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【66】 元カレが知らない女とセックスしてる瞬間、私は道で唐揚げ棒を食べていた

このお話はセフレだった男女が
結婚するまでの1000日間

赤裸々に綴った超絶ドロゲス
ノンフィクションエッセイです

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前回までのあらすじ

アラサーにしてセフレの"イケチン"に沼った私は、どうにかこうにか交際まで漕ぎ着けるも、度重なる彼の不誠実な言動に嫌気が差し、自ら別れを選ぶ。その後、条件最高で性格のいいハイスペくんと出会うも、彼のあまりにも残念なセックスに告白を断り、未練を感じていたイケチンと復縁する。しかし、彼の酒癖の悪さが問題となり、再び破局してしまうのだった。



<648日目> 元カレのマンション

別れた直後の元カレ・イケチンがクラブで出会った女を持ち帰る姿を目撃した私は、まだ持っていた合鍵で彼の部屋に乗り込むことを決意する。

マンションのオートロックを突破、エレベーターで上階に到着。
彼の部屋の前で、一応インターホンのチャイムを鳴らしてみる。

もちろん何の応答もない。

中からは人の気配や物音が一切しない。
きっと息を殺してこの状況をやり過ごそうとしてるんだろう。

私は意を決して合鍵を使い、重い玄関扉を引き開ける。

ガン、と大きな音が鳴った。

扉の隙間から中を見ると、普段はしないU字のドアガードがしっかり掛けられていた。


▼ なんと、当時の実際の写真が残ってた

見るのもしんどい


私「イケチン、何してるの?合鍵持ってきたよ

玄関には彼の靴と、その隣に女性もののブーツが脱ぎ捨てられている。

昨日まで、たった今まで私が靴を脱いでいた場所。

玄関の明かりは点いていたけど、真っ暗な居室からは何の物音もせず、2人の男女が息を潜めてベッドに潜っている姿が想像できた。

私「イケチン!もう女連れ込んでるの?別にいいから、早く出てきて。鍵返したいから。私の荷物も全部まとめて持って出てきて。あなたたちがいま寝てる枕も、私が持ってきたものだよね。昨日まで使ってた。全部全部持って出てきて。出てくるまでここ動かないから」

中からは何の応答もない。

重い玄関扉の引き手を持つ腕が疲れてしまったので1度扉を閉め、反対側の手に持ち替えて再度また引っ張る。

ガン、と大きな音がする。

世の中って残酷だな、と思った。


どうして私はこんな人を好きになってしまったんだろう。

きっと彼からすると、「もう別れたんだし別にいいじゃん」「悪いことはしてない」って、そんな感じなんだろう。

たしかにその通りだ。
こんな風に早々に切り替えたり、なんなら浮気相手に乗り換えたりする男性なんて、世の中にごまんといる。

彼がやっていることは、別にルール違反でもなんでもない。

でもさ、私にとってはやっぱり違うんだよ。

こんな最低の結末は悲しいから、せめてきちんと終わらせて欲しかった。
歩いてすぐの場所に住んでる元カノが合鍵を持ってる状態で、GPSの位置情報も繋ぎっぱなしのまま、荷物も返さずに、こんなことしないで欲しかった。

別れて4時間で初対面の女を連れ込むのはモラルが無さすぎる。

私は何度も何度も扉の隙間から彼に呼び掛け、腕が疲れては扉を閉じ、また開いては声を掛けた。

その度に、ドアガードが無機質な音を立てる。
きっと近隣住民にも気付かれているだろう。
申し訳ないと思ったけれど、そんなことを考えられる精神状態ではなかった。


しかし、どれだけ待っても彼らは息をひそめたまま部屋から出てこず、30分を過ぎた頃にはヒソヒソと話し声までし始めた。

内容は聞こえなかったけど、完全に私をバカにしているのが分かった。

私は何度も電話をかけたり、メッセージを送ったり、ありとあらゆる手段で彼に訴えてみたけれど、それらもすべて無視された。


▼ その瞬間のLINE

キツイね


この扉の前に立って、40分以上が経過した。

私の心はどんどん死んでいったけど、ここで負けるわけにはいかなかった。

私は今ここできちんと自分の尊厳を取り戻して、これから先強く生きていかなきゃいけないから。

私「いま部屋にいる女の子に申し訳ないから、私は一旦ここを離れるよ。15分後に戻ってくるから、それまでにその子を部屋から出すか、私の荷物をまとめて返す準備をしておいて」

扉の隙間からそう声を掛けて、近所のセブンイレブンへ向かった。

空はものすごく明るくて、私の状況とは真逆の様相だ。

不思議なことに、家を飛び出してから涙は1滴も出ていなかった。
きっと悲しみより怒りの感情のほうが強かったんだと思う。

セブンイレブンで食べたくもない唐揚げ棒を買う。

彼のマンションの周りをうろつきながら、一口だけ先端の唐揚げを齧る。

その瞬間、こらえていた涙が滝のように溢れ出した。


全然おいしくない。

高校生の頃、この唐揚げ棒が大好きだった。
だからなんだか懐かしくて、絶望感で心細い今の私を癒してくれるんじゃないかと思って、久しぶりに買ってみたんだ。

それなのに、全然おいしくない。

涙が止まらなかった。

普段なら絶対においしいはずのそれは、その日はほとんど味がしなくて、どうしてこんなものを買って平日の朝10時に外で食べているんだろう…と、自分の状況を俯瞰してさらなる絶望感を感じるアイテムとなってしまった。

私は一口だけ齧った唐揚げ棒を袋に戻して、薄手のアウターのポケットに入れた。


全然美味しくなかったのに、この味を今でも覚えてる


15分ほど経った頃、彼のマンションに戻ってみると、相変わらずドアガードが掛けられた状態で、先ほどと何の変化もない扉が私を待ち構えていた。

こうなったらもう彼が出てくるまで意地でもこの扉の前から動かない。何時間でも待ってやろうと思った。

多分、私がその場から離れることで、彼が新しい女と楽しくセックスをすることが、どうしようもなく嫌だったんだと思う。

こうして私は元カレの部屋の前で人生初の座り込み抗議をし、ますますメンタルをすり減らしていくことになるのだった。


人生で1番しんどかった瞬間


この連載は、私が夫と出会ってから夫婦になるまでの1000日間を綴ったドロゲス生モノ婚活エッセイです。スキ・引用・拡散・コメントどんどんお待ちしてます♡

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メンバーシップでは書き下ろしの裏話や番外編も公開予定!

▼ このトラブルがあった当日に書いた記事

-【67】へつづく -


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