見出し画像

「もしも」を「いつも」にすることで、災害時に家族を守りたい。我が子への思いから生まれた新商品のアイデア。


くればぁは、日常使いと防災用を兼ねる新商品「魔法のポケット」を開発し、一般社団法人フェーズフリー協会主催の「フェーズフリーアワード2023」のアイデア部門に入選しました。

この商品は、日常時はウォールポケットとして生活に必要な物を入れて使うことができ、災害時にはリュックにして持ち運んだり、防水防寒のポンチョとして使用することができる、3in1の防災便利グッズです。

「非日常を、日常に」というフェーズフリーをコンセプトとした「魔法のポケット」。新商品に込めた防災への思いや開発秘話を、石橋社長に聞いてみました。

(「魔法のポケット」開発メンバーの座談会noteも、ぜひご覧ください。)


Q1. どのような背景や思いから、「魔法のポケット」を開発しようと思ったのですか?

ここ数年、本当に災害が多いですよね。特に集中豪雨やそれによる浸水被害など、水害が多いというのは常々感じていました。

今年6月始めにも台風2号の影響で線状降水帯が発生し、当社のある愛知県東部の豊橋市と豊川市に警戒レベル5の「緊急安全確保」が出されました。とても残念なことに、車の水没によって1人が亡くなりました。

この地域の主要河川である豊川(とよがわ)は度々増水していて、浸水被害も多い地域です。私が子どもの頃にも近くの川が氾濫し、床上浸水は何度も経験していました。今はだいぶ治水は進んでいますが、近年の集中豪雨の頻度や規模を考えると、水害対策はとても重要です。

「魔法のポケット」の以前から、くればぁでは「守るプロジェクト」という取り組みを行っていて、建物や車を守る防水シートの開発・販売や、地域の防災活動などを行っています。

「守るプロジェクト」を始めたのは、2019年に私が社長になってからです。

なぜそういう取り組みをしようと思ったかというと、私自身が家族を持ったということが大きなきっかけです。今、3歳と0歳の子どもがいるので、私が守らなきゃいけない存在ができたというのは、気持ちの変化としてはすごく大きかった。

そして、「魔法のポケット」を開発しようと思ったきっかけも、テレビで目にした豪雨被害のニュースでした。被害者の方が出たというニュースを見るとすごく悲しくなります。

もっと早く避難所に避難できたら、もしかしたら救えたかもしれない命があったんじゃないかなと思いました。でも、避難所に避難するのって、災害のときには難しいとも思うんです。

例えば、私には小さい子どもがいますが、小さい子を連れて避難所に行くことを考えてみると、全然現実的じゃない。避難所の生活は不便だろうし不安だろうし、そう思うとギリギリまで家にいようと考えてしまうだろうなって。

じゃあどうしたらいいのか。避難所でもできる限り普段通りの生活ができるという安心感を得られたら、避難する決断のハードルも少しは下がるかもしれない。

そのための商品開発が何かできないのかなと考え始めたのが、「魔法のポケット」を開発しようと思ったきっかけです。


Q2. フェーズフリーの商品とありますが、それはどのような考え方ですか? 関心を持ったのはどうしてですか?

フェーズフリー(Phase Free)というのは、言葉の通りですが、それぞれの局面(フェーズ)に制約を受けない(フリー)という概念です。つまり、「平常時・日常時」と「災害時・非常時」という2つのフェーズの境目をなくすという考え方です。

日常の中に非常時を溶け込ませて、災害が起きた時に普段通りの生活ができるようにする。日常使いするものが、災害時にも同じように使える。そんなフェーズフリーの考え方を取り入れて、「魔法のポケット」の開発をしました。

先ほど話した「守るプロジェクト」の一環で、災害対策商品や防災用品を作りたいと考えていました。いろいろリサーチをしていく中で、「フェーズフリー」という考え方に出会い、すごくピンときたんです。

私自身、そういった考えがどこかにあったんですね。子育てしているので、災害時にパッと動ける、普段通りに避難できるというのは、すごく重要だと考えていました。

うちの子どもは、テレビで地震速報が出るとすぐに机の下に隠れるんです。保育園で毎月防災訓練をやってるので、それが自然と身についているんです。

これってすごく大事なことですよね。非常時にあれこれ考えてから行動するのではなく、一連の流れで非常時の動きにスムーズに切り替わることが災害時には重要だと思います。

そういう意識で商品開発のアイデアを考えていたので、「フェーズフリー」という考え方は、「まさにこれ!」という運命的な出会いでした。


Q3. 「魔法のポケット」の開発はどのように進められたのですか?

一番最初は、100円ショップでウォールポケットとレインポンチョを買ってきて、製造部のメンバーのところに持って行ったんです。「これとこれをくっつけて、1つにしてほしいんだ。日用品をそのまま持ち出せるし、防雨防寒になるでしょ」って。

「えっ、どういうことですか?」って反応で、みんなポカーンとしていました(笑)

そこから、先ほど話したように、フェーズフリーの考え方を取り入れた防災用品を作りたいという説明をしました。

災害時に持ち出したいものを聞いてみると、お金とか通帳って答えが返ってきます。「でも、それって本当に避難先で使える?」、「メガネとかコンタクトがないと動けないじゃない?」って話していく中で、開発メンバーの方からも、「私なら何いれようかな」「いつも飲んでる薬がないと困る」とかって話が広がっていきました。

「メガネ入れるんなら、メガネケースが入る大きさのポケットがいるよね」、「じゃあ、ウォールポケットのサイズも大中小あった方が使いやすいね」、「レインポンチョにしたときに、ポケットがどこに付いていたら使いやすいかな」という感じにどんどん話が膨らんでいくのを聞いて、私は内心で「よしよし、あとはもう任せよう」って、にやりとしていました(笑)

商品開発って、最初が肝心だと思うんです。誰かに言われたことを、言われた通りに作っていても面白くないですよね。それに、試作品ができる度に、何度も何度も「これでいいですか?」って確認しに来ることになります。

でも、商品のアイデアや使い道が「自分ごと化」すると、自分たちで試行錯誤して開発に取り組みます。アイデアの種は私にありましたが、それをしっかり形にして、生活者のみなさんに受け入れられるものにするのは、製造部メンバーのプロの仕事です。

ひとしきり話が広がったところで、「いつまでに必要ですか?」って私に聞くんです。納期を確認するということは、もう作ることは覚悟したわけですね(笑) 商品のイメージもつかんだようでした。

一度「自分ごと化」したら、メンバーは頭の中でずっと考えが渦巻いている感じです。ものづくりのプロ達なので、蒔かれたアイデアの種は、商品として形にしなくてはいられないんでしょうね。そこから先は勝手に自走していくので、試作第1号が上がってくるのはすごい早いです。


Q4. 最初の試作品ができたときの感想や、その後の試行錯誤の苦労などを教えてください。

試作第1号を見た時の感想は、「まさにコレ!!」という感じでした。「これこれ、これが欲しかったやつ」って。だから、「ウォールポケットとポンチョをくっつけてほしい」と話をしたときのアイデアや思いがちゃんと伝わっていたんだなというのはすごく感じました。

手にとって使ってみられる試作品ができあがると、実際の利用シーンがもっと具体的にイメージできるようになります。部屋にあるウォールポケットを持ち出すときを考えてみると、ポンチョを着て避難しないといけないのって不便だよなと気づきました。

豪雨の多い地域なので、水害時のことしか考えていなかったことに、この時始めて気づくんです。地震や火事もあるわけです。雨が降っていないのにポンチョを着なきゃいけないのは、全然フェーズフリーじゃないよなって。

そこから、リュックやカバンとして使えるのがいいんじゃないかというアイデアに発展して、「2 in 1」だったアイデアが「3 in 1」に進化しました。ウォールポケットがリュックに変身して、さらにポンチョとしても使えるというのは面白い商品だねってメンバーでも話していました。

それに、うちの子どももリュックで保育園に登園するようになっていたので、リュックタイプなら子どもでも持ち運べるかもしれないとも思いました。子ども連れでの避難時に使いやすいというのも大事です。

「じゃぁさっそく、リュックタイプで試作してみよう」と動き出しました。そこから先は、製造メンバーが試行錯誤。リュックだけじゃなくて、ボディバッグや肩掛けカバンにしてみてもいいよねという感じで、いくつかの試作品を作り始めてくれました。

いろいろなバリエーションを実際に作ってみて、「どのタイプが使いやすいのか」、「どう改良したらいいのか」というのを話し合っていきました。やはり実物を見ないと、問題点だったり、いい部分っていうのは見えてこないです。

「アイデアを形にできる」っていうのはくればぁの得意なところ。今回の商品開発だけでなく、お取引先様とのやりとりも、このように進めていくことが多いですね。企画力と実現力が強みだと評価いただいています。


Q5. 開発メンバーとのやりとりで印象的だったことはありますか?

私がすごく嬉しかったことがあって、リュックタイプの試作品を持ってきた開発メンバーが、「これ、すっごくカワイイです!」って見せてくれたんです。

最初にアイデアを持っていったときは「えーっ」という反応でも、自分達で試行錯誤して作り上げた時に「かわいい」っていう言葉が出たのを聞いて、「これは、いけるな」って思いました。

誰かに言われて仕方なく作ったとか、自分は気に入ってないものができたっていうのではなくて、作った本人がかわいいって思えるのはすごく大事なことだと思っています。

一般向けの商品の場合は、機能要件をすべて満たしたからといって、世に受け入れられるというわけではありません。生活に馴染むような、愛着を感じられるような雰囲気があった方がよくて、それはクリアしたんだなって感じました。

商品開発をするときに大事なことは、アイデアを自分ごと化するということと、「かわいい」「かっこいい」といった感覚的な良さを感じられることだなと思っています。逆に、アイデアの段階ですごく良いと思っても、試作品ができたときに「あれ、なんか微妙…」ということもあります。

「魔法のポケット」の開発メンバーは求められた要件に応えるだけでなく、プラスアルファを考えて作って、さらに「かわいい」という言葉が出てきました。それを聞いて、今後は私の中に、「みんなのためにも、これは絶対商品化しなきゃ!」っていう使命感が生まれました。


Q6. 最後に、今後の商品開発への意気込みや展望などを教えてください。

フェーズフリーという考え方をもっと世の中に広めていきたいと思いますので、日常の中でも災害時を意識した商品というのは、これからも作っていく予定です。

また、ずっと取り組んでいる「守るプロジェクト」としては、各家庭での使用だけでなく、自治体や地域での災害対策にも貢献できるような防災用品の拡充に力を入れていきたいと考えています。例えば最近では、災害用ヘリコプター専用の保管用防水シートを開発しました。

新商品を開発するためには、世の中にどのような「困った」があるかに注意を向けて、アイデアの種を見つけていく必要があります。ニュースを見たり、人と会話したり、子育てしたり、日常生活のいろいろな場面にヒントはあると思います。

今は、私が新商品のアイデアを考えることが多いですが、社員全員がそういう発想を持っていけるようにしたいですね。私だけでは限界がありますし、多くの社員からもアイデアや意見が出てくるようなカルチャーをつくっていくことが重要だと思っています。

最初からホームランを打てるわけもないですし、ヒットだって10回に1回とかかもしれません。でも、打席に立たなければ何も起こらないわけです。私自身、ほとんど空振りですが、まずはチャレンジしてみることが大事ですね。

やってみて初めて分かることはいっぱいあるので、まずはアイデアを出してみて、試作品を作ってみて、そこからブラッシュアップしていくというのが、くればぁらしい商品開発かなと思っています。

そういう意味でも、この「魔法のポケット」は、くればぁらしい商品になったと思いますし、社員みんなすごく思い入れのある商品です。これから販売活動もがんばっていき、私たちの思いが世の中に受け入れられたら、本当に嬉しいですね。

P.S. 
「フェーズフリーアワード2023」は、入選した商品に対して一般のみなさまからのオーディエンス投票が行われ、最終表彰結果が決定します。
ぜひ、こちらから「アイデア部門」の「魔法のポケット」に投票をよろしくお願いいたします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?