待っていたのに【短編小説】
受話器から聞えてきたのは、懐かしい声だった。
「靴の修理をしてくれるって、ホームページで見たんですけど……」
少しかすれ気味の女性の声。
もう聞くことはないと思っていた。その声が受話器から聞えてくる。
由香だ。
篠塚修一は、脈拍が早まるのを感じた。
「もしもし?」
反応がないことに不審に思ったのか、受話器から様子をうかがうような声が聞えて来る。
「……ありがとうございます。修理はうけたまわっています」
黙っていたことに気づいた修一は、やや早口になりながら言った。
「あの、靴の