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息子に染みこむ、私に染みこむ、絵本の時間。

「ばぁば、すいかにきいてみるといいよ」

実家の畑でスイカがとれた。家庭菜園なので、内側が熟しているのかどうかわからない。私の母が「もう中身、赤くなっているかなあ」と悩んでいたら、息子がこう言ったそうだ。そして「ポンポンとたたくといいんだよ」とも。

平日の仕事帰り、実家に預けた息子を迎えにいくと、この話を母が教えてくれた。「よく知っているのねえ」と。私は、すぐにぴんときた。ちょうどその時、図書館で借りていた絵本に出てきたからだ。

「すいか!」(石津ちひろ 文・村上康成 絵、小峰書店)。

子どもたちが、おじいちゃんの畑に遊びに行き、おいしいスイカにかぶりつく。食べる前に、おじいちゃんがスイカをたたいて、その音をきいて熟しているかどうか判断するシーンがあったのだ。

寝ない息子と過ごす夜

息子は寝るのが遅い。夜9時すぎると、なぜかパワーがみなぎり、ベッドで飛び跳ね、「たたかい」という名のプロレスごっこを求めてくる。負ければ悔しがるくせに、わざと負けたふりすると、これもまた怒る。疲れて座れば、すぐに「立って」。気づけば、夜10時をとっくに過ぎている。1日の疲れがピークに達する頃、なぜか一番体力を使う遊びに付き合わされる。

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こんな時、私を救ってくれるのは、絵本だ。

「もう寝るよ!」と言えば、必ず「絵本読んで。読んだら寝るから」。

寝る前の儀式になった絵本タイム。週末に10冊ほど借りた絵本や図鑑などを順番に読む。息子は私のひざに座ったり、目の前で寝転がってほおづえついたりしながら聞いている。動き回ったり、よそ見したり。聞いているんだか聞いていないんだかわからないこともある。

でも、終わった後、「もう1回読んで」とせがまれると「ああ、この本、気に入ったんだ」と意外に思う。

妖怪、恐竜、サメ、虫――。息子が選ぶ絵本。私が選ぶ、かわいらしい動物や、子どもたちが冒険する本。さまざまな絵本が、コロナ禍でなかなか遠出できない私たちを、いろんな世界につれていってくれる。

えほん

絵本のことばは、息子の体に染みこんでいる。冒頭のスイカの話のように。

「夜になったね。おひさま、おつきさまに、ばとんたっちしたかな」
「かぶとむしはね、夜、木のレストランで、ジュースのんでいるんだよ」

息子のことばひとつひとつが、私の体にも染み渡る。心がじんわりとあたたかくなる。

「寝かしつけの必須アイテム!」「早期教育に良い!」なんていうつもりはまったくない。

夜、途方にくれる私を救ってくれる。私と息子にとって、かけがえのない時間を共有させてくれる。そんな絵本の存在に、ただひたすら感謝している。

【書き手】大平明日香。地元埼玉で保育園に通う男児を育ててます。長野、東京本社社会部、長崎などで勤務し、現在はさいたま支局の記者をやってます。主な担当は、埼玉県警と裁判所。息子のおかげで、妖怪にくわしくなりました。目下の悩みは、増え続けるカプセルトイとバスボール、ファーストフードのおもちゃの置き場。

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