拝啓、推しの死に捧ぐ歌
(この記事はネタバレを含みます。閲覧の際はご注意願います。)
オタクをしていると、現実はがむしゃらに来るように、推しの死は唐突に訪れます。
2次元オタクから3次元アイドルオタクにシフトしたあとも、推しが演じた登場人物の死を2、3度経験しました。
人が死から逃れられないように、オタクは死ネタから逃れられないものなのかもしれません。
しかし、2次元も3次元も、死というものは喪失感や不安、悲しみなど、言葉にできない様々なモヤモヤした、ぐしゃぐしゃした感情が、理不尽にのしかかって来るものです。
とても耐えられるものではありません。
そこでそんな辛い現実から逃げるために、私は「墓石」というプレイリストを作りました。
推しの死を受け入れるために、気持ちを整理するために集めた曲たちです。
今日はその曲を何曲かご紹介させてください。
曲の紹介の前に、私の印象に残っている「推しの死」をいくつか紹介します。ご興味ない方はスクロールしてください。
以下はネタバレを含みますので、ネタバレを踏みたくない方はこの先見ることをおすすめしません。
まず私が物心ついて初めて経験した推しの死が、2014年に放送されたアニメ『残業のテロル』のナインとツエルブです。
彼らの死はまだ推しの死というものを理解出来ていなかった私に重くのしかかり、学生だった私は授業中に思い出しては涙を流しておりました。
「忘れないでくれ、俺たちがいたことを」と言い残し死んで行った彼ら。その言葉通り、アニメ最終回が放送された9月になると彼らを思い出します。
今回この記事を書こうとしたのも、意識せず彼らのことを思い出したからなのかもしれません。
推しの死といって思い出すのが、2020年に放送されたアニメ『文豪とアルケミスト 審判の歯車』の志賀直哉ですね。
禍々しく紅色に光る炎に焼かれながら、覚悟を込めた微笑を浮かべる彼を目にした時、何が起きたのか分からず呆然としていました。アニメが終わったあとも呆然とし、終わった瞬間に亡霊のように布団に向かい寝込みました。飲めもしない酒を飲みました。カラオケで泣き叫びながら追悼の歌を歌いました。
その後1ヶ月の長期放送休止に入り、彼が死んだのか否か分からないまま、その間彼の存命だけを祈り続けました。1ヶ月経ち、彼が歯車を残して燃え尽きたことを知ったときの背筋を這い登る絶望感は今も忘れることができません。
「墓石」を作ったのも、この頃でした。
直近で言うと、刑事7人の井手孝也くん(演:田中樹(SixTONES))を思い出します。
登場して20秒で死なれました。私の推しの中でも最速の部類に入ります。井手くんの出で立ち、晩年、どれをとっても直視できないほど辛く、天樹刑事と共に彼の死の真相を追うのはとても覚悟が要りました。こちらも終わったあと呆然とし、そのあと放送していたばらかもんにメンタルケアを求めました。
そんな彼らの死を思いながら、「墓石」のプレイリストを紹介していきます。
1、lemon/米津玄師
言わずと知れた死ネタ界の名曲です。最早説明は不要なので省きます。
そういえばlemonの好きな歌詞でその人の性癖がわかるらしいので、私の好きな歌詞を上げておきます。
暗闇であなたの背をなぞった その輪郭を鮮明に覚えている
私のことなどどうか忘れてください そんなこと心から願うほどに 今でもあなたは私の光
切り分けた果実の片方のように 今でもあなたは私の光
2、Inside you/milet
期待はもうしない あなたはもういない
でも知らない 誰も知らない あなたがいたって
miletさんのハスキーな歌声と厳かな雰囲気から始まるこの曲。推しが死んだとき、まずこの曲を聞きます。
歌詞から見るとパートナーと別れた曲なのですが、MVのラストで首を掻き切り血が吹き出すように赤い羽根が舞い散るところや、太字で書いた歌詞を聞いて、私は死を連想しました。
志賀直哉が死んだ時にこの曲に出会い、井手孝也が死んだ時もこの曲が先ず頭の中に浮かびました。
生前は親や大切な人を失い、怪しいバイトに加担するも失敗し逃げ続け、誰にも気づかれない森の中に遺体を置かれていた井手くん。
文学を守るため、自ら火の中に飛び込み作品の世界を壊さぬために燃え尽きた志賀。
二人とも「いたこと」を知られない終わり方をしたけれど、志賀には目の前で見ていた太宰がいて、井手くんには彼の死の真相を解き明かそうとする天樹刑事や、その仲間たちがいた。
そしてそれを見ていた、視聴者の私たちが「あなたがいた」ことを知っている。
その事実をこの曲を聴く度に思い出し、私は彼らの存在を刻みつけているのです。
3、ドナーソング
どっちでもいい どっちでもいい 君がいなくなった世界に
どっちでもいい 誓ってもいい 何も価値などない
お時間ちょっといいですか。ちょっとこの曲を紹介してもいいですか。この時点で時間かなり取らせてますが、この曲も好きです。
推しがいなくなった世界に何も価値とかないんですよね。
「君」が生きていてくれたらどんなに良かったか。君がいなくなったら僕も生きていく意味なんてなくて、だからこの体がどうなったっていい。誰かのためになるならくれてやったっていい。
「君」を失う前はドナーカードを見ても運転免許証の裏を見てもなんとも思わなかった「僕」が、「君」がいなくなったあとはこの世界にも、もはや自分自身にも価値がなくなったように感じてしまったのかもしれません。
そんな投げやりな気持ちが、何かを失ったやるせない喪失感が溢れ出ている感じがします。
ドナーソングは様々な方が歌ってみたを投稿していらっましゃいますが、私が好きなカバーはアルバム「灯響プラグレス」でrairuさんが歌っているドナーソングです。
ピアノのみで奏でられたシンプルな構造に、rairuさんの力強い魂を削り思いをぶつけるような歌声や歌い方が好きで、プレイリストに入れています。
サブスクリプションで聞くことが出来ますので、お時間ある方は是非。
別の曲になりますが、個人的には同アルバムに収録されているkainさんの「心拍数♯0822」のカバーが大好きです。こちらも何卒、聞いて欲しいです。
以上です。
気になる曲はありましたでしょうか。
こうして推しの死と関連づけてnoteを書くことで、私は皆さんに推しや推しが演じた人達が生きていたことを、知って欲しかったのかもしれません。
皆さんの中で私の「墓石」のように、推しの死に関連づいたイメソンはありますか。
忘れられない推しの死はありますか。
推しだけに限りません。
たまには故人を偲ぶ歌を聴いて、彼らが「生きていた」ことを思い出すのも、ひとつの供養になるのかも知れません。
このノートを見た方は、ひっそりその曲を思い出してあげてください。
お彼岸が近づく、そんな夜のオタクの戯言でした。
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