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卒業おめでとう

『学生の頃一番頑張ったことは何か。』
『学生の頃の一番の思い出は何か。』

面接で何か、機械的に聞かれて、聞かれた側は面接対策の参考書を読んで覚えた内容を頑張って復唱する。

かくいうこの私でさえももし面接で聞かれたら面接対策で読んだ内容を無難に答えるかもしれない。無難に答えようとするがあまり棒読みになるかもしれない。

けれど、いざ自分の部屋に戻って自分が毎日のように着ていた制服を見ると学生生活の思い出がとめども無く溢れ出てくる。
でも、夜布団の中で学生生活で一番大切にしていたことを考えるとどうしても思い出せない。考えが思いつかないのだ。
 それでも、もう自分は高校の頃の制服、中学の頃の制服を着ることができない。風俗やキャバクラ、コンセプトカフェなんかで制服を着て接客をしている女性。ドラマや映画で制服を着ている演者。そんな彼らでさえも当時の制服を着て活動をすることはない。みんな運営側が用意した制服かドン・キホーテで買ったコスプレ用の制服を使っている。
 全員、制服を着た学校に行ってたのにも関わらずだ。
 そして、私は自分が三年間も学んできた学校の中に入ることも許されていない。たとえ、私が教職の免許を取ってもう一度その学校に足を運んだとしても当時の再現は不可能なのだ。それでも時々、中学高校の同級生と飲みに行った時、もう一度あの生活をしてみたい。もう一度学校に通ってみたい。もう一度部活や行事を楽しみたい。そういった話をしているのだ。
 当時は、好きでもない勉強をするために、朝が苦手なのにも関わらず6時に起床して7時半には家を出るという生活。そこに冬はマラソン大会という地獄のような行事までも課されていた。1学期に失恋した彼女と同じ教室で約半年以上の生活。大量に出された宿題の数々。毎週ドラえもんを見ることを楽しみに1日を耐え切った金曜日。そんな日々でもどうして学校に行くことができたのだろうか。夜は宿題やゲームでオールした状態にも関わらず朝ちゃんと制服を着て学校に行けたのは何故なのか。
 そんな当たり前の生活が今ない。その当たり前が消えた時初めて気づく大切なもの。

 学生が終わった後、社会に出た上で人間関係の構築において大事なことは損得勘定になる。この人と付き合えば損になる。この人は今付き合っておくと得をする。今まで得があったがこれからは損になるから切ろう。こんなことが当たり前のように罷り通るのだ。
 それが社会だ。それでも私には学生時代の友達がいる。そんな彼らと半年に1回いや、1年に1回も会えないだろう。それでも会えたその時、学生の時と同じように笑い合える。バカができる。何も考えずに触れ合える。そして、当時の思い出を語り合える。その会合には決して損や得などは存在しない。ピリつかなくていい。それこそが学生時代にできた宝だ。
それは、親でも兄弟でも分かち合えない。おそらく100億円出しても1兆円出しても買うことのできない代物だ。
  そして、塾をしていてただ勉強をしているだけでなくお互いに切磋琢磨しあい、励まし合い、バカしあっている生徒たちを見てきた。そんな彼らは今でもたまに電話で「今飲んでるんだけど、先生こない?」そんなことを言ってくれる。これは、教育に携わってないと決して得ることのできない繋がりだ。
 そんな仕事をしている今だからこそ、面接の答えを私は堂々と答えることができる。『学生時代で一番頑張ったことは出会いを大切にしたことだ』と。

 けどその一方で、こんな学生もいるだろう。暴力や誹謗中傷などのいじめを受けて不登校になってしまった君。学校の空気に合わずに転校・退学した君。友達がろくにできずずっと1人で学校生活を勝ち抜いてきた君。
 そんな君たちにも卒業という日がやってきた。そして君たちはこう思うだろう。『やっと終わる』
しかし、そんな安堵感と同時に不安や絶望に苛まれている子もいるだろう。
 きっと、学生生活の三年間地獄だっただろう。辛かっただろう。寂しかっただろう。無念で泣きたくなったことだろう。
 そんな君たちだからこそ、私は強く大きな声で言いたい

『恐怖に耐え今日卒業式を迎えた君たちに心より尊敬する』と。

君たちは、この三年間で恐怖の耐える方法を身につけたのだ。逃避や忍耐。
リセット。そして、1人でも戦っていくための術。
それは全て、あなたが学生生活で一番頑張ってきて得た戦術なのだ。
大事にしてほしい。そしてそれを得ることができた君を自分自身でも褒めてほしい。
そして、それだけ苦しんだ君たちだからこそ次のステージでは楽しいこと。嬉しいことを存分に味わってほしい。もしも楽しみ方や喜び方がわからなければいつでも私に言ってきてほしい。
 この世界であなたよりちょっとだけ歳上でちょっとだけ経験値が高い私がこの世界の楽しみ方やバカになる方法をプロデュースさせてほしい。友達になってほしい。そして、その時の楽しかった思い出やバカしたことを語り合いながら飲もう。

仏教の教えにこんな言葉がある。『諸行無常』
 これは、すべてのものは、流れており、変化・消滅していくことの意味を指す。
 笑点の歌丸師匠や円楽師匠、元総理大臣の安倍晋三首相、コントの神様である志村けん師匠
 みんな、すべての国民がいつまでも現役でいてくれると信じて止まなかったのにも関わらず突然にこの世を去って私たちからいなくなった。
 諸行無常・盛者必衰それがこの世の摂理だ。
だから、学生諸君。
 もし、今が苦しくて地獄にいる状況にあるのであれば安心してほしい。必ずその地獄の時間は終わる。
 もし、今楽しくて天国にいる状況ににあるのであれば気をつけてほしい。必ずその天国の時間も終わる。
 それをよく覚えておいてほしい。だから、今を全力にそれでも柔軟に楽しみつつ流れに任せる方法を身につけてほしい。
 これには答えがない。それでも自分らしく焦らずじっくり身につけてほしい。

 最後に

         卒業おめでとう。
                  
                         幸あれ。

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