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ドリームキラーにならない!

将来の夢について他人に話すのは、社会人なら入社や異動で新しい組織に入り自己紹介をする時や、研修で無理やり「あなたの夢について教えてください」と問いかけられる時くらいだろう。決して夢について話す機会が多いわけではないが、人生の転機と思われる時期には、案外、夢を他者と共有する場面が多いかもしれない。何かやりたいことがあるのにそれが出来ていない、もしくは今の状況から逃れたいから、変わりたい・変わろうと思って「ああ、私はいま転機にいる!」と認識する。それで誰かに相談するとか、行動を起こそうと思えば、自ずと「それで、あなたは何がやりたいの?」と聞かれ、「私の夢は...」と話し始める。

自分の過去を振り返ってみると、高校生の時、大学進学にあたって文系か理系かを選択した時は小さな転機だった。私は小学校、中学校の時に理科が好きで、理科の中でも物理、化学、地学にあたる部分はなぜかとても興味が湧いた(要するに、生物は苦手ということである)。理科の成績も割と良く、数学はずば抜けて出来るわけではなかったが、それほど苦手意識もなかったので、単純に文系か理系か問われれば、迷わず「理系です」と答えただろう。ところが父親と大学のさらに先の就職について会話した時に、企業に勤めるなら経済学部がよいだろうと言われ、強制力は感じなかったが、無意識に経済学部の方へ引っ張られた感じがするのである。経済学部は普通は文系に分類されるが、数学や統計学も一応使うし、それゆえ理系っぽいとも感じられて、そのまま文系選択で経済学部へ進むことになった。いま思えば、あの時の父親の反応が、ドリームキラーとして働いた気がしている。

ここからが問題である。

そういうドリームキラーを子どもの時に経験しているにも関わらず、今度は自分が親になって子どもに同じことをしていたのではないかと思うのだ。直接的に「それは、ダメ!」と否定しなくても、一つ屋根の下で一緒に生活しているのだから、無意識・無自覚にドリームキラーとして子どもに作用してしまっていたのではないか。

ちなみに、一般的にどんな人がドリームキラーになり得るのかというと、「両親、先生、配偶者、友人、上司など日ごろ身近にいて接することが多く、その人に対する情報を多く持ち、影響力を行使しやすい位置にいる人」である。親は子どもと最も近い間柄だから、もちろん子どもについての情報はたくさん持っている。さらに、親は、日々の会話、態度、見ているテレビ番組、読んでいる新聞、趣味、友人関係などを通じて、子どもがいま生きている「世界」のイメージに大きな影響を与えている。そう考えると、親がドリームキラーにならずにいるのは相当難しいのではないかと思えてくる。だから、多少のドリームキラーになるのは仕方ないとしても、子どもが二十歳になるまでに、徐々に「マインドの使い方」を教えてあげられたらよいと思う。

親子関係ではなく、職場での上司・部下の関係の方が努力次第でドリームキラーになるのを避けられるのではないか?上司・部下なら一緒に住んでプライベートを含めてつぶさに観察し合っているわけではなく、職場で上司、部下の役割を演じている時だけの関係だからである。よく聞く職場で起こる問題は、たとえば向上心の強い部下が、「社外でIT関連のセミナーがあるので参加してもいいですか?」と上司に相談した際、「今担当している仕事もまだ一人前ではないのに、そんなもの勉強してどうする!」と理由も聞かず即座に却下するようなことだ。今はもうそんな職場は少ないと信じるが、ITに弱い中高年層の上司ではあり得そうな反応である。上司は部下がどんどん新しい知識を身につけて、自分を追い越して行きそうなのが不安なのである。人は誰しも自分が居心地のよい物理的・心理的空間であるコンフォート・ゾーンがある。だから強弱はあっても、誰でも上司になれば自分のコンフォート・ゾーンを乱す人間がいれば抑え込もうとする気持ちが一瞬頭をよぎる。それは自然なことである。ただ、その時にそのまま実際に部下を抑え込む行動に出るのか、ドリームキラーになりそうになっていることに気がついて、ドリームサポーターになろうと転換するのか、そこが問題である。

どうしたら、ドリームキラーにならずに済むのか?

ひとつには、その人の昇進、昇格や成功を心から喜べるように、上司自身が誰が聞いてもすごいと思われるような高いゴール(=抽象度の高いゴール)を持ち続けるのが大事だと思う。もし上司がいまのポジションに満足して、そこに居続けることがゴールなら、また、もし上司があとワンランクだけ昇格すれば「おれの会社員人生は、上がり!」と低いゴールを持っていたら、優秀な部下がどんどん自分に迫って来ているのを感じれば当然不安になるだろう。逆に、上司の今のポジションは小さな部署の課長かもしれないが、とてつもなく大きなゴールを持っていて、「こんなすごいゴールを持っていて、日々それに向かって活動している自分はすごい!」と上司自身が思っていればドリームキラーにはならないと思う。ということは、自分がドリームキラーになりそうな時は、もしかしたらゴールが近すぎて、簡単に手の届くものになっているのかもしれない。そんな時はゴールを見直して、現状の外側へゴールを再設定してみよう。

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