クリエイティブ品質の高め方・見極め方セミナー Q&A
2020年6月17日と7月1日の前後編に分かれて開催した、コンテンツマーケティング・アカデミーのウェビナー(クリエイティブシリーズ)。おかげさまでのべ200名を超える方々にご参加いただき、反響をいただきました。
近藤講師から皆様の質問への回答をいただきましたが、時間内にこたえきれなかった質問が多々ありましたので、こちらでフォローアップさせていただきます。
まずは簡単に振り返りを。
セミナー第一回の振り返り:マーケティング発想に必要なクリエイティブ発想法を学ぶ(前編)
第一回のセミナーは、顧客視点からブレずにコンテンツの良しあしを判断するディレクション術でした。顧客目線が生きているコンテンツの参考例と、見極めポイントからコピーライターの近藤さんならではの「キャッチコピーから考える”逆算式”コンテンツ発想法」についてお話いただきました。
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セミナー第二回の振り返り:顧客に憑依し、顧客視点を獲得するための実践アイデア、ほか一問一答回答(後編)
前編で特に反響が大きかった「顧客視点」で見て刺さるコンテンツの発想法について、近藤さんが普段実践していることをご紹介いただきました。中にはジョブ理論を踏まえ、顧客の心の動きまでみつめ本質的な課題解決をする高度な事例もご紹介いただきました。
そのほか、コピーライティングの基本の型、自分が強化すべきライティング技術の見極め方について実践的なお話を聞けました。
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近藤講師から
みなさま、ウェビナーにご参加いただきありがとうございました。たくさん質問を寄せていただきまして、私も励みになりました。なるべく多くの質問に回答しようと心がけましたが、それでも時間の制約によって答えられなかったものがありましたので、この場をかりてお答えしたい思います。
回答については、ウェビナーで聞き手を務めていただいたコンテンツマーケティング・アカデミー リサーチャーの村上さんにも協力いただきました。ぜひみなさまのコンテンツマーケティング実践の一助になれば幸いです。
では、さっそく始めていきましょう!
質問その1:一人で制作しているときの判断
質問「一人で制作しているので、デザインの良しあしの判断が難しい。どのように判断するべき?」
一人での制作……。孤独だし、判断に自信がなくなるし、その大変さはとてもよくわかります。何らかの基準がないと、そのつど自分の感覚頼りになってしまいますし、クリエイティブ品質も上がりにくいですよね。そもそも非効率です。
自分頼りにならないためにはどうするか? 手始めにできる方法として、「クリエイティブ方針のアウトプット」と「外部レビュー」をうまく使っていくと良いかと思います。
「クリエイティブ方針のアウトプット」とは、クリエイティブ方針をドキュメント化したものです。どういったUIやデザインパーツを使うか、グラフィックデザインや写真のトーンはどんなものにするか、文章の言葉遣いはどうするか、などですね。
方針を決めるためには、まず対象となる商品やペルソナといった基本に立ちかえります。ペルソナが見ていそうなWEBサイトや、日常で触れていそうなデザイン、商品ブランドがペルソナに与える心理的価値などから想像を膨らませ、「ペルソナにどのような印象を与えたいか」「どんなデザインが好まれるか」「誰がいつどのようにクリエイティビティを発揮するべきか」などをできるだけ詳しく書き出して整理していきます。受け手と送り手の両方の立場から、あるべきクリエイティブの方針を定めていくようなイメージです。
「一人なんだからわざわざドキュメント化しなくてもいいのでは?」と思われるかもしれませんが、一人だと気づかぬうちに頭の中にさまざまな基準を詰め込み過ぎてしまい、かえって混乱してしまうことも。明文化された方針があることで、感覚的な好みや自分の固定概念などに左右されず、ペルソナの視点に立ってデザインを意図から判断しやすくなると思います。
一旦クリエイティブ方針がまとまったら、信頼のおける人に「レビュー」してもらうこともオススメします。ペルソナに近い人、クリエイティブに知見のある人など、複数の外部レビュワーの示唆をふまえると、より精度の高い設計になります。そうしてできあがった方針は、上司やクライアントなどのステークホルダーと共有して、コンテンツマーケティングの戦略の一部として定着させていきましょう。
注意点としては、レビュワーの選定です。たまたま近くにいた同僚や、ペルソナからかけ離れた人に意見を聞いてしまったことで、表面的な意匠の好みの話ばかりになってしまった……なんてことは避けたいですね。
質問その2:デザイナー・ライターの外部委託について
質問「外部デザイナーさんやライターさんに委託する場合に、思うように仕上がらない。どうすればいい?」
これも難しい問題ですね。コピーライターとして仕事を受注する身としては、耳が痛い部分もあります(笑)。デザイナーさんやライターさんのリソース不足なのか、依頼する自分の力量不足なのか、何かのコミュニケーションの掛け違いなのか……原因もケースバイケースです。
ただ一般的には、先の回答にもあった「クリエイティブ方針」を事前にしっかり共有しておくことで、ある程度の齟齬を回避できます。もちろんペルソナやジャーニーマップもあわせて共有しておきたいですね。インプット情報が多いことを煙たがるクリエイターもいるかもしれませんが、正しく意図を理解し、考えてもらうには、情報は多ければ多いほどいいはずです。
ポイントはその際、一方的に資料を送付するだけでなく、十分に対話できる時間や機会を用意しておくこと。「なぜそうしたペルソナなのか」「ジャーニーマップの中で特にどこがポイントなのか」など、マーケティング方針や顧客体験について、皆が腑に落ちるようにどんどん意見交換をしましょう。またはプロジェクトメンバーみんなでお客様のヒアリングに同席するとか、実際に店頭を観察しに行くとか、そうした「疑似顧客体験」もオススメです。
こうした対話や体験を通じて、クライアント・プランナー・ライター・デザイナー・カメラマンなどクリエイティブに関わるメンバー全員が「アイデアがどんどん湧き出てきてアウトプットしたくなる状況」になればもう大丈夫。何か物足りないなんてことはなく、期待値を超える仕上がりになっていくと思います。
質問その3:新型コロナ状況下における企画作り
質問「現在のような刻々と変わる情勢に合わせた企画作りとは?」
ウィズコロナ、アフターコロナと言われる今、大きな環境変化にいち早く対応し、明確な成果をあげることが求められる状況だと思います。ただ、何が正しかったのかは、後から振り返ってみないとわからない場合も。今の私たちができることは、変化にも対応できる柔軟な企画・実行プロセスを地道に確立し、維持しつづけることかもしれません。
具体的には、以下のような観点が重要かと思います。
1) 社内外を含めた、様々な人々のチームによる企画であること
2) 顧客に関する日々のデータ抽出があり、その示唆に基づいていること
3) 短期的な成果よりも、持続的な価値や信頼形成に着眼していること
4)ソーシャルディスタンスや3密回避といった社会的要請に従っていること
5) 表出されにくい潜在ニーズの発掘につながっていること
生活様式の変化を劇的なビジネスチャンスにとらえる動きもありますが、コンテンツマーケティングは打ち上げ花火ではなく、顧客との継続した関係性作りのためのもの。まずは既存の施策から新様式への切り替えを、着実に行っていくべきだと思います。
質問その4:ファンを増やすコンテンツ
質問「単なる情報にとどまらない"読んでいてファンが増える"コンテンツはどうやって作る?」
こちらも重要なトピックですね。特に企業でオウンドメディアを運営されている方は、みなさん同じような悩みを持たれているかもしれません。
まず「ファンとは何か?」について考えてみたいと思います。オウンドメディアの記事を何度か読んだ人はファンでしょうか? メールマガジン購読者はファンと言える? 商品を購入しないとファンではない?
コンテンツマーケティングの提唱者ロバート・ローズ氏は、記事の中でこう述べています。
もしあなたがコンテンツ発信すべてを完全に停止させたとしたら、誰がそれを指摘するでしょうか?あなたのマーケティングデータベースの中にいる誰が電話をかけてきて、毎週のメールマガジンや、ツイートや、ホワイトペーパーがなくなった!と言うでしょうか?
もしいるとしたら、その人たちこそがあなたのオーディエンスです。
引用元:Your Audience Is Not the Same as Your Marketing Database
つまりコンテンツマーケティングにおけるオーディエンス(ファン)とは、一過性ではない継続的な関係構築ができている相手、ということですね。マーケティングにおける見込み客育成の条件とも異なる存在。なかなか本質をついた話です。
さらにロバート・ローズ氏はこの記事の中で、ファンを獲得するためのヒント(アイデア)を掲載しています。今回のご質問に沿った内容を、2つほどピックアップしてご紹介します。
【ヒント:そもそもファンと顧客は異なるものと考える 】
ファンは必ずしも顧客とは限りません。商品やサービスを購入しないけれども、企業や製品ブランドのファンだという人も存在します。よく混同されるのですが、企業の作るバイヤーペルソナとファンは、全く異なる概念です。
逆に言えば、顧客を増やすためにファンをやみくもに増やそうとしなくてもよいわけです。視聴者数と広告費が連動するマスメディアと異なり、企業のマーケターはファン獲得のために、よりニッチで具体的な施策に注力することができます。
そこで重要なのは、製品やサービスの購入者だけでなく、ファンがどのような人々なのかを知ることです。彼らが抱えている課題をすべて理解し、製品の特徴や利点だけを伝えるのではなく、彼らを巻き込むコンテンツを開発することが大切になってきます。
【 ヒント:ユニークなストーリーや文脈にファンは集まる】
なぜ人はファンになるのでしょうか? それはユニークなストーリーや文脈といった共通の「枠組み」に対する興味関心と熱意を、ファン同士がお互いに共有していると感じるからです。
スターウォーズのように広く語られる「物語」としての枠組み、ただの天気予報を一味違った情報として伝える「視点」という枠組み、どちらもファンを創出し集まりやすくする重要な要素です。
質問その5:印象に残るコンテンツとは?
質問「どうしたら読み手の印象に残るコンテンツになるでしょうか? 商材がB2Bなのもあり、どうしても硬い内容にしてしまいがちです」
手っ取り早くできることとして、ウェビナーの中でもご紹介した「コンテンツ問診票」の活用をオススメします。
受け手が「自分に向けられたものではないな」と感じてしまったら、その瞬間にコンテンツは印象に残らなくなります。コンテンツ問診票の1番目「誰に向けて作られている?」は最も重要なポイントですね。同じように「こういうデザインは好きじゃないな」「それはもう知ってる」と思われても、同様に印象に残りません。問診票を順番にチェックしていくことで、足りない要素が見えてくると思います。
そのうえで、最も効果が出そうなのは4つ目の「どんな「状況」や「文脈」が考慮されている?」と、5つ目の「そのコンテンツは読み手の何を解決しようとしてくれている?」でしょう。BtoBの場合、受け手は具体的なビジネス課題や目的を達成するために情報を探しているので、その人がいま置かれている状況にピタッとマッチし、課題に即したコンテンツであれば、強く印象に残るはずです。(ピンと来てすぐに同僚にチャットでURLを共有!……なんてことが起こればベストですね)
また複数のチャネルで読者に情報提供することも、印象を強化するには効果的です。メールマガジン、ブログ記事、ポッドキャストなど複数のチャネルで同じテーマを扱い、共通したストーリーや文脈(1つ前の質問にもあった「枠組み」ですね)の中で、相互に参照しあうようなコンテンツを展開していきます。ただしチャネルを増やしすぎると、管理が大変で個々のコンテンツの質も落ちますので、3つくらいのチャネルを中心に展開すると良いと思います。
以上、セミナーで答えきれなかったご質問にできる限り回答してみました。ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!
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