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地域と学校が遠くなる? 公立小の自由選択制が招いたもの

指定した通学区域以外から通学することが原則認められていない小平市と、学校選択制が導入された自治体とで、比較調査(保護者へのアンケート)を行った時期があります。前回ご紹介した「小平西地区地域ネットワーク」(2012年開始)がはじまる前のことです。

学区にこだわらず、通学できる公立小を選べるようになると、どのようなことが起きるのでしょうか?

校舎が新しくなったり、施設が充実していたり――。特徴的で、魅力的に映る公立小学校に子どもがぐっと集まるようになります。そうすると、子どもが集まらない学校の先生は、「どうにかしなければ」と努力し、外に向けてPRします。

先生たちは、自分の学校に、誰が、何人通学するのか、ふたを開けてみないと分かりません。事務作業も、膨大になる。地域と学校の関係も、希薄になる。親も、学校を選ぶ必要が生じ、迷います。子どもも、人気が集中した学校を希望した場合、通えないこともあります。

公立小の競争に親も教師も、振り回されて、そのエネルギーがもったいないと思いませんか。その分のエネルギーを、目の前の子どもと向き合うパワーにまわしたほうがよっぽどいい

そもそも、同じ自治体内で、特定の学校にだけお金をかけるような状況は「差別」とも言えませんか。だけど、そのような声は、住民からはあげにくい。――こんな結果も出ました。小平市は、地域への関心が、学校選択制の自治体より高い傾向にあったのです。

21世紀に入り広がった学校自由化ですが、このような状況が浮き彫りになり、廃止や縮小している地域も増えているようです。

学校と地域を有機的につなげる取り組みとして、各地で住民や保護者が学校運営にかかわる「コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)」が広がっています。ただ、教育委員会主導で、形式的に進んでいるように感じられるケースも目立ちます。地域の足もとの声を届ける仕組みも必要です。

瀧口先生②

【語り手】瀧口優。高校教員を経て、白梅学園短期大学教授(英語教育)。今年3月に短期大学教授を定年退職しますが、東日本大震災後に立ち上げた「小平西地区地域ネットワーク」には関わり続けます。
1993年から、ベトナムへの支援を妻とはじめました。ベトナム人の英語の先生と知り合ったのがきっかけです。当初は、保育園で使うおもちゃを送っていました。2010年以降は、障がい者の支援を行っています。