ClubOrfeo 倶楽部オルフェオ(クラシック音楽&文芸倶楽部)

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「Club Orfeo 倶楽部オルフェオ」(クラシック音楽&文芸倶楽部)の主宰。英語&ドイツ語圏を中心に、クラシックの音楽文献を読む企画をしています。好きなお酒はウイスキー「響」。 公式サイトhttps://club-orfeo.wixsite.com/website

最近の記事

ワーグナーに関するドイツ語文献の翻訳について

皆さま、お久しぶりです。ここしばらくはSNSの更新をせず、ワーグナー関連の翻訳に集中していました。2年前に購入したアレックス・ロス著「ワーグナーの世界」(黄色の分厚い本)をようやく終えて、ライフワークである「コジマの日記」(下2冊)に取り掛かっています。これもなかなか分厚くて手ごわそうです。

    • 対訳ドイツ語で読む「魔の山」から「妙音の饗宴」

      ドイツの文豪トーマス・マンの代表作「魔の山」を原語で挑む本が出版されました(2023年12月出版白水社)。 「魔の山」は主人公の青年ハンスカストルプが7年もの間スイスの結核療養所に滞在し、いとこのヨアヒム、理性と合理主義の人セテンブリーニ、イエズス会士のナフタ、ロシア人女性ショーシャ夫人、オランダ人ペーペルコルンとの交流を通じて精神修行をする教養小説です。  小説の後半には、音楽好きのトーマス・マンらしく、主人公が最新の蓄音機(グラモフォン)でレコードを聴く場面が描かれて

      • 平家物語から「敦盛」の笛The tale of the Heike :The death of Atsumori

        「あないとほし 。この暁城の内にて管絃し給ひつるはこの人々にておはしけり 。当時御方に東国の勢何万騎かあるらめども軍の陣へ笛持つ人はよもあらじ 。上臈はなほも優しかりけるものを 。」とてこれを取つて大将軍の御見参に入れたりければ見る人涙を流しけり “Oh, how awful! At dawn today, within the fortress, you could hear men making music, and obviously he was one of th

        • ペーターハントケ「ドンファンー本人が語る」【ドンファンの系譜ー芸術家たちの様々なドンファン像】

          「ドンファンは誘惑者ではなかった。彼はそれまで一人の女も誘惑したことがなかった。(略)反対に、ドンファンも一度も女から誘惑されたことはなかった。Don Juan war kein verführt .Er hatte noch nie eine Frau verführt .(略)Und umgekehrt awr Don Juan auch noch keinmal von einer Frauverführt worden.」(本文引用)  オーストリアの2019年ノー

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        マガジン

        • R.Wagner ワーグナー作品について
          16本
        • 倶楽部オルフェオの紹介
          7本
        • 外国語学習
          3本

        記事

          ETAホフマンの短編小説「ドン・ジュアン」【ドンファンの系譜ー芸術家たちの様々なドンファン像】

          「地下の幽界の身の毛もよだつ音につれて、ドンジュアンも小人にしかみえないような巨大な大理石像が入ってきた。ずしんずしんと踏み鳴らす脚の下には地震が起る。ドンジュアンは風すさび、雷鳴とどろき、鬼神の咆哮(ほうこう)するなかを頑強に「否」を叫んでいる。破滅の時期は迫った。Der Boden erbebt unter des Riesen donnerndem Fußtritt. – Don Juan ruft durch den Sturm, durch den Donner,

          ETAホフマンの短編小説「ドン・ジュアン」【ドンファンの系譜ー芸術家たちの様々なドンファン像】

          「ニーベルングの指環」と「平家物語」

          平家物語成立後700年の眠りから覚め、ドイツでは2022年に初めて「平家物語」のドイツ語翻訳が出版されました。  ワーグナーの歌劇「ニーベルングの指環」の原作であるドイツ中世叙事詩「ニーベルンゲンの歌」も13世紀頃作られ、読み人知らずの口承文学、叙事詩、軍記物語、恋愛あり、滅びの美学ありで平家物語と重なる部分があり、平家物語はドイツ人にも親しまれる要素を持っている作品だと思っております。  源義経は、軍人としては英雄だが政治に疎い点でジークフリートそのものだし、馬術が達者

          源氏物語「胡蝶」~六条院での船と管弦楽の遊び

            源氏物語には様々に印象深いシーンがございますが、春の季節、光源氏が唐船を造らせ六条院のお庭の池に船を浮かべ、雅楽寮の楽人を呼び、船上で音楽の催しをした「胡蝶」の場面は風雅の極みと言ってもよいでしょう。  桜、藤の花、山吹が花盛りの中、親王や上達部、若い女房達がみな着飾って、楽人の舞楽の調べに聴き入っております。また当時の貴族は楽器の素養がありましたので、上達部や親王たちもそれぞれ筝の琴や琵琶、笙、篳篥や横笛を奏でるのでした。  六条院の管弦の遊びには、耳慣れない世に

          源氏物語「胡蝶」~六条院での船と管弦楽の遊び

          Weihnachtsfrieden-クリスマス休戦とクリスマスキャロル ー 第一世界大戦のクリスマスに起きた奇跡

          1914年の夏に始まった第一次世界大戦は、すぐ収束すると参戦した国はどこも楽観視していたものの、冬になっても戦争が終わる気配が一向になかった。むしろ西部戦線では塹壕戦となり、イギリス軍とドイツ軍が膠着状態でにらみあいのままであった。この戦争で既に100万人以上が戦死していた。クリスマスになっても愛する家族の元に帰れず幻滅する両軍。そんなときに訪れたクリスマスの日。   二人のザクセン人(ドイツ人)と二人のイギリス人が塹壕と塹壕の間の無人の土地で会い、タバコと葉巻が交換され

          Weihnachtsfrieden-クリスマス休戦とクリスマスキャロル ー 第一世界大戦のクリスマスに起きた奇跡

          クリスマスの定番-プッチーニ歌劇「ラ・ボエーム」を観てきました。

          12月の初頭に、藤原歌劇団主催のプッチーニ歌劇「ラボエーム」を観てきました。  舞台は19世紀パリ。若い芸術家達の青春と切ない恋物語がテーマ。テノールとソプラノの主役二人の美声に非日常を堪能しました。イタリアオペラは情熱的でダイレクトに歌詞の言葉が魂に刺さります。1年半続けた「NHKまいにちイタリア語」を再開しようかなと思いました。次は大切な人と一緒に観に行きたいです。  ラボエームの公演から1週間が経ち感動が冷めやらず、プッチーニの音楽を休日にかけています。私のプッチー

          クリスマスの定番-プッチーニ歌劇「ラ・ボエーム」を観てきました。

          リルケ「フィレンツェだより」森有正訳〜BWV541のオルガンの響きとともに

          Rainer Maria Rilke:Tagebücher aus der Frühzeit 「愛する人よ、わたくしが巡礼に出かけて行きたいのは、あなたの魂の中だけだ。深く深く、あなたの魂が寺院になる所まで。そこで、わたくしは、あなたの荘厳さの中に、わたくしの郷愁を聖体盒 のように高く挙げたいのだ。これがわたくしの望みである」。  「フィレンツェだより」は、ドイツの詩人リルケが、1898年4月15日から7月6日にかけて恋人ルーザロメにあてた書簡体の日記。イタリアのフィレン

          リルケ「フィレンツェだより」森有正訳〜BWV541のオルガンの響きとともに

          ハンナアーレント「エルサレムのアイヒマン」Eichmann in Jerusalem: Ein Bericht von der Banalitaet des Boesen

            来年の政治哲学教材はハンナアーレントの「エルサレムのアイヒマン」にしました。この著作はユダヤ人迫害のお話が出てくるとき、よく引き合いに出されます。最近気になっている歴史学者Peter Longerich の「ゲッべルス」と「ハインリヒヒムラー」の評伝も併せて読んでみます。  分からないながらも、カント「判断力批判」、ヘーゲル「精神現象学」「歴史哲学講義」、ニーチェ「ツァラトゥストラ」「悲劇の誕生」、ショーペンハウアー「意志と表象としての世界」の芸術部分、ハイデガー「存

          ハンナアーレント「エルサレムのアイヒマン」Eichmann in Jerusalem: Ein Bericht von der Banalitaet des Boesen

          シュティフター「石さまざま」から「水晶」~ MAシャルパンティエのクリスマスモテットとともに

          Adalbert Stifter:Bunte Steine- Bergkristall 「「なんでもないよ、ザンナ」と少年は言った。「こわがっちゃいけないよ、ぼくについておいで。どんなことがあっても家へつれていってあげるから。ー雪さえやめばなぁ!」  ザンナはこわがりはしなかった。せいいっぱい小さな足をあげて兄について行った。兄は、白くて明るくて、たえずちらちらとしている不透明な空間のなかを、妹をみちびいて歩んだ。」 クリスマスイヴの日、可愛がってくれる祖母の家から帰宅中

          シュティフター「石さまざま」から「水晶」~ MAシャルパンティエのクリスマスモテットとともに

          ドイツの新書 、C.H.Beck Wissen(ヴィッセン叢書)を翻訳してみた

          来年のヴィッセン叢書の翻訳を決めました。 ヴィッセン叢書は、フランスの「クセジュ文庫」と似たコンセプトを持つドイツの新書シリーズです。クセジュ(Que sais-je?)とはフランス語で「わたしは何を知っているか?(=何も知らないではないか)」と自分に問いかける言葉で、ルネサンスの思想家モンテーニュが、「知識のための武器」として座右の銘にした言葉です。クセジュ文庫は、モンテーニュの思想と百科全書の精神を受け継いでおり、1冊1テーマ128頁の分量ですが、すべてのタイトルを読み漁

          ドイツの新書 、C.H.Beck Wissen(ヴィッセン叢書)を翻訳してみた

          日本の新書は、クラシック音楽&独墺系の入門に最適ということについて

          クラシックや独墺関連書籍について触れたいと思いたち、最初の取っ掛かりになるのが日本の「新書」。新書は持ち運ぶのに便利だし、当日読み切りで、ある一つのテーマにつき概略を把握できるので重宝しています。  新書を契機に、Rシュトラウスに詳しい音楽学者岡田暁生さん、ヒトラーとナチ時代を専門にしている石田勇治さん、ドイツの現代政治の専門家板橋拓己さん、イスラム圏の専門家内藤正典さんを知り、もっと詳しい著作を読むようになりました。新書は専門家の名前を知るのにも良い契機になっています。

          日本の新書は、クラシック音楽&独墺系の入門に最適ということについて

          ヴァルターベンヤミン「歴史の概念について」Walter Benjamin:Über den Begriff der Geschichte

           好きな映画『ベルリン・天使の詩』はベンヤミンの「歴史の天使」から着想を得ていることから、ベンヤミンの「歴史の概念について」を検討してみました。 IV歴史の天使  「新しい天使と題するクレーの絵がある。そこにはひとりの天使が描かれていて、それは自分が凝視しているものから、いままさに遠ざかろうとしているかに見える。眼は大きく見開かれ、口は開かれ、翼は広げられている。 Es gibt ein Bild von Klee,das Angelus Novus heißt.Ei

          ヴァルターベンヤミン「歴史の概念について」Walter Benjamin:Über den Begriff der Geschichte

          バッハマン&ツェラン「往復書簡 心の時」Herzzeit:Ingeborg Bachmann - Paul Celan

          「心の時、 夢みられたものたちが  真夜中の数字のかわりだ。 いくつかは静寂のなかへ話しかけ、いくつかは黙り、 いくつかは自分の道を行った。 追放されたものと道に迷ったものがいたのだ  故郷に。 ・・・・・・ お前たちドームよ。 お前たち眼に映らぬドームよ、 お前たち耳に響かぬ水よ、 お前たちぼくたちの奥深くにある時計よ」(ツェランからバッハマンに1957年10月20日) Herzzeit,es stehn die Getraeumten fuer die Mitternac

          バッハマン&ツェラン「往復書簡 心の時」Herzzeit:Ingeborg Bachmann - Paul Celan