廃校(詩集6-6)

廃校 3階 音楽室

新品のラジカセ ブルーシートピクニック

金管楽器の音色が迷走する迷路

名誉ある自画像と不明瞭な生徒の顔

4人の高校生が奇声を発しながら

走っていく廊下の先はずっと闇

世界が終わることを誰よりも喜んだ先生

ピアノにかけられたままの誰かのロングスカート

天井から黒い血管みたいにぶら下がる無数のベルト

彫刻刀が散乱する傷だらけの美術室のテーブル

の上で声を潜めて粘土と粘土がセックス

パソコン室へ給食が運ばれていく

黄ばんだ指で叩かれたキーボードたちが眠っている

12:35が手招きする 昇降口 集合 危険信号

ジャングルジムは危ないから近づかないこと

人に恋することも同様に近づきすぎないこと

離ればなれになった両親と

歳をとっても一定間隔で刻まれる秒針を

重ねると前者がまず先に振り落とされる

ランドセルはいつも孤独に佇んでいる

錆びたサッカーゴールを眺めながら

風で揺れるだけの赤いブランコを眺めながら

緑色の水が溜まったプールを眺めながら

他は真っ黒だけの壁に囲まれながら

4階の上から初めて僕は勇気を出してみた

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