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『7つの習慣』が平積みされているのを見つけ,手に取って2,3ページペラペラとめくった後,そっとヤマに戻したお父さんにも読んで欲しい理由。

キングオブ自己啓発書籍『7つの習慣』。
これを本屋の平積みの中から手に取るひとは少なくありませんが,同時にそのままペラペラと数ページめくった後,そっとヤマに戻すひともまた少なくありません。

あ。僕が本屋で観察した範囲内でです。
根拠となるほどのサンプル数ではありません。

その理由はおそらく3つ。
一つ,分厚い。それだけで心が折れそう。
一つ,難しい。何言ってんのかわかんない時ある。
一つ,怪しい。自己啓発てそもそも全部怪しい。

強いて言うなら『7つの習慣』は統計から出来ているのだから「怪しい」は誤解だと思いますが,自己啓発本を最初からNOというみなさんはそういうことを言ってるのではなくて,どっちかというと「当たり前のことを薄っぺらく引き延ばした内容ばっかりで,読んでも大して得るものないじゃん」的なことではなかろうかと思うのです。

実のところ概ね,僕もそう思っている節はあるのですが,『7つの習慣』だけはちょっと別格だとも思っています。

本って読むだけで,読んだ内容が一気に身についた感出ることありますよね。自己啓発本の多くもそういったお手軽感があって,「すぐに」とか「3分で」とか,「たったひとつの方法」とかそんなふうに冠つけられています。

そうしたお手軽感が余計にNO派のみなさんの反発心をくすぐるような気もしているのですが,要するに「内容がない」とか。「当たり前のことか,どこかで聞いたことがある」とかまぁそういうことでしょうか。

『7つの習慣』もそういう意味じゃ,内容としてはきっともうどこかで誰かが発信しているでしょうから,もしかしたら読まなくってもほぼほぼ網羅されてるなんてことあるかもしれません。

しかしですよ。
しかしですよ,そっとヤマに書籍を戻したお父さん聞いて下さい。

『7つの習慣』はたぶん想像しているよりずっと実践的です。
人生を豊かにするたくさんの「原則」が綴られているのみならず,それらを具体に有効化する実践方法についてもしっかりと書かれています。
抽象と概念に終始して,ふわっとしたまま終わるなんてことはありません。安心して読み進めてください。

たとえばWin-Win実行協定(大枠では労使協定とか雇用契約のようなイメージ)の作成について書かれています。第4の習慣「Win-Winを考える」は妥協点を探すものではなく,人間関係とリーダーシップの習慣です。

テクニカルには,本質的なデリゲーションは手段ではなく結果に焦点をあて,目標と評価基準を明確にするといった,イマドキのマネジメントを勉強しているビジネスパーソンにとっては当たり前の話です。
(しかしこの本が最初に書かれたのは30年以上も前のことなのです。今でこそチームマネジメントの基本ですが,当時そんなこと考えているひとがいったいどれほどいたでしょうか。)

一方で,Win-Winの原則は人格形成を土台に,人間関係を良好に築いていくものだということを強調していて,そのうえで築かれたWin-Win実行協定でなくては優れた効果性を発揮することはできないのだと言っています。

その中の一節です。

 上司であれ親であれ,Win-Win実行協定でコントロールできる結果に対する評価は,基本的に四種類ある。金銭的な結果心理的な結果機会責任である。金銭的な結果は,昇給やストックオプション,手当て,罰金などであり,心理的な結果は,評価,承認,尊重,信頼などを得る,あるいは逆に失うことである。生命が脅かされるような追い詰められた状態にない限り,金銭的な結果よりも心理的な結果のほうが意欲を引き出すことが多い。機会に関わる結果には…

『7つの習慣』|第4の習慣/スティーブン・R・コヴィー/キングベアー出版

こんな具合にちょっとした自己啓発本であれば,太字部分だけで軽く1万字ぐらいは書けそうなことをサラりと言い切ってます。人事労務管理においては基本と言っていい内発的動機や外発的動機,あるいは衛生要因といった,ハーズバーグの二要因理論(Herzberg’s theory of motivation)に通ずる内容のように感じます。

ちょっと抜き出す例えが悪いかな。

ちなみに,ここで言う実行協定はあらかじめWin-Winの下で作られたたとえば上司と部下の間で交わされるべきもので,これが機能すれば管理部門なんか要らなくね?ぐらいのインパクトがありますが,しかし30年前ならいざしらず,今なおこれぐらいのことも明確にされていないことも多くて,上司のさじ加減によるなんてこともザラです。

こういった原則に基づいた解説をテクニックと併せて説明してくれていて,具体論に落としやすいヒントがちりばめられています。テクニックに終始する自己啓発本とは一線を画します。

テクニックを身につければ,瞬間的に試合には勝てるでしょう。一夜漬けで臨んだ中間テストみたいなもんです。

7-SEVEN-は違います。
もっとめんどくさくて,もっと奥が深くて,もっとしんどいヤツです。
我々がつい見て見ぬふりをしてスルーしてしまう本質の話です。
テクニックよりもまずはこっちをちゃんとしようや,とコヴィー先生は言っています。

言ってみれば試合に負けても,勝負には勝てるコンテンツてんこ盛りです。
今すぐにでも特訓開始できますし,習慣化されればヒャクパー有効に働くでしょう。

いいえ,たとえ実践できなくても,これを知っているだけで良いのです。知っていればまったく意識しないわけにはいきません。無視して生きることは原則に反するからです。

不変的で普遍的な人生の原則。
みなさんよくご存じの「嘘つきはドロボーの始まり」という言葉。この言葉はみんなが思うほど軽くありません(まぁドロボーになるかどうかはわかりませんけども)。

いつの時代でも,誰でも彼でも,どんな場所でも変わらない原則。

原則によれば,嘘をつけば信頼を失うのは道理です。
その法則から逃れることはできません。

行動は決められるが,結果は決められないとコヴィー先生も言っています。結果は原則によるのです。アドラー的に言えば「自然の結末」です。傘をもって家を出なければ,その後雨が降ったらびしょ濡れになるのは自然の結末なのです。

たとえば誰かが無理矢理傘を持たせてしまったとしたら,その自然の結末を知ることはできません。もしも原則を知らないままに生きていれば,いつかどこかで困ったことになるか,困ったチャンになるかどっちかです。

『7つの習慣』はそんな原則を改めて教えてくれます。

いいえ,もっと言えば,原則はすでにみなさんの心の中にあります。もしかしたらひとが根源的に備えていると言ってもいいかもしれません。7はそれを再認識するキッカケに過ぎず,それで新しく知るというよりは,思い出すということかもしれませんね。

さぁお父さん。
今さっき本屋の平積みからいったんは手にとって,その後,ペラペラと数ページめくっただけで「めんどくさ」と言ったか言わなかったかはわかりませんが,そのままそっとヤマに戻した『7つの習慣』を急いで本屋に戻って,もう一度手に取ってみてください。

きっと今度は,そのままレジに持っていく勇気が湧いてくるはずです。

※ちなみに僕は本を売ろうというステマのひとではありません。




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