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空き家について、思う事。


空き家とは?

【空き家】
人が住まなくなった家、あるいは建物。

建物は長期間の間、人が住まなくなったり、使われなくなると空気の入れ替えなども行われなわれず、建物周りに雑草やツタ・コケ等のも生えたりして湿気過多となり建物を傷めてしまう事が多いです。

建物が傷み、構造的に弱くなってしまう事で倒壊などのリスクが高まる事もあるので、近くを歩く歩行者や近隣住民の方たちの危険性が増してしまうので、自治体によっては空き家対策の条例等もある地域もあります。

なぜ空き家が増えているのか?

①出生率の低下、少子高齢化による人口減少。

日本は1974年(昭和49年)以降、人口置換水準(合計特殊出生率2.1を下回ると、次世代の人口が自然減する)を下回る出生率となり、2022年では1.26となってます。
(話が飛んでしまうのですが、合計特殊出生率(←リンク)の全世界の数値と地域の分布を見ると、発展途上国が高めで先進国は低めとなっているのが興味深いです。経済発展をする事とリンクしているみたい)

話を戻すと、出生率が下がると子供の数が減り、人口も減る。
という事とあわせて、逆に日本は寿命が延びています。
先ほどの1974年ころで言うと、平均寿命は71歳ぐらい。
2022年の平均寿命は、83歳。
ここ50年の間で、平均寿命が10歳以上伸びているという事になります。
という事は、出生率とあわせてみると、子供の数は減るが、お年寄りは長生きしているので減らないという状況になり、人口の数としては少しずつ減っていくという状況になります。

そんなお年寄りが増えた日本で、住居の住み方も変わってきていて、核家族化という、祖父母と一緒に住まない状況も増えてきています。
祖父母が実家に住み続け、子供世帯は新たに家を建てて住む。という現象です。

年度        総人口      総住宅数
平成15年(2003年) 127,694,000人   5,389万戸
平成20年(2008年) 128,084,000人   5,759万戸
平成25年(2013年) 127,414,000人   6,063万戸
平成30年(2018年) 126,443,000人   6,242万戸

という感じで、人は減ってるけど、総住宅数は、増え続けているという現状があります。

②固定資産税の増加対策として、空き家のままにしている状況が多い。

土地(家が建っている、建っていない問わず)には、固定資産税という税金がかかります。しかも毎年。

固定資産税の算出方法としては、以下の計算式となります。

土地の固定資産税=土地の課税標準額×税率(1.4%)

なので土地の課税標準額が1,000万円の場合の固定資産税は↓

1,000万円×1.4%=14万円

という計算になります。

で、空き家が多い理由とリンクするのは、ココ。
住宅用地に対する課税標準の特例、というものがあります。
コレは「住宅の建っている土地の課税標準額は、特別に減らしてあげますよ。」というものです。

土地の面積のうち200㎡以下の部分については1/6。
200㎡を超える部分について1/3。
の標準額の減免がうけられるというもの。

なので上記の土地の課税額の場所が家が建っている土地だとすると

1,000万円×1/6×1.4%=2.333万円

と1/6程度の納税額で済むので、人が住んでいようと住んでいまいと家を壊して更地で土地をもっているより、そのままにしておいた方が納める税金が少なくて済むから、空き家のままにしてる。

という現状があります。

特例空き家等に指定されたりすると、この減免はうけられなくなってしまう事もあるので注意は必要です。

③新築住宅の供給が多すぎる。

設計事務所をやっている人が書いているnoteで、コレを書くのも何ともイヤなんですが、事実なので。

日本は昔から新築住宅の人気が高く、中古住宅の流通量が少ない国と言われています。欧米諸国と日本の中古住宅・新築住宅の割合を比較してみてみるとよくわかります。

     新築住宅(割合)       中古住宅(割合)
日本    1,174,000件(88%)        157,000件(12%)
アメリカ  1,705,000件(23%)        5,566,000件(77%)
イギリス  196,000件(11%)        1,586,000件(89%)
フランス  304,000件(29%)                   733,000件(71%)

日本の場合、新築住宅が良いモノ。中古は、予算的に致し方ない場合。みたいな考え方の部分を感じる事もありますが、このデータは少し前のデータなので、今現在もそうですし、今後はこの流れも変わってくるのではないかなと思っています。

このデータで思うのは、もちろん中古住宅の市場が活性化する事というのは良い事だとは思うのですが、日本は特に地震の多い国なので耐震という点で、古い建物の場合は、その部分をしっかりと補強するような考え方は大切かなと思います。

世界の地震の起きた場所

こちらの世界地図を見ると、どこで地震が起きやすく、どこで地震が起きにくいかは一目瞭然。
地震の少ない国であれば、中古住宅というものの耐震リスクは、低いと思うので、そういった観点もあるのかなぁと、あとは湿度とかですかね。
日本は全国的に見れば高温多湿の地域。
けど、木造の建物が圧倒的に多く、湿気対策は必須で、人が住まなくなったり湿気対策が甘い建物などは傷みも早い。
という現状もあるので、耐震と湿気対策という2点が中古住宅を直して使う時にキーポイントかなと個人的には思っています。

現状の空き家の数は?

2018年(平成30年)の調査の際の数字としては、約848万戸!
という数字となっております。
総住宅数は6,242万戸なので、13.5%、10件に1件以上は空き家があるという状況になっています。

なので、空き家を活用し、住居だけに限らず色々な使い方をしていき、空き家の数が減る事がすすめば良いなと思っています。

空き家の活用での問題点

今まで書いてきたように、空き家が増えている理由①~③がありますが、逆に、なぜ空き家が利用されずらいのか?もあわせて知っておく必要がありそうです。

空き家が利用されずらい点①・・・立地条件が悪い。

昔と今では家を建てる場所というか、何に重きをおいて、その場所に家を建てるか?という概念が時代と共に変わっていきます。
地域によって異なる部分もあると思いますが、時代をさかのぼれば、集落のある場所というのは、「水を得やすい場所」であったり、「農作業をする田んぼの近く」「漁をする海の近く」などなど、生活に密着した理由で、その場所に建てられている事も多いです。

逆に今の時代では大半の場合は「駅が近い」、「職場が近い」、「うるさくない」、「子供に危なくない」、「学校が近い」などなど、生活に密着した理由という事は変わってませんが、生活の内容が変わったので、求める場所も変わったという感じでしょうか。

なので、現在の時代に生きる人から見ると、昔に建てられた家の「場所」というのは、不便な場合も多いので、それによって中古の建物が買われていかない。という現状もありそうです。

ただ、上の文章を見てもらうと「時代」によって「生活に密着した理由」と「その場所」というものは変わるものなので、今「便利」でも、未来も「便利」かどうかは、わからないという点も、興味深いと思います。

空き家が利用されずらい点②・・・隣地の境界がはっきりしない

昔の家と家の境目というのは、その家を建てる時などに当人同士で了解を得て、ここから先が私の家ね。という場所を決めている事も多く、そこに樹を植えたり、石を置いたりというケースもあります。
ただ、樹や石では、おおよその位置までしか、わかりませんし、その当人同士で決めた当人は、すでにこの世にはおらず確認のしようもないので、しっかりとお隣さんとの境界を確定する必要があります。
土地家屋調査士さんというお仕事の人に依頼をし、隣地境界を土地を接する方たちに了解を得ながら、境界の位置を確定させるという必要が出てきます。
お隣さんが誰の土地なのかハッキリする場合は良いですが、相続等がされず登記簿にも昔の人の名前しかない。みたいな土地の場合は、少し時間がかかる場合もありますが、あとあとのトラブルを回避するという意味では大切な事です。

空き家が利用されずらい点③・・・・・築年数が古い

コレが一番の理由かなと思いますが、その建物が古く(あるいは傷んでいて古く見える)場合、それをどのように直せば、住めるようになるのかがわかりにくい。という事かなと思います。
建物の傷みの程度によっても、その修繕に費用のかかり具合も変わってきて、大金をかけてまで直す必要があるのか。という点も空き家をリノベーションして住む際の、大きなハードルになっていると思います。

また、「なぜ空き家が増えているのか?」という文章の中でも書いたように、日本は地震の多い国です。地震は昔からありましたが、その地震に対して建物が壊れにくいようにする方法というモノが、大きな地震があった後などには法律(建築基準法)が変わり、建物の作り方にまで影響を与えます。

耐震基準の年表

上の表からわかるように、1978年の宮城県沖地震はマグニチュード7.4で建物の全半壊7400戸と被害も大きかった事をうけ、その3年後の1981年に建築基準法の大改正があり、これ以降の建物を新耐震基準といいます。

まずはこの1981年より中古の建物が前か後かというのが大きなポイントかなと思います。
もちろん1981年よりも前の建物でも、適切な補強をしてあげる事で耐震性を上げていく事は可能なケースもありますが、費用もかかる事なのであわせて考える必要はあると思います。

2000年以降の建物は、より強固な建物としてあると思うので、耐震性という面で言えば安全だと思います。

耐震性と同様に、建物の断熱性能という部分も時代と共に変わってきています。
昔の家は寒く、新しい家は暖かい。
というのは、確実にあります。
昔の家は、窓ガラスはシングルガラスだったり、木のガラス戸などで熱が逃げやすい作りであったり、断熱材という概念も無い時代もあるので、熱が室内から室外へと逃げていきやすい作りのモノもあります。
新しい家というのは、窓はペアガラスは当たり前で、トリプルガラスなど窓周りは熱が逃げにくくなっていたり、断熱材の性能が高いモノもあるので、そういったモノを使い、暖かい家にしている。という違いがあります。

もちろん中古の住宅を買って断熱の工事(窓を変えて、断熱材を入れる)という事はできまし、家に住んだ時の快適性にも大きく影響を与える部分なので、大切な事だと思っています。

空き家が利用されずらい点④・・・再建築不可の物件である

個人的には、このケースでどうしたら良いかわからないまま放置されてしまっている物件も多々あるように感じます。

再建築不可とは、中古の建物が建っている土地であっても、現状の建築基準法に照らし合した時に「接道義務」というモノに適合していないために、中古の物件を壊し立て直す事ができない土地・建物があります。

接道義務というモノは、建物を建てる敷地が、道路に最低2mは接道(接している)している必要があり、その接道が取れない場合、その土地は建物の建築が原則的には不可能となります。
平成10年ころまでの物件では、法令遵守の意識が低い場合、接道を満たしていない事もあるみたいです。
そのような物件は、建替えできない土地となると、銀行から融資をもらう際も土地の価値が認めてもらいにくいので、融資もおりない可能性もあるので、より手が付けられなくなる事が多いなという印象です。

改善方法としては、隣地の土地と協議して接道がとれるように土地の一部を買ったり借りたりする事ができたりすれば、可能性はあるかと思います。

接道以外でも、田舎の方に行くと「市街化調整区域」というような地域がある時があり、そういう区域内は、市街化する事を調整している区域なので、家を建てるハードルがあり、開発許可という手続きをふむのですが、地域にもよりますが、その許可の過程で「属人性」といって、「誰が」その場所に家を建てるか?(例えば農家住宅など)も含めて、その許可がおりている事もあるので、売買がからむときは注意が必要かなと思います。

そんな中で建築士にできる事

と言った感じで、色々書いてきましたが、空き家が増えている現状と、空き家が利用されにくい問題点というモノがある中で、土地の事がからんでいる事があったり、建物の耐久性の事が関連していることもあったりと、普通に住む家を探している人達から見ると、中古の物件というのは、知る必要がある事も多く、不便も多そうだなという印象を受けると思います。

ただ、逆に言うとそんな中古の物件の中にも、直して住めば、より良くなる建物というのも少なからず存在はしています。

その場合、どういう立地であったり、築年数や、周辺環境、法律(建物関連、土地関連の)の事も詳しい必要があったりと、という面があるので、そんな場合は、建築関連の知識や情報などに詳しい、不動産屋さんや、知り合いの建築士の人、建築業者の人などにお話をしてもらい、少し先が見える事で、中古の建物を直して住むという考えもありかな?と思えることもあるかもしれないので、聞いてみてください。

まる。

まるやま設計室

丸山 雄太 yuta maruyama
tel: 080-9837-2860
e-mail: yuta.maruyama00@gmail.com

instagram: https://www.instagram.com/maruyama_sekkei/


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