見出し画像

慶應 / 仙台育英両監督にみる「自主性」を尊重した現代的なマネジメント術とは

今年の甲子園は慶應義塾が、昨年王者の仙台育英を破って107年ぶりに優勝をしました。世間で慶應の長髪や、決勝戦での応援が話題になったのは記憶に新しいです。しかし、高校野球大好き芸人の私( @clubtropixxx1 )が注目した点は、ここ2年で高校野球の監督像とマネジメントの潮目が変化したことです。豪商視点で書いていきます。

昨年の甲子園を優勝した仙台育英・須江監督(40歳) wiki は監督就任5年目での優勝でした。その仙台育英を決勝戦で破って優勝した慶應・森林監督(50歳) wiki 監督就任9年目での日本一です。

2人に言及する前に、慶應・仙台育英の共通点を挙げます。
・選手は中学時代の全国大会経験者など野球エリート
・慶應は前監督時代を含め約15年甲子園常連校で107年ぶりに優勝
・仙台育英は前監督時代を含め約30年甲子園常連校で昨年初優勝

「優秀な選手が多く、甲子園にも出場していたが、現在の監督に代わって日本一になれた」という印象が強いです。慶應・森林監督は就任9年目/自身4回目の出場で、須江監督は就任5年目/同じく4回目の出場での優勝でした。この両監督は、従来の昭和トップダウン式の高校野球の監督とはスタンスが異なります。

慶應・森林監督 仙台育英・須江監督は従来の高校野球監督像と何が違うのか

森林監督 / 須江監督
・自主性を重んじる
・個人の成長が最優先
・個人として尊重する
・発信力がある

今までの高校野球の監督
・トップダウン全体主義
・チームの勝利が最優先
・集団や指揮官が尊重される
・発信力がない

トラディショナルな高校野球の監督というのは、トップダウンのマネジメントでした。監督の指示に従う、チームは勝利を目指す。個は尊重されず、あくまでチームの歯車としての選手。監督が「走ってこい」と言えば、走るんです。極端な例ですが、高校野球含め、高校スポーツガチ勢の指導者による体罰問題などが良い(悪い)例です。

私も中学の時に野球をやっていましたが、トップダウンのチームでした。ミスは罵倒され、成功しても特に褒められない。自主性はなく、言われたことをソツなくこなせるのが良い選手。

そんな中で野球をしていると、人(私)はどうなるかと言えば、首脳陣の顔色を伺うようになります。ミスをすれば文脈や理由に関係なく罵倒されます。子供心に納得感がありませんでした。好きで野球をやっていたはずが、いつの間にか、「やらせれている」野球になっていました。鬼監督の元でスポーツをやっていた人なら経験があるのではないでしょうか。

これから説明をする森林監督 / 須江監督のような思想を持つ指導者の下で野球をしていたら、もっと考えて野球をして、更に野球を好きになっていたかもしれません。

慶應・森林監督 仙台育英・須江監督の考え方について

森林監督 / 須江監督が実際にどのような指導をしているのか、実際に練習を見たわけではないのでわかりません。しかし、彼らの発信を見聞きする限りは先に述べたように、個性を尊重し、人としての成長を促す指導だと感じます。ソース付きで紹介します。両者のマネジメントに対する考え方は仕事や子育てなどの面でも参考になると思います。

慶應・森林監督

―エンジョイベースボールとは?
野球を楽しむためには「少しでもレベルを上げてより高いレベルで野球を楽しもうよ」という呼びかけの言葉だと思っている。

―指導のうえで大事にしてること
自分で考えることは目先の勝ち負けではなく、今後の人生に大事な要素。それを高校野球の中でどれだけ身につけられるかということは大切にしている。

―坊主ではない髪型について
慶應は戦中の頃から。「髪型で野球やるわけじゃないでしょ」と思ってる。

―勝利至上主義について
勝利”至上”主義は育成年代を預かる指導者として無責任。何をしてもいいわけではない。今後の生徒の人生を念頭に置きながら指導にあたるべきだと思う。勝利至上よりも、成長が至上命題。チームとしての成長、選手としての成長、人としての成長。それを一番大切にしてる。

高校野球でしか通用しない常識は教えるつもりはないと生徒に言っている。高校野球の常識は社会に出て非常識になる可能性がある。
https://www.youtube.com/watch?v=Kh0gmiHwoSY

仙台育英・須江監督

―選手との向き合い方について
ネット情報が多いゆえに、トレーニングや技術での生徒の方向性がズレやすい。だから、生徒と面談して思考の交通整理をしてあげる。一緒に整理してあげて、一緒に進む。

選手との距離感は近すぎず、遠すぎず。自立支援者って感じで接している。
https://www.youtube.com/watch?v=CcpYmcb89rs

―同校20代の若手コーチ(部下)について
何も制限しないことが大事。選手に大人がチャレンジする姿を見せたい。だからコーチにも制限をしないし、生徒と同じで応援する。プライベートでは関わらない。プライベートの時間を尊重したいから。

―色んな人に話を聞きに行った
指導者になった時、若さと体力しかなかった。謙遜でもなく、何も持ってなかった。何も持ってないから、持ってる人に会いに行こうと思った。オリジナルを作る0を1にできる人間じゃなかった。人からエッセンスを貰って、1を2にすることはできるんじゃないかなと思って。色んな人に会いに行った。
https://www.youtube.com/watch?v=v41-kIX1elA

―現在の指導について
練習をよくする生徒たちを止める側になってる。指導者として理想に近づいてる。

―悩めるキャプテンにどう接したか
キャプテンとして至らないことを許容して、できないことを認めてあげないといけない。彼自身が悩んで、彼自身が成長していかないと。「先生に助けてもらった」ということは極力したくなかった。かなり遠くから見ている感じだった。

―連覇への意識
連覇と意識してる生徒はいないんじゃないか。連覇という言葉は使ってない。「2度目の初優勝」。それも10回も言ってない。昨年のチームと比較しても自分も生徒もストレスになるだけ。

お互いに求めすぎない。期待値を上げすぎない。生徒の身の丈に合ったものを求めないといけない。
https://www.youtube.com/watch?v=jcIGnmMaoX8

慶應・森林監督 仙台育英・須江監督にみる現代的なマネジメントとは

どちらの監督も、試合に勝って良い成績を挙げることには執着しないスタンスです。(実際にそう発言している)

「野球を通して何を学べるか、人としてどう成長しているか」に重きを置いている指導者でしょう。昭和の指導者にも、そういった方がいたかもしれません。しかし、我々のイメージする強豪校の監督は、いわゆるトップダウンで、選手の個性や成長は成長を促すといったことに重きを置いていなかったと感じます。

恐らく、森林監督 / 須江監督の両者に共通している考え方は「人にやらせても意味がない」ということです。やらせるのではなく、能動的にやることに意義を見出いしています。

「100回素振りをしろ」と指導者に言われて、やらされる練習より、本人が「100回素振りが必要なんだ」と気づき、自ら行う練習のほうが有意義でしょう。

だからこそ、両監督からは選手の自主性とか、野球が上手いだけでは意味がないと言ったような発言が出るんだと思います。

私は、この森林 / 須江両監督のマネジメント術は非常に現代的だと感じています。監督としての成績だけを鑑みれば、やらせる野球でトップダウンで指導したほうが、良い成績が残せるかもしれません。

高校野球の強豪校では(恐らく)成績による監督交代は珍しいことではありません。しかし、彼らは目先の勝利よりも、選手の成長や個性を尊重し、それを促すことを重きに置いています。

自分が上に立ち、下々に「やらせる」ことは簡単ですが、自ら「やる」ように仕向け、それに対して応援したり、モチベートをすることが、いかに難しく我慢が必要でしょうか。絶妙なバランス感覚が必要とされます。しかし、それこそが現代的なマネジメントだと考えます。なぜなら、人は「やらせて」も納得感がないと、良いパフォーマンスが出ないからです。皆さんにも、きっと当てはまることが多いでしょう。

現代的なマネジメントは持続可能な組織を作る

また、仙台育英・須江監督が昨年、甲子園を制覇した際に「青春ってすごく密なので」という優勝インタビューで流行語大賞で特別賞を受賞したり、慶應・森林監督の「慶応が勝って、高校野球を変えたい」など発言力が非常い高いのも注目です。

両者のインタビューでの非テンプレ的な受け答えを見る限り、日ごろから自身の言葉でチームの在り方や方向性を伝えて、選手たちをモチベートしていると考えられます。(今回の須江監督の連覇と言わず、「二度目の初優勝」と発信するなど)

毎年、箱根駅伝前に「〇〇大作戦」とメディアで発信している青学・原監督にも通じるところがあるでしょう。

現代的なマネジメントとは、指導者(マネジメント層)が「…(俺の背中を見ろ)」「やれ!」「勝つぞ!」などと下々を鼓舞するのではなく、様々な言葉を発信してモチベーションを高め、能動的に行動をさせることが最適化されたマネジメントだと考えます。

現代的なマネジメントについてのまとめ

以上が、今回の甲子園を通じて私が感じたことです。しかし、先に申し上げたように、両校で上記のマネジメントが実現できるのは、恵まれた環境と、優秀な選手たちがいる前提での話です。

昨年、夏の甲子園で準優勝になった下関国際は、恵まれた選手層とは言えないチームを昭和トップダウンで鍛えて、勝ち上がった印象です。どちらが良いという話ではありません。

しかし、個人的に感じるのは現代的なマネジメントのほうが、持続可能でサステイナブルではないかと考えています。昭和トップダウンの鬼監督の場合は、個人に依存した組織となってしまいます。名監督が去って弱体化した有名校はいくらでもあります。

反面、個人の自主性を尊重した組織の風土ができあがれば、監督が交代しても、組織のカルチャーとして残り、持続可能なのではないでしょうか。実際に、慶應の「エンジョイベースボール」は前監督時代から掲げられています。

・マネジメント層は下々の自主性を重んじる
・能動的に動かすために言葉を使ってモチベートする
・その風土が出来上がれば持続可能な組織ができあがる

これが現代的なマネジメントだと考えました。非坊主のチームが増えたとはいえ、未だに坊主頭で真夏のクソ暑い屋外で野球をやっている前時代的な甲子園から、現代的なマネジメントが垣間見えて感動をした次第です。

会社のマネジメント、子育てなど実生活のヒントになれば幸いです。ちなみに私は、経営者歴10年を超えていますが、未だにマネジメント童貞です。

野球ネタは以前、山川選手にまつわるニュースをナンパ師視点で書きました。

興味があればTwitterやブログも読んでみてください。
Twitter@clubtropixxx1
豪商元年のオリンピック
ちなみに男の潮吹きやTinder留学にも言及している社会派の国際派です。


この記事が参加している募集

#高校野球を語ろう

2,065件

豪商のスポンサーになりたい方、サポートしてくれてもいいんですよ?いただいた金額は全て子供のミルク代…いや女性のために使うことをお約束します!!