それでも、この道を選びたい『ショートショート』

「ドキドキするねー。講義楽しみだね。」
「満開の桜の下で、みんなで写真撮ろう。」

慣れない都会、足早に歩く人々。
晴れやかな入学式、私は1人。

入学式が終わって、逃げるように喫茶店へ入った。ミックスジュースを一気飲み。
現実逃避から、空のコップをずっと見つめている。
どうか、お願い。ミックスジュースの甘さよ、私の孤独を流してよ。空のコップは、孤独な私のよう。

「あなたには、都会は無理だと思うよ。」
私の背中を見て、泣いた母がいる。空港に向かう車の中で、無言だった父がいる。
いやに過去がリアルだ。

「それでも、この道を選びたい」
都会に負けない。

また、ミックスジュースを一気のみ。
あれ⁈私、空のコップ見てたよね？

逃げようと不思議だろうと、これが今の現実。
一緒に講義を受ける友人は、いない。
一緒に写真をとる友人は、いない。
都会に1人。

満開の桜と私だけの写真を撮った。
強がりだけど、両親へ。
満開の桜だけは、入学した私を祝ってくれてるようだ。

私は、桜色のコップを2個買った。いつか、一緒に話せる友人が出来るようにと2個。
桜色のコップに、未来の私が見えた。

※みんなのフォトギャラリーよりT_GAI様の素敵な作品をお借りしました。ありがとうございます。