カナダに来た難民の方に英語を教えた経験から、逆に学んだこと
私は2015年の夏に、難民としてカナダに来た方に英語を教える仕事に就きました。期間はトレーニングを除くと1ヶ月間。私の初めての英語講師としての仕事でした。
このプログラムに講師として参加した経験は、私にとって本当に貴重なものとなりました。たくさんの驚きと笑いと発見と学びがありました😂 とても元気がもらえた経験だったので、ここでシェアして、少しでも読んでる方の元気や発見に繋がれば嬉しいです😊
ちなみに、このプログラムの対象は、難民の大人の方で、生徒さんの年代は20代〜70代くらいまででした。(子ども向けプログラムではありませんでした。)
生徒さんの出身国は本当に様々でしたが、当時内戦があったシリアから来た方が多かったと思います。コンゴ共和国や中国出身の方も居ました。
語学学校の夏休み期間に、学校がなくて家に引きこもりになる難民の方が多かったそうです。そんな方の為の気晴らしになる学びと、新人講師の育成を目指して、この英語学習プログラムがスタートしたそうです。
授業中のお祈り禁止!笑
実際に授業が始まる前の研修で、トレーナーから「授業中のお祈りは禁止!」と必ず伝えるようにと言われ、ビックリ!(笑)
「まさか授業中にお祈りを始める人なんて…」と思ってましたが、授業初日。ドキドキしながら教室に入ると、教卓の目の前に、大きな十字架を首からかけ、大きな聖書?をもち、黒のローブを来た年配の方が…
「教室間違えた…?」と思っていたら、その方が「ティーチャー?」と聞いてきました。
「イエス。」と答えると、「オー!アー!」とハイテンションになり、ハジメマシテのご挨拶。(笑)
そして、この方、本物の聖職者の方でした…
(おそらくムスリムの方だと思ったのですが、
大きな十字架をかけていたので、キリスト教だったのかもしれません。)
この方、私のクラスの生徒です。
ちなみに私は当時、20代半ば。
生徒の牧師さん(神父さん?)はおそらく50代から60代。
オーマイゴッド(笑)
こんな小娘が、この聖職者に「授業中にお祈りは禁止!」なんて言わなければならない…
緊張して、もう泣きたいし、帰りたい(笑)
「いきなり反発され、揉め事になったらどうしよう…」と不安になりました。でも、私はこのクラスの講師ですし、役割は果たさなければ…
授業が始まり、このクラスのルールをドキドキしながら伝えると、なんと、みんな笑顔で「オッケー!」
牧師さん(神父さん?)まで「オッケー!」
...私の緊張返して…(笑)
休み時間になると、聖職者の方の周りには人だかりが…
廊下にはヨガマットみたいなのを履いて、お祈りする生徒さんが… 私はこの時改めて、何教であれ、彼らは本当に信仰深いんだなぁと感じました。神を本気で信じて、本気で崇めてる。そのパワーは凄いと感じました。
「信じるものが救われる。」
それは本当なのかもと、彼らをみて感じました。
自分の誕生日を知らない
プログラムが始まってから、全員のIDチェックが一度だけありました。私がなんとなく気づいたのは、難民の方の生年月日。誕生日が1月1日の人が多かったです。
週一回のミーティングで、トレーナーがその事について説明してくれました。
本当に誕生日が1月1日の人もいるけど、難民の方の大半は自分の誕生日を知らないそうです。
いつ、どこで、生まれたのかが分からない。
だから、カナダへ移る時に誕生日を「1月1日」とするそうです。
この話は日本で生まれ育った私にとって、とてもショックでした。
自分が何歳なのかが、はっきりわかることは当たり前だと思っていました。
自分の誕生日を知ってるのも、当たり前だと思っていました。
子どもの時は、誕生日に何かしらのプレゼントをもらい、家族や友人からお祝いしてもらうことは、当たり前だと思っていました。
この世の中、当たり前なことなんて一つもないんだ。
人は生まれた時から、人に支えられてるんだと学びました。
リテラシークラスの意味
私のクラスは、「英語1」と呼ばれており、英語の基礎を教えるクラスでした。中学1年生レベルの英語です。
「私のクラスが、レベル的に一番下かなぁ」と思っていましたが、そうではありませんでした。私のクラスの下には、なんと、3クラスもありました… そのクラスは、「リテラシー」と呼ばれていました。
最初は正直、「どんな事を教えるんだろう…」と不思議に思っていました。アルファベットなのかな?とか考えていました。実際に「リテラシークラス」を見学に行くと、私は衝撃を受けました。
彼らが学んでいたのは、
えんぴつの持ち方、消しゴムの使い方、ハサミやノリの使い方。文字と記号の区別。アルファベット。紙に文字を書く練習。
50代、60代、70代の方が、幼稚園や保育園で学ぶことを、ぎこちない手つきで、一所懸命に取り組んでいました。
彼らの反応が堪らなく新鮮でした。
「これで文字が消せるのか…!」
「これで紙が切れるのね!」
文房具一つ一つを手に取り、とても興奮した様子で、
使い方の説明を必死に聞いていました。
文房具を使う練習中に、ある方が私の視線に気付き、
話しかけてくれました。
“I’m ashamed.”
「(こんな歳にもなって、こんな事も出来ないなんて、)恥ずかしいわ。」
彼女は恐らく、文房具の存在は前から知っていた人だと感じました。
彼女は恐らく40代から50代。
この歳になるまで、国の事情で教育を受けたくても受けれなかった。この歳になるまで、文房具の存在は知ってたけど、使う機会がなかった。彼女の切なそうな表情を見て、彼女の心境を想像すると、涙が込み上げてきました。
それを堪えながら私は、「恥ずかしいことなんかじゃない。あなたはとても立派で、今からでもチャレンジする姿勢を尊敬します。」と伝えました。
リテラシークラスにいる方は、母国での教育が10年未満しか受けられなかった方へのクラスだと、後から知りました。
教育がないと、人はえんぴつも使えない、消しゴムも使えない、ハサミやノリ、物差しなど、文房具は使えないという事に気付きました。
そして、リテラシー。日本語で言う「識字率」です。
教育がないと、文字と記号の区別がつかない。読み書きができないと言うことに、改めて気付きました。
「教育を受けることができる」ということは当たり前に思っていましたが、そうではなかったです。教育を受ける事がいかに重要か、身をもって体験する事ができました。
この1ヶ月を通して私が学んだこと
2015年。もう6年も前のことですが、今でも鮮明にこの1ヶ月のことは覚えています。短かったですが、とても濃い1ヶ月でした。
授業中に、「みんなの夢は?」と聞いた事があります。
ある方は、「まだ母国に家族がいる。家族と一緒にカナダで暮らす事が夢だ。」と語って下さいました。
別の授業では、授業中にあるおじいちゃんが私のところに来て、泣きそうになりながら、「メンタル…プロブレム…ゴー…ホスピタル…」と伝えくれました。
心配になりましたが、「大丈夫だよ。気をつけてね。」と送り出しました。内戦を経験するという、壮絶な人生を背負ってるんだと感じました。
この1ヶ月、総じて彼らは明るくて本当に元気でした。
足が痛いと言いながら毎日来るおばあちゃん。
毎日笑顔が素敵な20代女性。
私の親みたいな中国人男性。(笑)
コンゴ共和国出身のプライドが高めの女性。(笑)
みんな笑顔で、エネルギーに溢れてて、毎日ワクワクしている様子でした。
私も毎日が新しい発見ばかりで、教えてる立場でしたが、学んだことの方が多かった気がします。
正直、毎日3時間のレッスン、プラス、週一回のアウティング(課外授業)、というのは生半可なものではなく、本当に大変でした。カナダでTESOLを取り、ボランティアを積み重ね、ようやく手にした仕事でしたが、本当に本当に切羽詰まった状態でした。
でも、まわりからのサポート、同僚やトレーナー、そして生徒さんに支えられて、やり切れたんだと思います。本当に感謝でしかないです。
周りに感謝すること、いつもワクワクすることを忘れずに。
これからも頑張りたいと思います😊
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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