虫の息 -Prelude- (詩集6-3)

かんかん照り ああ かんかん照り

熱気の中に充満するアブラゼミの合唱

その中を涼やかに舞うクロアゲハ

空の高速道路 トンボの群れ

樹液を求めて戦うカブトムシやスズメバチ

クモを恐れず大量に飛び交う便所の羽虫たち

虫は 小さくて 個性的で 可愛い

虫の息は か細くて 美しい

虫は 小さくても 勇ましくて かっこいい

それでも虫の息は か細くて 美しいんだ

そんな虫たちの

だんだんと弱っていく姿を見るのが

僕は好きだった

近づく死に抵抗するために ぷるぷると震わす体

無表情だけど 色が失われているような気がする瞳

確実に肉が削げ落ちて 体が細くなって

羽や触覚などが萎びていくその様は

どんなにいきいきとした生命よりもずっと美しいんだ

やがて死骸と化したものを

標本みたいにコレクションするのだが

やはり生きていないと満足できないんだ

そんなある日 僕は

虫みたいに小さくて可愛い少女と出会ったんだ

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