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学習塾のためのコーチングを学ぶ#5

今回は学習塾コーチングの大枠をお話します。

ティーチングモード
カウンセリングモード
コーチングモード

の3つのモードを、適切なタイミングで使い分けること。
それぞれの中間モードを柔軟に使い分けること。
臨機応変、幅広く、全体を包括的に。
つまるとこ、偏らずに網羅的にサポートすることが大切です。

自分のやりたい塾は、学校の成績にだけアプローチするわけじゃないことを強く意識してください。何はなくても成績上げるのが最優先だろうというコンセプトの塾さんにはたぶん塾コーチングは向かないと思います。
あるいはそういうマインドセットの講師の方にはコーチングはたぶん難しいと思います。

このことは方向性の違い、棲み分けの問題であって、どちらが優れているのかとか、どちらの方法が合理的、理想的かとか、そういうこととは関係ありません。単なる役割の違いです。
個人的には、今は「学習塾」と同じ名前で同じカテゴリですが、コーチング学習塾は将来別にカテゴライズされても良いと思っています。

ティーチングモード

塾講師や学校の先生方がもっとも得意としているティーチングモードです。

基本的に、知らないことをコーチングで引き出すことはできませんから、初見の問題や新しい単元の説明については、最初にどの程度の知識を持っているか測りつつ、知識そのものが欠落している場合は、ティーチングで教えることが必要です。

やってみせ、言って聞かせてさせてみせ、という山本五十六の金言は、ティーチングモードで最も役に立つでしょう。コーチングの要素を含んでいる言葉ではありますが、「教える」「育てる」という意識でもって行うのは唯一ティーチングモードですので、ここにぴったりの言葉だと思います。

一般論として、「褒めること」はモチベートするためにも効果的ですが、1on1の際に技術的に褒めるというのは避けた方がよいと考えています。
ここでは「褒める」というよりは、たとえば問題を解いている最中に、「今日もいい調子だね。」「がんばってるね」「それ難しいのに、よくできたね。」といった具合に、一般に用いる承認用語で十分だと理解してください。

ティーチングでは、コーチングの際に用いる素材の提供につながるようなこと、声掛け、承認、を細かくしていきましょう。


ティーチングにおいても、叱ったり、怒ったりは厳禁です。
これらの言葉を発する者にコーチの資格はありませんし、コーチングは無理です。ティーチングモードとて、学習塾コーチングのうちのひとつの考え方に過ぎませんから、基本的な心構えは「コーチ」としての心構えが必要です。

「何でわからないの?」
「前にも同じこと教えたよね?」
「こんな簡単なのもわからないの?」

ティーチャーだとしても、こういう言葉はアウトですね。


カウンセリングモード

聴きに徹します。
中高生の多感さは、ご自身の過去を振り返ってみると思い出せるかもしれませんが、心の揺れがあるときは、学習に集中することはなかなか難しいです。
とりわけ受験生は、毎日たくさんの勉強をしていて神経はすり減っていきますから、時々ストレスに負けて不安定になることがあります。


ただでさえ学校生活は、様々なストレスを抱える問題があります。
ストロングハートで揺れない心を持つ中高生なんていませんから、わずかな心の揺れを見極めて、カウンセリングモードで接しなくてはいけないタイミングがたくさんあります。

このような時は、傾聴だけで寄り添うことが大切です。
仕事の手をとめ、しっかりと受け止めてあげてください。

正論でのアドバイスなどもってのほか。
わかっていてもできないからみんな悩んでいるのです。

こんな時には解決策を提示していくのもやめましょう。
どれほどよかれと思って、提案しても、受け入れるためのレセプターが壊れている状況でこれらのことを真に受け止めることはできません。

簡単に言えば、そんな余裕はないのです。

どちらかというと女子生徒の方が揺れやすい印象はありますが、男子生徒でもポイントは同じです。生徒のご両親との毎日の接し方について普段から気を配っておくと良いかもしれません。男子生徒も女子生徒も、母親との接し方の方が影響が強い印象がありますが、とりわけ男子生徒においては母親との接し方が特に影響を与えやすいように感じます。

また、普段から両親によく叱られたり、たしなめられたりするようなことが多い生徒は、自己肯定感は低めで、自信が持てなくなっていることがあります。

成績のアップダウンに関わらず、塾に通って一生懸命に取り組んでいることを認め、あなたという存在がそこに在るだけで十分に価値があることなのだということを伝えてあげてください。


コーチングモード

いわゆるコーチングをするのは1on1の際にしましょう。
目的の明確化。
目標設定。
手法、実行、アセスメント。
PDCAをしっかりとマネジメントできるようにサポートします。


また、データ分析やそれに基づく改善もコーチングで行います。コンサルティングみたいなことですが、コーチングはコンサルティングではないので、基本的に「指示」も「指導」もしません。

あるのはフィードバックにおける提案です。
サジェスチョンですが、示唆に近いものと、ストレートな提案と大きく2つ意識してください。

特に気をつけて行うことがひとつ。
中高生の思考ではまだそれほど深くまで降りていけないので、表面的な理由や事柄に注目してしまって、考えが止まってしまうことがよくあります。

ゆっくりと信頼関係を築き、丁寧に考えや想いを聞いて掘り下げていきます。その中で生じる矛盾や思い込みについて丁寧に指摘してあげることです。

一度のセッションでは問題をクリアすることは難しいので、これ以上、ついてこられないなと思うポイントが見つかったら、いったんそこで止めて、時間をおきましょう。

たとえば
「勉強したくない自分」がいることに気が付いていて
「勉強すると、遊べなくなってしまう」と思っているとします。
遊べなくなってしまう、ということを深く掘り下げていくと、たとえば「友だちとゲームをする時間」のことを言っていることに気が付きます。

しかし、そのとき、ゲームをする時間と、勉強する時間を見比べることで、「勉強をしっかりやると、ゲームをする時間がなくなってしまう」なんてことは実はない(あるいは、時間がなくなってしまうとは限らない)のだということに気が付きます。
気が付かない場合は、こういった矛盾や非論理性(ここでは「勉強をすると、遊ぶ時間がなくなる」という思い込み)についてはフィードバックすることはあり得ますし、展開によってチャレンジすべきです。

※こういったケースでは、関係性や展開次第では、ストレートにつっこむこともあります。
「勉強する時間ってどれぐらいの時間?残りの時間を遊ぶことにつかうことはできないかな?」
「たとえば2時間勉強するとして、自由になる時間は3時間ほどある計算になるから、先生にはそれで遊ぶ時間がなくなっちゃうということはないんじゃないかな、って感じるんだよね。」
「どれぐらいの時間をSNSに使いたいと思っているのかな?それ以外の時間を勉強にどれぐらい割り当てられそうかな?」

そのうえで、「では私が勉強したくないと思う本当の理由はなんなのだ?」というところへチャレンジしていきます。

しかし、その先になかなか進んでいけないことはよくあることです。

そんなときにいったん時間をおいて、まずはそういう深度に考えを深めていくということに気が付くだけでもいいのです。
そうして視野を少しずつ拡げていくことで、自ずと自分の目的や意志、あるいはそれを阻害するものに気が付いて、無意識にかけるブレーキを離すこともできるようになるかもしれません。



まとめ

学習塾におけるコーチングは、ビジネスコーチングをそのまま適用することは難しいので、カウンセリング要素やティーチング要素を混ぜつつ、メンターとしての自分をしっかりとつくることがコーチとしての最初の一歩になります。

ひとりひとりとしっかり向き合い、それぞれに対して真摯に寄り添う姿勢が大事です。なのでもしも先生がひとりなら、自ずと生徒数の上限は決まってくると思います。

教えることに特化する学習塾とは役割が異なります。
これに理解を示してくれる親御さんは必ずいますから、成績を媒介として心も支える。自立を支援する。もっと総合的な仕組みだということを忘れないでください。

その意味で、これを導入する場合、立ち位置に対して良いあんばいでのコントロールがとても大切になります。
成績一辺倒になるでもなく、ひとりひとりの心に寄り添い過ぎて、同情したり、同調したりすることもなく、学力をあげること、主体性を持つこと、自立することの支援を目的としつつ、それぞれのメンターで在るという、なかなか難しいポジションを意識してキープしていかなくてはなりません。



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