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「コーチングを通じて社会を変える」取り組みをまとめてみた
こんにちは。
国際機関で貧困削減の仕事をしながら、
ときどきコーチもしているTomoです。
コーチングにはいろんなスタイルや目的がありますが、
僕が一番情熱があるコーチングは、
「社会問題の解決につながるコーチング」です。
ライフコーチングやエグゼクティブコーチングと比べると
あまり聞いたことないコーチングの分野ですが、
英語だとSocial Impact Coachingとして
いくつかの取り組みが出てきたり、
日本発の取り組みもあり、
実際に僕が参加しているものもあります。
まだまだこれから発展する分野かとおもうのですが、
今の時点で見つかった取り組みの一部を、
社会貢献×コーチングに興味のある方向けに、
まとめてみました。
あらかじめお断りしておくのですが、
こういうコーチングは社会に貢献するし、
こういうコーチングは貢献しない、というふうに
白黒はっきりした世界ではありません。
この記事では厳密な定義や形にこだわるよりも、
こんな取り組みや考え方がある、ということを
知ってもらえるきっかけになればうれしいです。
そもそもコーチングは社会貢献?!
社会的なコーチングのアイディアを紹介する前に、そもそも、コーチングをクライアントに提供すること自体が社会貢献である、という考え方をまず紹介したいと思います。
コーチングは、たとえば国際コーチング連盟によって
思考を刺激し続ける創造的なプロセスを通して、クライアントが自身の可能性を公私において最大化させるように、コーチとクライアントのパートナー関係を築くことである
と定義されています。このプロセスを通じて、
クライアントの自己実現
自己肯定感の増大
他者との関係性の強化
ライフバランスの改善
健康状態の改善
仕事のパフォーマンス向上
などの成果が期待されるので、人々の幸福度、ウェルビーング、関係性を向上させる方法として、社会に貢献しているという捉え方がまずできるとおもいます。
そのうえで、さらに一歩、社会貢献を意識したコーチングのこだわり(ソーシャルインパクトコーチング)の例を見ていきたいと思います。
対象者へのこだわり①プロボノで、社会的に立場が弱い人に対してコーチングする。
コーチングの価格設定はコーチの経験値などによりだいぶばらつきがありますが、プロコーチの場合、1時間のセッションが数万円かかることもめずらしくありません。
エグゼクティブやビジネスパーソンには自己投資の費用として負担できる内容であっても、だれもがアクセスできる価格ではありません。この価格設定では特に社会的に立場の弱い人たちや経済的に困窮している人たちがコーチングの便益を受けることができづらくなり、貧富の格差を解消するどころか、格差を拡大してしまうような社会的な影響もあるかもしれません。
そこで、「社会的に立場の弱い人もコーチングを受けられるようにしよう」という活動があります。
Coaching for Everyone
アメリカのCoaching for EveryoneというNPO団体では、二つの事業を通じて誰もがコーチングを受けられるように支援をしています。一つ目の事業は、もともとコーチングをなかなか受けられない黒人、ネイティブアメリカン、有色人種の人たちに無償で6時間のコーチングを提供しています。ICFの資格保有者向であれば、1か月2回のセッションを3か月無料で提供するコーチも随時募集しているようです。二つ目の事業では彼ら、彼女らがコーチになりたいと思ったときに、コーチになるための教育を受けられるよう支援を行っています。
コーチングスクールによっては、社会的、経済的な要因を考慮して、一部の参加者に対して、受講料の割引などを行うスクールもあるようです。
対象者へのこだわり②社会を変えようとしている人にコーチングをする
コーチングの対象者を選ぶという点で、もう一つのアプローチは「社会を変えようとしている人にコーチングを提供する」というものです。
社会問題を解決しようとする団体や個人を対象にして、パフォーマンス向上や自己変容をサポートすることで世の中の社会問題解決のサポートをする取り組みです。
ソーシャルコーチ
僕も第1期として参加しているhal社のソーシャルコーチプログラムは、「社会を良くする意図を強く持つ社会起業家と、本気で生きる人をエンパワーしたいコーチを繋ぐことはできないか」という想いから生まれたプログラムです。<社会起業家こそが「心と向き合う」文化を牽引する未来を、共に創ること>をビジョンとして、マッチングを行うだけではなく、学びとコミュニティの要素も取り入れたプログラムになっています。
https://note.com/hal_dialog/n/n2045d0ed1935
Ignite Initiative
国際コーチング連盟(ICF)のもとで、教育や研究に関する事業を行うICF財団では、社会的なインパクトを生み出すためにいくつかのプログラムを運営しています。
Ignite Initiativeでは各国や都市にあるICFの支部が中心になり、コーチがチームを組んでSDGs(持続可能な目標)の達成をめざす団体に対してプロボノでコーチングを提供しています。これまでに世界各国で116の団体の500名を超えるリーダーがIgniteを通じてコーチングを受けているようです。プログラムの内容は6か月間に最大10時間までセッションを提供するプログラムになっており、無料、または通常よりも割引されたプロボノ価格でのコーチング提供が原則です。
Igniteのウェブサイトでは、パートナーの団体を探すコツ、コーチングの成果の評価測定に使用される質問票などのさまざまな資料がツールキットとして公開されています。
Coaching for Social Impact
ICF財団のもう一つの取り組みとして、Many Hopesという、社会的に不公平な状況に置かれた子供を救うNGOに対してプロボノでコーチングを提供したプロジェクトがあります。
Many Hopes自体はアイルランドにあるNPOですが、グアテマラやマラウィなど途上国にあるパートナーのNPOに対してもコーチングが提供されました。かなり詳細な成果報告のデータが公開されており、コーチングを受けた全員がコーチングを続けたいと回答し、またコーチングを受けたことでそれぞれの団体がもともと計画していたよりも多くの子供たちを救うことができた、との成果につながったようです。
https://twitter.com/Tomo_impact/status/1595503690345025559
社会問題を解決するNGOのリーダーたちがコーチングを受けた感じた5⃣つの変化とは??
— Tomo 🌎国際機関職員、ときどきコーチ (@Tomo_impact) November 23, 2022
1⃣戦略的な目標がたてられた
2⃣リーダーに自己変容が起きた
3⃣自己変容が仲間にも影響を与えた
4⃣活動の成果が出た
5⃣活動意欲が上がった
ソース➤https://t.co/168Uzxrfkr https://t.co/fveoQFAfg6 pic.twitter.com/uegeYKtOEC
Women's Impact Alliance
こちらは友人の方に紹介してもらった団体で、80か国、1500人以上の女性リーダーを対象にコーチングも含めたリーダーシップトレーニングを提供している団体です。選ばれた女性たちはNPOや社会起業家として社会や環境問題に取り組むリーダーとして選抜されており、エグゼクティブコーチに夜6か月間にわたるコーチングプログラムをうけることができます。
収益へのこだわり:収益を社会事業に還元
コーチングで得たコーチの収入を社会事業に還元する、という形もあります。
チャリティコーチング
ウクライナでの戦争を受けて、アナザーヒストリーというコーチングスクール出身のコーチ陣が、先着20名を対象に無料でコーチングを提供し、クライアントにはウクライナ支援団体に寄付をしてもらう、というプログラムを実施しました。
Coaching for a cause
Ben Dooley というコーチが個人で行っている取り組みなのですが、2ドルの寄付につき1分のセッションを提供する、というものです。例えば、100ドルをどこかの慈善団体に寄付したレシートを彼に送ると、50分のコーチングを無料で提供してくれるそうです。
コーチングの内容へのこだわり:セッションを通じて社会へのインパクトを意識する
コーチングセッションの内容はクライアントが自分で提案することが原則です。ただし、コーチングを教えたり研究している人の中には、以下のPeter Hawkinsのように、クライアントが持ってくる課題を解決するだけでいいのか、という問いを投げかける人もいます。
システミックコーチング
Hawkinsが具体例として出すのはアメリカで起きたリーマンショックです。
世界的な金融危機に発展したリーマンブラザーズの破産。
そのほかにも金融機関が問題を抱えていたことが明らかになります。
彼は、「金融危機が起きていた時に、金融機関のエグゼクティブにコーチングを提供していたコーチは何をしていたのか?」と問いかけます。
「経営幹部の決断が社会に与える影響を考えていたのだろうか?それとも、ただ銀行が破綻する前に、セッション料金を支払ってもらえるように請求書を慌てて送っていたのではないか?」と、やや挑発的に疑問を投げかけます。
金融危機は過去のことですが、たとえば10年後の未来。
気候変動がさらに深刻化した世界で、将来の自然を奪われた次の世代がコーチも含む大人に対して
「気候変動が起こることはわかっていた。そのときにコーチはなにをしていた?」と問いかけた時に、胸を張って言える答えができるでしょうか。
どのような組織に属しているにせよ、私たちの生活や将来は密接に連携しており、それぞれの人や組織のありかたや活動は、様々な形で地球や社会に影響を与えます(システム理論)。
クライアントが社会に与える影響を意識したうえでコーチングを行う方法としてSystemic Coaching(システミックコーチング)を考案し、システムへの影響考慮したコーチングのセッションのありかたを提唱しています。
https://www.amazon.com/Systemic-Coaching-Peter-Hawkins/dp/1138322490
少し抽象的な内容なのですが、コーチングそのもののあり方への警鐘として示唆があったので紹介しました。
おわりに
ここで取り上げたプロジェクトは、数多くある取り組みの中の一部にすぎません。まだまだ僕が知らないプロジェクト(特に日本発のもの)もあるとおもうので、見つけたら随時更新していきます。noteやTwitterでの情報提供も歓迎です。
コーチングを通じて社会を変えていきたいという想いを持つ方のアイディア&エネルギーになったら嬉しいです!
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