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人や地域を守るレスキュー隊のような会社になっていきたい!――「守るプロジェクト」に込めた思い

ミッション・ビジョン・バリューの制定に合わせて、くればぁのコーポレートサイトが新設されました。今回は、サイトのトップページでも紹介されている「守るプロジェクト」について、石橋社長に聞いてみました。


――「守るプロジェクト」とはどういう取り組みなのでしょうか?

くればぁはメッシュの会社です。2000種以上と豊富なメッシュを取り扱っていて、創業以来培ってきた高い縫製・加工技術が強みです。BtoBの領域では取引先様の課題に応える製造開発や産業用メッシュの販売、BtoCの領域では高性能マスクや防水シートなどの一般向け商品の企画開発、販売を行っています。

商品として売っているものは高性能マスクや防水シートですが、くればぁが提供している価値は”大切な人やものを守る”ことだと捉えています。

他にも、再生可能素材を使った製品や水質浄化関連の製品の開発製造など、地球の環境を守ることにも取り組んでいます。また、CSRの取り組みとしては、清掃活動に参加して地域の環境を守ったり、地元動物園の動物スポンサーを通して子どもたちの笑顔を守ったり、水害時には会社の駐車場を避難場所として提供することで車を守ったり。

「地球に優しく、街に優しく、人に優しく。」をミッションに掲げていますが、それを商品開発やCSR活動で実現するための取り組みが「守るプロジェクト」です。

――「守るプロジェクト」がスタートした背景を教えてください。

実は、最初から「守るプロジェクト」としてスタートしたわけではないんです。

ミッション・ビジョン・バリューの策定やコーポレートサイトの新設など、リブランディングを考えているときに、外部の会社さんからふと言われたことがきっかけでした。
「くればぁさんの製品って、何かを守るためのものが多いですね」
そんなふうに言っていただいたんです。

高性能マスクは、人の健康を”守る”、大事な家族を”守る”。
防水シートは、家を”守る”、車を”守る”。
たしかに、”守る”ということがキーワードになっているんですよね。

くればぁの事業や取り組みを第三者目線で見ると、そういう捉え方があるんだ!って新鮮な気づきがありました。

ちょうど、リブランディングを考えていたので、”守る”をテーマにしたプロジェクトとして取り組んだ方が、会社と事業と製品に一貫性ができるなと考えました。

――ところで、以前はBtoBの製造開発だった会社が、高性能マスクを開発して一般向けに販売したのはどうしてでしょうか?その当時は、まだ、”何かを守る”という理念があったわけではないのですよね?

もう20年くらい前ですが、マスクの開発のきっかけは、花粉症で苦しむ家族のためだったんです。父である現会長が社長だったとき、私も私の母もひどい花粉症でした。市販のマスクを使っているのを見て、「顔とマスクの隙間から花粉が入ってきたり、マスクの表面に花粉が付着したら意味がないんじゃないか?」と思ったようです。

それで高機能メッシュを使ってマスクを作り始めたんですが、くればぁのものづくりって、昔からちょっと too much なところがあって…(笑) ある程度いいものができても、そこをもっと突き詰めるんです。普通の人が使うマスクにしては、ちょっと良すぎるものができ上がりました。

それぞれ機能の違うフィルターを何層にも重ねて、外側には静電気防止フィルターをつけることで、極めて高い遮断性能で花粉のような微粒子を防御。マスクの形状もくればぁ独自のもので、鼻と頬の形状記憶ワイヤーと調節機能付きゴムによって、顔の凹凸形状にぴったりフィットします。

それが、今も販売している高性能マスク「ピッタリッチマスク」の始まりでした。

――そういう意味では、現会長が何としてでも家族を花粉から”守る”ために、高性能マスクを開発したんですね。

たしかに、そうですね。守るプロジェクトのルーツは、すでに創業者の父にあったのかもしれません。

そして、できあがったマスクを高性能マスクとして自社のECサイトで発売したところ、決して多くの人ではないですが、それを必要としてる人がいることが分かりました。

例えば、化学物質過敏症で周りの人の衣服に残る柔軟剤の匂いがダメな方。ちょっと埃のあるところでも喘息が出てしまう方。マスクと顔の隙間がなくて外からの侵入を防ぐっていう部分で、安心して使っていただけたようでした。すごくニッチなんですが、そういう方々にものすごく喜ばれてきたんです。

お礼のお手紙をいただくことも何度もありました。ある方は家族が闘病中で、家に風邪を持ち込むこともできないから、くればぁのマスクじゃないとダメなんだと。他にも、無菌室にいる家族に会いに行きたいけれど、普通のマスクだと心配だからということで、うちのマスクを購入してくれる方も。

――一般的に多いニーズではなくても、少数の方の声に寄り添って高性能マスクを開発されているのですね。

そういう切実な悩みの声を聞いてきているので、「うちのマスクじゃなきゃダメなんだ」っていうのを感じながら作ってきました。くればぁのマスクを必要としてくれる人たちの気持ちに応えたいっていう思いが結構強いですね。

ただ、コロナ禍になったとき、全国的にマスクが品切れで、うちのマスクもすぐに売り切れてしまいました。以前からいつも買ってくださっていたお客さんが、すごく悲しんでいたんです。その方にとっては、コロナだからじゃなくて、すでに生活の必需品だったわけです。

他の商品ではなくて、くればぁのマスクを切実に必要としている人がいるということを、改めて実感しました。そのときの思いもあって、「守るプロジェクト」の取り組みをしています。

――防水シートについては、いつごろから、どのような考えで、開発・販売されたのでしょうか?

2015年頃だったと思いますが、記録的豪雨や大型台風などの水害が各地で多発していました。甚大な浸水被害があったというニュースを見ていて、「うちの高機能メッシュで何か役に立てないかな」というのがきっかけでした。

そこで開発したのが、家屋を浸水から守る防水シートです。表面は耐水圧性と超撥水性を兼ね備え、裏面は水に馴染みやすい特殊加工を施した製品で、「空気は通すが、水は通さない」というのが特徴です。水圧がかかることでシートと壁の隙間がぴったり埋まり、建物内への浸水を防ぐことができます。

その後も年々豪雨災害は続き、水害対策は社会課題としても関心が高くなっていきました。特に事業所や店舗を多く持つ企業さんにとっては浸水を防ぐというのは大きな課題で、BCP(事業継続計画)や災害備蓄の観点からも、防水シートの需要が大きくなりました。

――高性能マスクも防水シートも早くから製品化されていますが、病気の予防や水害対策というのは、今では重要な社会課題になっています。そういう意味では、「守るプロジェクト」の意義は大きいですね。

そうですね。コロナ禍を機に感染対策への意識は社会的にすごく高まったと思います。一方、防災については、その社会的な重要性の割に、私たち市民の意識の面ではまだ十分とは言えないように感じます。

政府も「自助・共助・公助」を掲げたりしていますが、「自助」についてはすごく個人差があるように感じています。

最近の行政や自治体の考えとしては、まず避難所に行くということは推奨していないんですよね。生活継続が可能なら「自宅がより良い避難所」という考えです。だからこそ、自宅の安全性の強化や災害備蓄の準備ということが、より重要になっています。

くればぁが今年発売した「魔法のポケット」のコンセプトにもなっていますが、「非日常を、日常に」というフェーズフリーという考え方も、少しずつ広まってきています。

――たしかにコロナ禍で感染症への意識は高まりましたが、災害対策については、自分が被災したわけではないと、どこか当事者意識が弱いような自覚があります。

自治体が啓蒙活動や防災訓練などのいろいろな取り組みをしたり、多くの企業が様々な防災グッズや災害時に役立つ商品を販売したり、社会全体としては災害対策への動きは増えていると思います。

でも、市民レベルでは、「いざというときは行政が何とかしてくれるだろう」という感覚が強く残っているような気がします。また、さきほどの避難所の例のように、けっこう古い防災知識のままアップデートされていない人も多いのではと思います。ある年齢以上の方には、その傾向が多いように感じます。

例えば、十数年前と比べても夏の猛暑は年々ひどくなっていますが、昔の感覚でエアコンをつけずにいて、熱中症や脱水症状で亡くなられるというニュースが毎年多くあります。また、世代問わず今ではスマホは必需品ですが、防災グッズを準備している家庭であっても、蓄電やモバイルバッテリーなどの災害時の電源の準備はできていないことも多いようです。

そういう時代の変化がある中で、各家庭ではどのように災害に備えているんだろう…と、心配になります。

――気候変動もありますし、社会の変化もあります。時代が変わっていく中では、情報発信や啓発活動は大事ですね。

本当にそうですね。子育てをしていると感じるのですが、今の子どもたちって、保育園や学校で避難訓練や防災学習とかをすごくしっかり経験しているんですよね。私自身、子育てを通して防災への意識が高まったり、子どもから教わることもあったりします。

でも、独身世帯や高齢世帯の場合、そういった最近の防災情報を知る機会がなかなかないのだろうと思います。

防災の意識を高めることも大事ですが、必要な情報をアップデートするというのは最低限必要なことだと思います。

――そういう意味では、守るプロジェクトには、防災商品での対応だけでなく、情報発信や啓発活動も含まれるのでしょうか?

はい。そういった活動も、今後はやっていきたいなと思っています。人によって、世代によって、”守る”という意識のギャップがあると感じていますので。

社会貢献としてもそうですが、社会の防災意識を高めることで、防災関連の商品の購入につながるということもあるかもしれません。長く取り組み続けるためにも、事業につながる分野でのCSRというのは重要なのかなと思います。

「魔法のポケット」のように、フェーズフリーを取り入れた防災商品の開発も続けていくつもりです。また、自助と公助の間を埋めるような「共助」の部分で、企業として何か地域貢献ができるといいなと思っています。

例えばのアイデアですが、地域の企業同士でネットワークして、共助の部分をそれぞれができる範囲で受け持つということができるといいですよね。当社の駐車場は道路より少し高いところに作ってあるのですが、水害時には近隣の住民の方に自家用車の待避先として提供しています。豪雨災害のときに、車が浸水して廃車になる件数も年々増加しているようです。

もちろん、当社の駐車場に何十台も停めることはできないので、他にもよい立地の会社さんの駐車場も使ってよいとかってなれば、「水害時の車の避難所マップ」のようなものを作って、地域の方に案内できるかもしれません。

くればぁでは、「ハザードマップをレスキューマップに」ということを合言葉にしていますが、災害時に役に立つ施設とか会社とかの情報を集めて、実際にレスキューマップが作れるといいですね。

――「ハザードマップをレスキューマップに」って、すごくいい合言葉ですね。

ありがとうございます。

以前、くればぁの防水シートを購入してくれたお客さんがいる都道府県を白地図に塗っていったんです。それを見ていると、やはり水害が多い地域のお客さんが購入していると気づきました。一方で、水害対策が必要な地域なのに、まだ防水シートを納品できていない地域もありました。

ハザードマップというのは災害の想定されるエリアを示したものですが、建物や車を守るために防水シートを作っている当社にとっては、その多く塗られたエリアというのは、助けにいきたい地域です。それで、「ハザードマップじゃなくて、レスキューマップにしていきたいね」という合言葉が生まれました。

ハザードレベルの高い危険だと言われている地域に、水害対策の重要性を伝えていき、その結果、防水シートを購入してもらえる。営業戦略的なアプローチですが、事業を通して社会に貢献するということが、くればぁのあるべき姿だと思っています。

ちょうど、守るプロジェクトを立ち上げた頃でしたので、社内の合言葉になりました。人や地域を守るレスキュー隊のような会社になっていきたいですね。

――製品や事業を通した社会貢献と啓発活動やCSRの取り組みなどが複合的に合わさって「守るプロジェクト」になっているのですね。お話ありがとうございました。

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