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2024年7月の記事一覧

鈍感

鈍感

 盆を過ぎ、駅前の夜はじっとりとした熱気の中にあった。拭えぬ湿気の中に漂うたばこの匂いが鼻に当たり、目前を歩く中年の男が手に差した小さな赤い光に視線が当たる。男が歩くたび、腕が振れて赤い点が暗い中で明滅する。僕はシーツやらTシャツやら何やらがぎゅうぎゅうに詰め込まれたIKEAの青いキャリーバッグを手に歩いていた。街灯が道路脇に植った低木の葉々をぼんやり照らし、その景色が歩道を沿っていた。低木の導く

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波の鰭

波の鰭

 十月も半ばを過ぎていた。〈4分ほどお待ちください〉とアナウンスが流れ、彼は窓の向こうに目をやった。電車は成午海岸で停車していた。そこには人気のない風景が広がっていて、伸び放題の草木に、トタン張りの小屋みたいなたばこ屋、その奥に見える竹林には霧が立ち込めていた。朝の五時、外はまだ夜と朝の混じるせいで青白い。
 霧の中に向かって女の子がひとり、歩いて行くのが見えた。形のいいショートヘアに黒のレザージ

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