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ジッチャンを罠にかけて!#03

差出人もわからないようなお泊まり会への招待状によくもノコノコと離島くんだりまで出かけるよなこの人たち。セキュリティ意識低すぎじゃねと思って病まない今日この頃,みなさんいかがお過ごしでしょうか。


さて本日ご紹介しますミステリですが,しかし僕が読んでおもしろかったタイトルを紹介するのは良いのですが,そもそもミステリファンのみなさんはもう読了されてるタイトルばかりでしょうから,いったいどんなひとがよろこんでこの紹介を受けてくれるのだろうかと思いながらも,要するに読書感想文みたいな気持ちでご紹介させていただきます。



今回はこれです。ドン!





「双頭の悪魔」

娘を連れ戻してほしいのです――山間の過疎地で孤立する芸術家のコミュニティ、木更村に入ったまま戻らないマリアを案じる有馬氏。要請に応えて英都大学推理小説研究会の面々は四国へ渡る。かたくなに干渉を拒む木更村住民の態度に業を煮やし、大雨を衝いて潜入を決行。接触に成功して目的を半ば達成したかに思えた矢先、架橋が落ちて木更村は陸の孤島と化す。芸術家たちと共に進退きわまった江神・マリア、夏森村に足止めされたアリスたち――双方が殺人事件に巻き込まれ、川の両側で真相究明が始まる。読者への挑戦が三度添えられた、犯人当て(フーダニット)の限界に挑む大作。妙なる本格ミステリの香気、有栖川有栖の真髄ここにあり。

Amazon紹介文


有栖川有栖先生の(僕的)最高峰と言えば,学生アリスシリーズです(ツッコミ不可)。

探偵江上次郎の渋さは,きっとミステリファンの心をぐっとわしづかみにして離しません。なんだろ,探偵らしくないというか,ジッチャンの名にかけてる少年も少しは江上さんを見習って欲しいところです。

江上さんのカッコイイところは,すごく謙虚ですごく控え目なリーダーシップなところです。しかし,これがなんというか控えめで謙虚なのにすごい存在感なのです。いよいよになれば必ず江上さんがなんとかしてくれるという安心感があります。


「双頭の悪魔」では,アリス一行が2つの土地に分かれて,その視点を行ったり来たりしながら話がすすんでいきます。アリスとマリアは離ればなれの場所にいるのです。マリアは大丈夫だろうかと心配するアリス。アリスを時々思い出すマリア。これはまだ恋ではないけれど,きっとその小さな芽なのではーとちょっと胸がソワソワします。


さぁ離れた場所で起こる三つの殺人。
それぞれの関連性はあるのかないのか。ミステリファンとしては,どうしても連動させて考えてみたりするのですが,しかし接点がない。みたいな。


学生アリスシリーズは地味に理詰めの推理を要求されるので,頭が痛くなります。この本については動機もよくわからないし,それぞれがそれぞれの立場と視界でもって見えてること見えてないことを考えながら読まなくちゃいけなくってパニックです。

さて,読者への挑戦状を含め,ミステリを満喫したいひとにとって本書はとてつもなく有意義な時間を与えてくれる事は間違いありませんが,念のため学生アリスシリーズは本作で3作目なので,ぜひともシリーズを最初から順番に読んでください。


なんでかというと,実のとこ僕はミステリをさておいて,アリスとマリアのなんとなく淡くて切ない感じがとっても好きなのです。その青春の香りは次の4作目「女王国の城」にも引き継がれるのですが,正直もう,犯人捜しよりもこっちの方が気になっちゃって気になっちゃって。

有栖川先生,どうかアリスとマリアの関係をもう少しすすめてやって下さい。

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