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いつの間にか好きになっていた
遠距離恋愛をしている彼氏の部屋。
洗面台下の収納スペースに
愛用している基礎化粧品を置いて帰る。
翌月、化粧品を使おうと収納棚を開けると
自分の化粧品の横に他人の化粧品が置いてあったらどう思うだろうか?
今の私であれば一発で
宣戦布告されとるなぁ…と思うだろう。
だが当時の私は違う。
「お母さんでも来たのかなぁ?」と呑気に首を傾げたのだった。
純粋でかわいかったと思う。だれも慰めてくれんから未来の私が抱きしめてあげたい。
実家に帰り、当時まだ一緒に住んでいた妹に
そういえばさぁと軽いノリで話したら、神妙な顔で「お姉ちゃんそれ、○○くんに問い詰めたほうがいいよ」と言われた。
そう言われても
なんで?とワケ分からん状態だった脳内お花畑の私に、こちらも12年後の私がタイムワープして優しく諭してあげたい。
あいつの言葉は全部嘘だからすぐ別れてくれ。
頼む。な?
すてきだな、と感じた相手に
すでに恋人や妻子供がいる場合、
大切な人を大切にしている前提があるからこそ
その人がすてきに見えるのであって
その人が浮気や不倫しているとか、
たとえば自分に対して何かしらの
意思表示をしてきた瞬間
あーあ、となる。
そうじゃねんだよなあ…
相手がいるとわかった瞬間
恋心は閉店ガラガラだ。
すてきなことに違いはないが
そのすてきは他の人があっての素敵なのだし
それ以上踏み込もうとは思わない。
自分の行動で誰かが傷つくのがわかっているのになぜ突き進もうと思えるのだろうか。
世の中には自分や相手にパートナーがいようが
止められない人間も一定数いることは知っているが、”止められない”ではなく、その人がそうしたいからそうしているだけだ。
自分の行動で誰かが傷つくことがわかっていて
それでも好きになりたいから好きになるのに
「どうしようもなかった」とか「いつの間にか好きになっていた」なんて、気休めを言わないでほしい。
どうかそれなりの覚悟を持ち好きになってくれ。遊びたい場合はすべてをぶち壊す覚悟でお願いしたい。
冒頭書いた彼氏かつ元夫には
この化粧品騒動の数年後に
「倫理観の塊みたいなやつだな」と皮肉を言われたが
自分が一番嫌悪するタイプの人間を好きでたまらないということが非現実的で面白かったので
私はたしかに!と答え、笑った。
好きになるならないは自分の意思で決められるしセーブもできるのに、好きになったあとではそんなのなんの意味もないんだから、ちゃんちゃらおかしい。
惚れた方が負け。好きにならせた方が勝ち。
エゴとエゴのシーソーゲームとは
本当によく言ったもんです。
いつの間にか好きになっていた
という言葉を私は信じない。
好きになろう、と思って好きになるし
好きになりたい、と思ったから好きになるのだ。
それ以外の好きがあるとするなら子孫繁栄をインプットされたこの身体の動物的本能なだけ。
互いにフリーならなにも構うことはないが、
そうじゃないならその恋心は幻想であり壮大なファンタジーなので踏み込む前に一度冷静になってほしい。
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