雨穴『変な絵』|残された違和感
※ネタバレなしですが、結末についてのざっくりした感想を書いたので注意!
雨穴『変な絵』を読んだ。
9枚の絵にまつわる3つのエピソードがあり、読み進めていくうちにそれぞれのエピソードが絡み合っていく。少し残酷な表現もあるものの、子どもでも楽しめる本だと思った。
物語は、前作に引き続き、考察によって進んでいく。話の流れのほとんどは登場人物の誰かの考察で、「これが真相です」というようなはっきりとしたことが書かれずに終わる。
「こういうことだったんだろう」と言う程度で、裏付けとなる部分が書かれていない。だから読後全然スッキリしない。出てくる考察自体も違和感の残るものになっているし、それぞれの考察者が意見を交えることもなく、違和感には特に言及せずにおわる。
考察の答え合わせがないので、それぞれの登場人物によって少し考察が違っている部分もある。つまり、全ての答えを照らし合わせることができるのは、読者だけという設計になっているのだ。こうなってくると、登場人物の考察が間違っているということもあり得るのではないかと思えてくる。
読者である私たちが何度も読んで真相を考察していくことで、本をより楽しむことができるんだろうと思った。
とは言え、私はものぐさなので、「変な絵 考察」などと調べてみた。でも、特に考察はヒットせず、ほとんどが「よくある話で物足りない」のような感想ばかりだった。
確かに、話の大筋は結構よくある話だと思う。個人の意見だけれど、あまり意外性のある結末でもなかった。
でもこの物語は単なる「よくある話」では終わっていないと思う。
確かに、数多残された違和感が、なんの意味もない、考察のしがいのないものであれば、決して面白い作品とは言えない。でも、繰り返し読むことで少しずつその違和感の答えが見えるようになっているのであれば、やり込みゲームのような感じで読めば読むほど新しい面白さに出会えるんじゃないか。
実際、物語が解決に向かい、大まかな答え合わせが済んだ後に、冒頭のブログについての言及があった。そこで序盤の方に戻ってブログの内容を読み返してみると、初めてブログを読んだ時に覚えた違和感がひとつ解決した。
あえてそこでブログの内容を提示せず、読者に前のページに戻るように仕向けたのは、「読み返してみて」というわかりやすいメッセージだ。謎解きが好きな人だったら武者震いが止まらないんじゃないだろうか。知らんけど。
ちょっと子ども向けかなという感は否めないけれど、良い意味でモヤモヤが残る内容だった。読むのに時間がかかるわけでもないので、ひとまずもう一度読んでみようと思う。
2022/11/02 追記
やっぱりギミックが隠されていた。(ギミックと言って良いのか?)本を読み返しただけじゃダメだった。ヒントが出揃っていなかったんだ。
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