【第1回 前編】はたらくことは生きること。キャリアオーナーシップ 探索ダイアローグを開催
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【第1回 前編】はたらくことは生きること。キャリアオーナーシップ 探索ダイアローグを開催

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この度、“はたらく”と“生きる”をシームレスに考える新しい試みが始まりました。

かつて定年までひとつの会社で働き通すことが是とされていた時代は終わろうとしています。当たり前になりつつあるのは、個人の意志に基づき、社会の変化ともリンクした多様なキャリアプランを描くこと。コロナ禍によって職住近接の考え方からもさらに解放される今後は、ライフスタイルの在り方と大きく重なってきます。こうした考え方は近年「キャリアオーナーシップ」という新たな概念として語られるようになりました。

パーソルキャリア株式会社は特定非営利活動法人ミラツクとの協働により、キャリアオーナーシップという概念の解像度を上げること、この向上にどういったことが効果的なのかを明らかにすることを目的としたキャリアオーナーシップリビングラボを立ち上げました。研究者や実践者などの皆さんと一緒に「キャリアオーナーシップ」を深掘りし、その学びは「リビングラボサイト(https://co-livinglab.persol-career.co.jp/)」で発信していきます。

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(キャリアオーナーシップ概念の探索・実証実験の二本立てで“キャリアオーナーシップ”を明らかに)

曖昧なキャリアオーナーシップという概念を2つの軸から検証

キャリアオーナーシップリビングラボでは、まだ曖昧なことも多い「キャリアオーナーシップ」の輪郭をはっきりさせるべく、2つの軸で検証を進めていきます。

一つ目は、有識者から話を聞いたり一緒にディスカッションをするなど、アカデミアによる学術的観点からの検証です。これにより新しい概念も少しずつ認知を深めていくことができます。二つ目は「協創型社会実験」と名付けた実証実験による検証です。まずはじめは国内、ローカルに着目し、普段とは異なるローカルな環境ではたらくことを短期体験することで、価値観や意識にどういった変容が起こるのかを分析。これらを同時並行することで、キャリアオーナーシップの状態を明らかにすることと、どういう体験が寄与するのかを明らかにすることを目的としています。

すでに文献や書籍などをベースとした分析を終え、「キャリアオーナーシップ」に関わる要素を構造化。「キャリアオーナーシップ」と大きく関わりをもつ「自己論」「主体性」「仕事観」「人生観」という4つの領域から574もの要素も抽出し、そこから「キャリアオーナーシップ 5つの中心概念」を導きました。5つそれぞれの下層には、さらに具体的な視点も含めています。

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このほか、分析結果から中央値などを算出したり、実証実験によるビフォーアフターの効果測定を行ったりと、より明確な変容を測っていく予定です。

有識者に聞く、「新しいものを受容し、自己変容を積み重ねる」意味

そして今回、キャリアオーナーシップリビングラボでは、研究者、実践者、起業家、地方行政の方など、それぞれの知見をお話くださる10名にお願いし、3回に分けて「キャリアオーナーシップ」を紐解いていく研究会を実施することにしました。毎回、5つの中心概念からひとつの視点をお題として問いかけていきます。

第1回目は、立教大学経営学部准教授の西原文乃さん、学校法人軽井沢風越学園の校長である岩瀬直樹さん、長野県塩尻市役所から山田崇さんにご参加いただき、「新しいものを受容し、自己変容を積み重ねる」についてお話を伺いました。それぞれの活動やバックグラウンドから生まれる、教育の現場やはたらき方を追体験するような学びのディスカッションはとても盛り上がりました。進行は、ミラツク代表の西村勇也さんです。

西原 文乃さん(立教大学経営学部国際経営学科准教授 / 日本ナレッジ・マネジメント学会理事)
名古屋大学法学部法律学科卒業。日本電気(NEC)に入社し海外PC事業の事業企画や販売促進に従事。一橋大学大学院国際企業戦略研究科で修士号、博士号を取得。一橋大学院 国際企業戦略研究科特任講師を経て現職。研究テーマは、組織的知識創造理論をベースとする経営戦略、組織行動、リーダーシップ、ソーシャル・イノベーション。
岩瀬 直樹さん(学校法人軽井沢風越学園理事 / 軽井沢風越学園 校長)
1970年北海道生まれ。東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程修了。埼玉県の公立小学校教諭として22年間勤め、学習者中心の授業・学級・学校づくりに取り組む。2015年に退職後、東京学芸大学大学院教育研究科にて学級経営、カリキュラムデザイン等の授業に通じた教員養成、現職教員の再教育に取り組む。2016年、一般財団法人軽井沢風越学園設立準備財団設立に参画し、現在は軽井沢風越学園の校長および軽井沢風越幼稚園の園長を兼任。3児の父。
山田 崇さん(長野県塩尻市 企画政策部 地方創生推進課 地方創生推進係長)
1975年、長野県塩尻市生まれ。千葉大学工学部応用化学科卒業。1998年、塩尻市役所に入庁。現在、塩尻市役所 企画政策部 地方創生推進係長。空き家プロジェクトnanoda代表、内閣部地域活性化伝道師、TEDx Sakuでの「元ナンパ師の市職員が挑戦する、すごく真面目でナンパな地域活性化の取組み」に登壇し話題になる。信州大学キャリア教育・サポートセンター特任講師を務め、ローカルイノベーター養成コース特別講師/ 地域ブランド実践ゼミを担当。

超性善説のあり方を生態系に見る、知識創造理論から「受容し、変容すること」を考える | 西原 文乃(立教大学経営学部国際経営学科准教授 / 日本ナレッジ・マネジメント学会理事)

西原さん  今日は最初に、わたしが皆さんに広めたいと思って取り組んでいる「知識創造理論」についてと「活動の背景にある課題意識」、そして今回のお題である「新しいものを受容し、自己変容を積み重ねる」という3つを軸にして、知識創造理論のエバンジェリストという立場からお話しさせていただこうと思っています。

まずはわたしのことですが、会社員から研究者へとキャリアチェンジをしたことから3つのモットーをもってまして、ひとつは「人生に無駄なことは何もない」、もうひとつは「人はいつだってやり直せる」、そして「今のこの一瞬が大切」という3つです。特に3つめの、“今ここ”である「この一瞬が大切」ということは週に1回の授業でも毎回学生たちに伝えていて、少しでも授業の時間に集中してもらえたらと思って、「来週会うときはもう違う人なんだから、今のこの授業の場を大切にして」と話しています。

知識創造理論は、「良い社会と良い生き方の実践」を目指すためのベースとして教養と経営学を軸に取り組んでいます。知識創造理論との出会いは、MBAを学びに行った一橋大学で野中郁次郎先生という恩師との出会いの中にありました。

野中先生は『失敗の本質』という本でよく知られており、1984年の初版ですが、日本政府や国内企業が不都合なことがあったりピンチに陥ったりするとベストセラーに入るという本で、実は今も結構売れているんですね。野中先生は今でも大変お元気でいらして、知識創造理論も、竹内弘高先生方と書かれた『知識創造企業』で知られるようになり、25年経った最近はまたお二人で『ワイズカンパニー』という続編を出し評判のようです。

知識創造理論は、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生も『世界標準の経営理論』で絶賛されているのですが、これからもっと求められる理論だと思います。

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野中先生は、知識創造理論の「知識」の定義を、真善美に向けたダイナミックなプロセスだと言っています。さらに最大の特徴として、人間関係性の中で主体的につくるものであって、わたしたち自身が日々つくり出す、それも、人と人、人と環境の中で出てくるものである、と。

「真善美」とは、ドイツの哲学者カントが提唱した考え方で、偽りのなく(真)、正しく(善)、調和する(美)ことの価値が等しい状態が人として最高の状態であるという考え方ですが、元になる考え方に「暗黙知」と「形式知」という2つの知のタイプがあります。

「暗黙知」とは、言葉にならないもやもやしたものや、自分でも気が付いていない部分のことで、わかりやすく見えている「形式知」と比べ、私たちは実はすごくたくさんの暗黙知をもっているんですね。わたしは知識創造理論の醍醐味は、「暗黙知の可能性を解放すること」にあるんじゃないかと思ってるんです。

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知識をつくるには、人と人、人と環境が関係し合い、意味をつくり出していく“場”が必要になるのですが、より良い“知”をつくり出すのは社会関係資本と呼ばれるような相互受容の環境と、文脈を共有し合えているという2つが欠かせないと思っています。

こうした研究を行う課題意識としては、最近のことでいうと、これまで大切にしていた現場での対話や積極的な意見出しを三密の状態を避けて行う必要が出てきた今、果たしてこれまで通りの意思疎通を画面越し、あるいはVRとかMRとかARなどで補えるかといった議論を深める必要性を感じていることです。

そして、野中先生も言っていることなのですが、現代のマネジメントの問題を取り上げています。どうしても分析過多、計画過多、コンプライアンス過多という、頭でっかちな状態になりがちな背景には、「形式知」しか見れていないことが挙げられると思うのです。

しかし、わたしたちは無限の「暗黙知」をもっているので、もっと活かして良いはずなんですね。これは現代教育における、正解だけ教えるとか、ひとつの正解以外は正しくないとされる「形式知」が中心になっているからではないかな、と。もっと様々なトライ&エラーが行われて然るべきだと考えています。

また、もうひとつ課題意識があることとして、わたしのいる経営学の分野で「ホモ・エコノミクス」と呼ばれる、自分の利益だけを考える経済モデルの存在が挙げられます。本来、関係性によって成り立つものなのに、矛盾が起きてしまう。そこでもっと正しく新しい人間像を立てましょうということを提唱しているんですが、でも実は、日本には古来から三方良しを大切にする近江商人の例などもありました。また、今でいえばSDGsにもつながっていくことです。

知識はひとりで抱え込んでいても意味をなさず、人と人、人と環境との関係によって活かされるものです。まさに生態系みたいなものに例えるとわかりやすいのですが、異質同士が住み分けていたり、生かし合っていたり、また、お互いさま・おかげさまみたいな関係性が見えてきますよね。

最後になりますが、野中先生は“人間”というものを捉えるときに、善を起点に、「共通善」という善の実現に向かって実際に善を実践していく存在だと言っていて、ものすごい超性善説ですが、これはまさに「新しいものを受容して、自分の変化を起こせる考え方」だと思うのです。

東京大学名誉教授の清水博先生も、“はたらき”という言葉を“活”という字を使って「活(はたら)き」と表しているのですが、人は動かないとどんどん退化してしまうもので、生きることそのものがはたらくこと、はたらくことが生きることというメッセージを出しています。

自分の特性を活かして他者を助けることができると、自分も助けられるような気持ちになりますよね。自分のためにしたようで他者のためになっていたり、他者のためであるようで自分のためになっていたり。心に壁が立ちはだかったときも、一歩踏み出すことで実はものすごく大きなものを与えられたりします。

わたしたちはどうしても「ねばならない」と考えがちなんですけども、そこからも自分を解放してあげることが大切だと思うのです。無限にもっている「暗黙知」を解放するというのは、つまりは自分の無限の可能性を解放することなんです。

そしてもうひとつ大切なのは、矛盾や対立を受容することです。「知識」は、同じものの掛け合わせでは生まれません。全員が同じでは新しい掛け合わせは起きないので、対立や矛盾って実はすごい重要なんです。受容できるかどうか、というより、受容する。その中でさらに、描いた理想に向かって自分をそこに進められるよう実践するんですね。

「Relentless pursuit for Excellence」とは野中先生の言葉なんですが、卓越性をどんどん追及していこうよ、と。これはまさに「新しいものを受容し、自己変容を積み重ねる」ことの力になるのではないでしょうか。

西村さん  ありがとうございました。なるほど、すごく面白いですね。もしよかったら少し短めの質疑かディスカッションを挟みたいと思うのですが、どなたかいかがですか。

岩瀬さん  学校の現場にいる教員はまさに「暗黙知」の塊だなぁと思いました。学校教育ではそれを「形式知」として交換しようと思うのでおかしくなるということをたくさんしてきてしまったのですが、「暗黙知」を活かしあうために必要なことはなんでしょうか?

西原さん  「暗黙知」を活かすには自発性が欠かせないと思うんですね。「暗黙知」は自分自身で気づいていないし言葉にもできていないので、わたしは「暗黙知を揺さぶる」という言い方をしているのですが、揺さぶってあげることでその人がハッとし、言葉にしやすくなる、伝えたくなると思います。

西村さん  言葉にするのが大事なんですね?

西原さん  大事です。言葉にしたことによって、自分にリフレクションが起こり、この言葉で良かったのかな、と他者とぶつけ合うことによって、他人の理解ともリフレクションやフィードバックが起きる、それが大事だと思います。

西原さんのお話から、人はどこまでも社会的な生き物であって、本来は性善説が成り立つ生き物なんだろうと思いました。わたしたち人間は、脳のポテンシャルを10%しか使ってないと言われていますが、意識も同様で、一人ひとりが、自分にも見えない「暗黙知」を優しく活かせるようになると、生きやすくなったり、新しく開花するものがあるのかもしれません。

続く後編は、風越学園学長・岩瀬直樹さん、塩尻市役所の山田崇さんのお話を中心にお届けします。

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