朝起きて自然と行きたくなる会社とはどんな会社か?
以前のnoteで「行きたくなる会社にしたい」という思いについて書きました。今回は、そのことについて、思っていることをもうちょっと書いてみようと思います。
「行きたくなる会社にしたい」と思う背景には、実は自分自身の「会社に行きたくないなぁ」という若い頃の経験があったからなんです。
会社に行きたくなかった20代の私
新卒で入社した会社では、ある時期から毎朝「会社行きたくないなぁ」という気持ちになっていました。
商業科の短大卒だったので経理系の事務職をやっていました。最初の頃は学んだことが生かせてやりがいもあったのですが、3年目くらいのときに壁にぶつかったんです。
壁と言っても仕事の失敗とか挫折とかではなくて。同期入社や数年後輩には四大卒の同僚が多くいる中で、仕事のレベルや量と給料が一致していないなと感じたんです。短大で学んだ知識を生かして難しい仕事をしていても、四大卒の社員とは給与体系が違うことを知ったのでした。
また、多くの女性社員は結婚して辞めることが当たり前のような風潮がまだまだありました。仕事を頑張っても昇給も評価もあまりされないどころか、いずれお荷物扱いをされるんじゃないかと想像したら、気持ちがプツっと途切れてしまったんですね。
仕事自体が嫌だとか辛いとかではなかったし、職場環境も人間関係もよかった。でも、朝起きると、とりあえず休む理由を考えるような習慣になっていました。
そういう気持ちで会社に行っていると、パフォーマンスにもつながらないし、申し訳ない気持ちになりました。
今となれば、当時のそういう考えはちょっと未熟だったなと思います。短大卒と四大卒の違いとかも含めて、そういった社会のことを無知すぎたんですよね。進路決定や大学選びをする高校時代にタイムスリップして、ガツンと言ってあげたい。
前置きが長くなりましたが、そんな私自身の経験があるので、「朝起きて、会社に行きたくなる」ということは、すごく大事だと思っています。
そんな会社にしたいと、社長になったとき胸に誓いました。
会社の業績や評判が良いだけでは、社員のモチベーションは上がらない
もちろん、仕事はあくまで仕事なので、家庭やプライベートよりも重要だということではありません。それでも、イヤイヤ行くとか義務感として割り切って行くよりは、「さぁ、今日も張り切って仕事をやるぞ!」と前向きな気持ちで向かえるような会社の方が、人生楽しいんじゃないかと思うんです。
一人ひとりの人生の中の、貴重な1日の3分の1の時間を充ててもらう場所である以上、その貴重な時間に見合った場所でありたいという感覚です。
だから、「行きたくなる会社」と言っても、和気藹々とした仲良しクラブにしたいということではないです。そういうことではなく、社員それぞれが仕事に何かしら自分の「やりたい」を見出して、それが前向きな気持ちにつながっていく。そんな意味合いでの「行きたくなる」かなと思っています。
実は、私が社長に就任する前の会社の雰囲気があまり良くなかったんですよね。経営陣と社員との間に気持ちの溝ができちゃっているなって、すごく感じたんです。
その当時、業績はとてもよかったんです。メディアからの取材も定期的に入って、お客さんからも評価されて、売上は伸びていました。その背景には、残業も増えていたり、社員の多大な頑張りがありました。
業績が伸びて、社外からも評価されている。でも雰囲気がよくないって、おかしいですよね。残業代が出るから仕事頑張ろうっていう話でもないですし。自分の意志とは関係なく、次々と仕事が降りかかってくるような状況では、前向きな意志で仕事に向かうのは難しい。
自分がこう頑張りたいとか、会社の成長とともに自分も成長できるとか、そうやって一生懸命仕事して、その結果として残業するなら、まだいいんです。でも、誰かの指示で山積みの仕事をして、残業までするっていうのは、モチベーションが続かないです。
これでは会社も長く続かないなって思いました。どんなに良い製品のアイデアがあっても、それを試行錯誤して作ろうというモチベーションがなければ、良い製品なんて作れるわけがないです。その原動力は一人ひとりの社員ですから、そういう状況じゃなければ、そのうち会社は回らなくなるというのは当然です。
業績が伸びて社外からの評価が高まっても、それは社員が望んでいた形とは違っていた感じでした。外に向いて経営していた分、社内を丁寧に顧みれなくなっていたんですね。
それに、その頃は社長と会長との意見が食い違うこともあったので、社員が安心して経営陣についていける状況でもなかったんだと思います。
そんな中、2019年3月に私が社長に就任しました。その当時の話はこちらのnoteで書いていますので、よかったら読んでみてください。
3年前の社長就任時から変わらぬ初心
社長になったときに社員の前で言ったんです。「私は引っ張っていくのではなく、みんなを後ろから押していくような社長になります」と。
同時に心の中で掲げたことがありました。それが、冒頭でも書いた「行きたくなる会社にしたい」ということです。
私は自分の意志と責任で会社を立ち上げた創業者ではありません。それに、くればぁという会社は50年以上も続いていますので、社員一人ひとりにもくればぁらしさは宿っているはずです。
だから、私は引っ張るのではなく後押しをするのがよいと思いました。社員それぞれの「やりたい」という思いを尊重し、実現をサポートしたい。まだそれがない人には「やりたい」の芽を一緒に見つけ、伸ばしていきたいなと。
社員それぞれが仕事の中に自分の「やりたい」を見出せると、「会社に行きたくなる」と思うんです。その「やりたい」という気持ちを阻害するような職場環境にはしたくないと思いました。
だから、私が社長になっても会長とは共同代表でやっていくことにして、経営陣間の意識は常に一致させておかなければいけないと強く意識しました。意見がぶつかることがあっても、正しく議論して、最後は会社として一つに決定するべきだと。
会長が創業時から育んだ会社の良い文化や仕組みを守りつつ、業績や社外からの評価を作った前社長の経営力の強さも継承しつつ、私なりにも更に会社を良くしていけるような組織づくりを描いています。そのキーワードが「行きたくなる会社」です。
行きたくなる会社=居心地のよさ×やりたいの意識×助け合いの文化
最近では、心理的安全性が重要だということがよく言われますよね。上司や同僚からの反応を怖がったり、恥ずかしさを感じたりすることなく、自分の意見を率直に言えたり、自分らしく振る舞えたりできる職場環境が重要だということです。
心理的安全性とパフォーマンスは比例するという考えがありますが、私もそう思います。若い頃の私自身がそうだったように、「会社に行くのが嫌だな」っていう気持ちがあると、本来の力を発揮できなかったり、不安な気持ちが業務にも出てしまったり。
でも、そういった居心地のよさとパフォーマンスを両立させることって、なかなか難しいことだとも思います。居心地がよいことと雰囲気が緩いことは違いますし、心理的安全性を気にしすぎて意見のぶつかり合いが起こらなくなったら成長しません。
社長に就任したときに決意したことですが、社長として3年が過ぎた今でも悩むときはありますし、まだまだ勉強中です。
その中でも1つ確実に分かったことがあります。「居心地のよさ」にとって重要なことは、「お互いに助け合える雰囲気や環境」があることだと思っています。
業績が伸びているとき、つまり仕事が忙しいときによくあるのは、仕事ができる人に仕事が多く集まりがちになることです。そういう人は自分で頑張るだけでなく、周囲もフォローして成果を出しているのですが、だんだんと周囲の人ができる人に頼りっぱなしになっていく。
そうなると、互いに助け合っているとは言えず、仕事ができる人は「自分だけ損をしている」っていう考え方になってしまう。一方、周りの人は自分の考えを持たなくなっていったり、中には「ラクしてただ乗り」しているような甘えが生まれたりします。
そうなると、もう悪循環。損得で考えるようになったら、心理的安全性も居心地のよさもあったもんではないですね。実は、社長就任前の会社の雰囲気がそんな状況でした。
だからこそ、3年かけて助け合いの文化をつくることに心血を注ぎました。損得ではなく助け合う行動を迷わずにできるというのが、居心地のいい会社なんだと思います。それがあって初めて、自分の「やりたい」の意識が芽生え、「やりたい」と言えるようになるはずです。
そこに行き着くまではまだまだ課題がたくさんあるし、一朝一夕にできあがる文化ではないと思っています。
そして、社長就任3年目の節目に、ミッション・ビジョン・バリューを新たに定めました。その中のバリューには、「自分のため、仲間のため、社会のためをひとつのことに。」ということを掲げました。
くればぁが大事にしていきたい「助け合いの文化」を明文化し、それをしっかり社内に浸透させていくことで、くればぁがもっとくればぁらしくなり、強くて優しい会社になっていけると信じています。
そんな会社になれたら、それが「行きたくなる会社」なんじゃないかなと思います。