もうひとつの童話の世界、12 はにわの『花子』2/3
はにわの『花子』
「図工のトンボ先生に聞いてみよか?」
「そうやね、トンボ先生ならきっと知ってるわ。」
タケルとナギサは、さっそく職員室にかけていった。
ちょうどその時、職員室からトンボ先生が出てきた。
黒い丸メガネをかけて、白の作業服を着て歩いてくる。
背が高くて、スマートでどこかトンボににている。
「トンボ先生!相談があるんやけど?」
二人は、トンボ先生をよぶと、プラタナスの木の下に連れていった。
「トンボ先生は、大和花子先生を知ってる?」
「知ってるよ。でも、どうして・・?」
「住所も分かる?」
「ああ分かるよ。でも、どうしてだい?」
こういう時はナギサの出番だ。
ナギサは、はやる気持ちを抑え、一度深呼吸すると、ゆっくりはにわの『花子』の話をした。
トンボ先生は静かに聞いていた。
とても信じられない話しだと思いながらも、子どもたちの目を見て、真剣に聞いてくれた。
トンボ先生は、しばらく考えこむと、静かに口を開いた。
「そのはにわの『花子』に会ってみたいなあ。」
今度はタケルの出番だ。
「トンボ先生、これだよ。」
背中にかくし持っていたはにわの『花子』を、そっと先生にみせた。
トンボ先生は、しばらくじっとはにわの『花子』とにらめっこしている。
「ふしぎなはにわだなあ?」
トンボ先生は、くびをかしげている。
「どうして、先生これはにわでしょ?」
「たしかに、はにわだけど、腕をくんでるはにわなんて、はじめてみた。」
いっしゅん、はにわの『花子』はかたまった。
しまった。腕をあげるのをわすれてた。
きっと、そうおもっている。
おもったしゅんかん、もううごけず、目がおよいでいた。
「私には 喋ってくれないんだ。」
あわててタケルはいった。
「緊張してるんだよ。でも僕たちにはちゃんと話してくれたよ。」
タケルは嘘じゃないと、目で訴えている。
トンボ先生は、どうしたものかとしばらく考えていたが、
「ちょっと、まっててくれるかな。」
ポケットから携帯電話をとりだすと、歩きながら誰かに電話した。
どうやら、はにわの話をしているようだ。
そして、話し終えて戻ってくると、
「大和花子先生が、明日は日曜日だから家にいるって。
隣町だから二人で歩いていけるかな?」
「はにわの『花子』もつれていっていい?」
「いいよ。大和花子先生も、きっと喜ぶと思うよ。」
トンボ先生はやさしくほほえんだ。
タケルとナギサは、トンボ先生が、二人のいったことを信じて電話して、住所をおしえてくれたことがすごくうれしかった。
「やっぱり、トンボ先生やね。」
ナギサはすなおによろこんでいる。
タケルは、
「トンボは、はにわの時代から生きてたから、きっと、トンボとはにわは仲がよかったんや。」
ひとりでへんなことを考えてなっとくしていた。
次の日の朝、タケルとナギサは、小学校で待ち合わせすると、歩いて隣町にむかった。
タケルは、はにわの『花子』をランドセルにいれている。
新聞紙で何重にも包んで、大切に、割れないようにランドセルに入れている。
「日曜日にランドセルなんて、なんかへんやね。」
「ええねん、割れたら「花子」がかわいそうやろ。」
はにわの『花子』は、大和花子先生にあえるとわかってから、うでをくんだまま、そわそわ、わくわくおちつかなかった。
三〇分ほど歩くと、教えてもらった公園の前を通り、郵便局の角を曲がり、赤い屋根の大和花子先生の家をみつけた。
ーーつづくーー
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