フツメン既婚者に惚れてしまった話
出会ったとき、彼には1回り年上の奥さんがいた。
彼は顔はイマイチながら、私に対する好意を隠さない快活さを持っていた。
1. 縮図
トータル50人のコミュニティで、男女比は1:1。
その中で彼と出会った。
年齢層は、ハタチから20代後半まで。毎日朝から晩まで一緒。
そうなると生まれるのが、「推しメン制度」だ。
男子はそれぞれ、女子はそれぞれで誰が好きかと話し合い、酒の肴にした。
そのうちそれは全員に伝わり、4組のカップルと1組のセフレが生まれた。
セフレとなったカップルは互いにフリーだったが、男側からの強烈な顔グダが発生していた。
快活で面白い関西のブスと、面白いことを1つも言えない東京育ちのイケメンだった。
カップルとなった男女の顔面偏差値は、4組とも釣り合っていた。
そんな社会の縮図の中に、私たちもいた。
2. 年下イケメンとフツメン既婚者
私を推しメンだと公言してくれる男子が2人いた。
1人は年下のイケメンで、1人は年上のフツメン既婚者。
年下好きの私はもちろん、年下のイケメンが気になった。
彼は出会って2週目に「奈良へ日帰り旅行へ行こう」と計画し、私を誘った。
それに対して年上の既婚者が、分不相応にも嫉妬した。
「俺の方が絶対にこじきちゃんを好きだ」
「いまの奥さんと出会ってなかったら絶対にこじきちゃんと結婚してる」
「顔も性格もこれまで出会ってきた中で1番タイプ」
こんなどうしようもないことを、みんなの前で言う人だった。
彼は海外から関西に戻ってきたばかりで、関東に住む奥さんとは離れて暮らしていた。
そのため彼は毎日のように私を食事に誘い、私もまた彼に「年下イケメンとの恋愛事情」を相談する日々を送っていた。(結局、色々あって付き合うには至らなかったけど)
一方で、私は不倫なんか絶対したくない上に、彼の顔がまるでタイプではなかったので、事あるごとに
「悪いけど、私は(たかがフツメンの)既婚者を好きになることは一生ないよ」
と言い続けていた。
3. 嫁襲来
そうこうしているうちに、彼の奥さんが関西に来た。
それまで週4で晩飯を共にしていた私たちは、週1でランチに行く仲に落ち着いた。
私は友達を失った気分になり、なんだか少し淋しかった。
そして週1だったランチも2週に1回、月に1回になり、少しずつ疎遠になりながらも1年の月日が流れた。
4. 芽生え
2年目の春に、私はそのコミュニティから抜け、遠方に引っ越す決断をした。
彼とのランチで報告すると、彼はひどく落ち込んだ。
「俺友達いないのに、は〜い2人組作って〜とか言われたらどうすんだよ…」
そしてその日から、私がコミュニティを抜けるまでの1年間、彼はまた頻繁に私を誘うようになった。
出会ってから2年間、100回以上2人で会った。
ランチも、ディナーも、カラオケもダーツもビリヤードも、ホテル以外の場所はすべて2人で行った。
互いのことを何でも話した。
でも2年間、手をつなぐどころかボディタッチすらも1度もなかった。
その中で、私は次第に彼に惹かれていった。
単純接触効果もあったと思う。
でも確実に、見た目などではなく100%言動だけで気持ちを持っていかれた。
そんな経験は、後にも先にも初めてだった。
5. 私を落とした既婚者の言動
彼は私が出会った既婚者の中では異例の性質を持っていた。
ナンパなど考えたこともない種類の人間だったが、海外育ちゆえの快活さが群を抜いていた。
「このグラビアがこじきちゃんに似てるから、今日これで抜いた」
「俺たぶんこじきちゃんの目が好きなんだよね、猫飼ってるし」
「いいよ〜何でも頼んでいいよ、要らなかったらお父さんが食べるから」
「どう、色々うまくいってる?」
「こじきちゃんってどんなものが好きなの?俺ストーカーだから、アマゾンの購入履歴見せてくれない?それだけで抜けるから」
「こじきちゃんのお母さんって元気?」
こんなことを毎日言われ、好意を伝えられ続けて、でも当然ながら手を出してくる気配はない。
2人でベロベロに酔っても、密室のカラオケに行っても、互いの体には一切触れなかった。
もしここで手を出されていたら、絶対好きになっていない。
既婚者という壁が焦らしとなって、私をモヤモヤさせた。
6. この関係の名前
周囲からも「本当にずっと仲良いよね、もしかして不倫?…ではなさそうだけどw」とよく言われた。
これって不倫なのかな?
そう思って調べると、これは「プラトニック不倫」というものだと知った。
長期間、体の関係を持たないプラトニックな関係を貫きつつ、しかし互いに気持ちは繋がっている状態と定義されていた。
セカンドパートナーとも言い、多くの人がこの経験をネット上で話し合っていた。
自分たちは「男女の親友」みたいなもので、なんだか特別な関係のように感じていたけど、なんだこんなのよくあるんじゃん…と思って、少しだけ萎えた。
7. キス
そしてある日、ついに最後の夜がきた。
私と彼が2人で会える最後の夜。
いつも通り食事へ行き、酒を飲み、カラオケへ。
いつものごとく採点勝負でガチ歌いし、色っぽい雰囲気には全然ならない。
アイリッシュパブに移動し、強いお酒を一気に飲む。
最後だからと2人で記念に写真を撮った。
今日で最後なのに泣けないくらい、楽しくてずっと笑い転げていた。
彼が私にキスをした。
一瞬のことで、私の頭は付いていけなかった。
「ごめん、酔いすぎたね」と彼は言い、初めて終電を逃したので2人でネットカフェに入った。
私は横になって寝たけど、彼はずっと電気を付けて一睡もせず、朝まで延々と漫画を眺めていた。
もう最後までしてしまいたい私に反して、彼は自制心と闘い続けていた。
8. 恋愛に絶対なんてない
そうして私はコミュニティを抜け、遠方に引っ越し、彼と連絡を取ることはなくなった。
繋がっているインスタで互いの状況は分かる上、彼は頻繁にいいねやコメントを送ってくるが、私は返さないようにしている。
あの日「既婚者を好きになることは一生ないよ」と言い放った自分と、彼にキスをされて泣きそうなほど嬉しかった自分は確かに同じなのに、価値観を変えられてしまったように感じる。
恋愛に絶対なんて無いんだな、と感じさせられた体験だった。
以上、私の実体験「フツメン既婚者に惚れてしまった話」でした。
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