使われています。 上述の内容との対比でいえば、自身の体験にもとづかず、他者の体験について推し量

    • 【シリーズ最終】パーソナリティ理論⑤「再統合のプロセス」編

      ロジャーズの「パーソナリティ理論」をシリーズで解説してまいりましたが、今回が最終回となります。 パーソンセンタード・アプローチの意味がわかる理論と題してお送りしてきましたが、今回の「再統合のプロセス」にもその要素が含まれています。(1) ここでは、共感的理解(感情移入的理解)と、無条件の肯定的配慮を伝達する方法が示されています。 また、クライアントとの対話が、どのようなことを目指して発展していくのかも、わかってきます。 1.再統合にいたる条件 自己概念に反する実際の行

      • パーソナリティ理論④「防衛と解体」編

        1.「矛盾した行動」 『パーソナリティ理論③「価値の条件と不一致」編』でご紹介した、自己概念と実際に起きていること(経験)との間で生じる「不一致」ですが、その不一致とよく似たことが、行動面にも表れます。 実は、パーソンセンタード・アプローチを支える理論は、行動変容について論じられることが多くあります。 それは、基本的に行動というのは、自己概念と一致するようにして生じる傾向があると、考えられているからです。 まずは、この点から解説していきます。 1-1.自己概念に沿

        • パーソナリティ理論③「価値の条件と不一致」編

          1.「価値の条件」 前回『パーソナリティ理論②「自己の発達」編』の『3.愛情の関わり』で、「自分になにかあっても、他者が大切にしてくれて安心させてくれる」というような体験を「肯定的な配慮positive regard」として解説しました。 今回は、その次の段階についてです。 一言でいうと、肯定的配慮が条件つきで得られるようになっていく、というものです。 詳しくみていきましょう 1-1.愛や拒否を手がかりに成長する 幼児は保護者とのやりとりから「肯定的配慮」という、い

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          パーソナリティ理論②「自己の発達」編

          心理支援では「自己」という言葉を、よく使います。 学派や理論によっても、意味するところは微妙に変わってくるので、今回のパーソナリティ理論②「自己の発達」編では、パーソンセンタード・アプローチは、どのような意味で「自己」を扱っているのかについて、みていきます。 そして、このパーソナリティ理論では、どのように自己が作られていくのかという観点から、赤ちゃんの頃までさかのぼって理解を進める構成になっています。 それでは、さっそく乳児期からみていきます。 1.「分化」 生ま

          パーソナリティ理論②「自己の発達」編

          パーソナリティ理論①「自分の体験=現実」編

          クライアントを含むひとを、どのような存在として認識しているのか。これについての考えを「パーソナリティ理論」や「人間観」などと呼びます。 心理カウンセリングなどの心理学的理論に依拠する支援は、必ずこれにもとづいて、クライアントの対応をします。 これがなければ、心理支援が、何のためにどのようなことをするのかが明確でなくなるからです。 もちろん、パーソンセンタード・アプローチにも、このパーソナリティ理論が存在します。 この理論をある程度理解すると「無条件の肯定的配慮(関心)とは具

          パーソナリティ理論①「自分の体験=現実」編

          パーソンセンタード・アプローチとは

          この記事では、アプローチの理論説明をしていくにあたり、関係するロジャーズの他の理論を、部分的に参考にしています。 たとえば、人をどのような存在として認識しているのかという「パーソナリティ理論」や、「セラピィの理論」を一部参考にしています。これらの関係する理論については、別途記事にしてご紹介して参ります。 それではさっそく、アプローチに関わる「パーソナリティ理論」の一部をご紹介していきます。 1-1.パーソナリティ アプローチ理解のために、先に「パーソナリティ理論」(1)の

          パーソンセンタード・アプローチとは

          ロジャーズが"NO"としたアプローチ

          まえがき パーソンセンタード・アプローチ(旧:来談者中心療法)は、専門用語も少なく、病理で人を捉えないこともあって、その馴染みやすさから、世界的に有名なアプローチとなりました。しかし、その馴染みやすさによって、多くの誤解を受けたアプローチでもあります。 そういう筆者自身も、多くの誤解をしていました。大学でカウンセリングを学び、キャリアコンサルタント養成講座でも来談者中心療法について触れてきましたが、いざ支援現場にでると、うまく行かないことだらけで、「共感的理解とは、具体的

          ロジャーズが"NO"としたアプローチ

          来談者中心療法とコーチングの関係

          1.初期のコーチングは心理学的理論があった コーチングは、誰か一人の人物によって提唱されたアプローチではなく、ある種の社会的現象として、複数人の人物を中心に誕生したという経緯があります。 そのため、ひとえにコーチングといっても、当初からさまざまなアプローチが存在しています。 「コーチングとは何か?」という問いに答えようとする時、それぞれのコーチングに共通して影響を与えていた要素に焦点が向けられます。 コーチング創始期の人々に、共通して影響を与えていたものに、人間性心理学

          来談者中心療法とコーチングの関係

          コーチングの歴史

          ◼️まえがき 最初にお伝えする「コーチングの歴史」ですが、どのように書こうか非常に悩みました。なぜなら、調べるほどに社会的に決して良いとは言えない要素が多くあり、コーチングそのもののイメージダウンにつながる可能性を懸念したからです。 それでも、コーチングについてのネガティブな側面もセットで理解することで、現在に至るまで多くの人々によって磨かれ発展してきたことも伺い知れます。 今では多岐に渡る分野で、コーチングの可能性が見いだされるようになりました。 さらなるコーチングの発