【67】 「もしもし、お母さん…」 絶望の中で交わした親子の会話
このお話はセフレだった男女が
結婚するまでの1000日間を
赤裸々に綴った超絶ドロゲス
ノンフィクションエッセイです
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前回までのあらすじ
アラサーにしてセフレの"イケチン"に沼った私は、どうにかこうにか交際まで漕ぎ着けるも、度重なる彼の不誠実な言動に嫌気が差し、自ら別れを選ぶ。その後、条件最高で性格のいいハイスペくんと出会うも、彼のあまりにも残念なセックスに告白を断り、未練を感じていたイケチンと復縁する。しかし、彼の酒癖の悪さが問題となり、再び破局してしまうのだった。
女を連れ込んだ元カレ(6時間前に破局)の部屋の前に座り込みを始めて30分。
いつもなら一瞬に感じるようなその時間が、今日は信じられないほど長い。
それは1秒ごとに私のメンタルが削られて、自己肯定感をすり減らしていってるからだろう。
私はイケチンと女に絶対にセックスをされたくなくて、いやもしかしたらさっき唐揚げ棒を買いに行ってた15分の間にもうヤられてしまってるかもしれないけれど、セックスだけは絶対に阻止しなければ今後の関係修復が永遠に不可能になると感じていたので、その希望の炎を絶やさないためにその場に居座り続けた。
もちろん、部屋の前にいることが彼ら2人に伝わるように、扉の隙間に脱いだサンダルを挟み込んで、1分おきに中に向かって「早く出てきて」と叫んだり、物音を立てたりしていた。
それでも彼は部屋から出てこず、狭いワンルームに女と閉じこもり続けていた。
これって、私が異常なのかな。
でも彼は、ほんの5日前にも私の母に会っている。
昨日までこの部屋のシングルベッドで一緒に寝てた。
カメラを設置して、これから信頼関係をもう一度取り戻していこうって2人で話し合って決めた。
ケンカ続きで、彼もキツかったのかもしれない。
でも私は、もっとしんどかったよ。
別れ話を済ませた今、納得できずに部屋の前に座り込んでる私は、側から見ると頭がおかしい奴なんだろう。
それでもその行為をやめたくなかった。
やめてしまったら、自分の精神が崩壊してしまうと思った。
ひとりぼっちで扉の前に座っていると、また涙が溢れてきた。
この状況になってから、怒りのフェーズと悲しみのフェーズが波のように交互に襲って来る。
きっと彼らが籠城する部屋の中には、私の不気味な泣き声が響き渡っていたと思う。
こんなに泣いたことはなかった。
親族の誰かが亡くなったときより、家族が病気になったときより、どんなときより涙が溢れた。
自分はものすごく強い女のつもりでいた。
でもさすがに、今回ばかりは耐えられなかった。
午前11時、私は母に電話を掛けた。
話すのをためらった。
今月3回も会った娘の彼氏が、昨夜突然別れ話をしてきた。
それだけでも充分ショックな内容なのに、さらに今の状況まで伝えるのは…
でも、もうひとりでは抱えきれなかった。
私は母にすべてを話した。
母はものすごくびっくりしていた。
そしてきっと悲しんでいた。
こんな恋愛しかできなくてごめん
好きを優先して婚期を逃し続けててごめん
孫を見せてあげられなくてごめん…
母に対する申し訳なさがどんどん襲ってきたけれど、話しているうちに私の気持ちは少しだけ落ち着いて、しんどいけど頑張ってみようかな…と初めて思えた。(母親ってすごい)
母は「気が済んだらそこから離れて帰りなさい。いつでも電話していいし、実家に帰っておいで。お母さんは味方だからね」と言ってくれた。
私はありがとうと言って電話を切って、きっとこの会話もうっすら聞こえているだろう彼に大声で呼び掛けた。
その瞬間、中からガタガタと音が鳴って、彼が玄関に姿を見せた。
次の瞬間、私が開けていた玄関扉の隙間を思いきり閉め切られ、中からドアガードを外す音がする。
外から声を掛け続けて2時間、彼がようやくマンションの廊下に出て来た。
彼は目が座り、かなり酒臭く、一瞬で酔っていることが分かった。
だからと言って、この状況は許せない。
私たちは狭い廊下で睨み合い、2時間越しの直接対決を迎えるのだった。
次回、過去最大のガチバトル
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-【68】へつづく -
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