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映画「宇宙でいちばんあかるい屋根」の清原果耶の佇まいに儚さを知る

清原果耶はいつも儚げで凛として独りで立っている役が多い。闇を抱えてそれにのまれないように他人には分からないところで死に物狂いで抗っているような佇まい。

映画「宇宙でいちばんあかるい屋根」の彼女が演じる少女も同じだ。凛として儚げな姿がそれだけで画になる。

ひとりの不思議なおばあさん(=星ばあ)との出会いが彼女を変える。歳をとると何でもできるとうそぶくそのお婆さんを演じるのが、桃井かおり。ちょっとエキセントリックなお年寄りを演じさせるなら彼女か夏木マリしかいないだろう。ハマり役だが、夏木マリよりより作り込まずに、もう少しナチュラルに演じてくれる桃井の方が好感が持てる。

少女は隣の家に住む少し年上の男の子に片想いしている。ある日、誕生日を迎える彼の家のポストに投函したバースデーカードだったが、一晩経つと、恥ずかしくて取り戻したくなる。そんな時に不思議な力を使って取り戻したのが星ばあだ。どうやって取り戻したかといぶかる少女に、「歳をとると何でもできるようになる」と星ばあ。この、おばあちゃんでなく、おばさんでもなく、絶妙なおばあさんを桃井かおりが絶妙に演じてくれる。

そのことをきっかけに祖母と孫ほどの歳の離れたふたりの友情が始まる。口は悪いし強引な星ばあが、何事も受け身で諦めにも似た冷めきった彼女の心を徐々にとかしていく。少女は今の家族に対して大きな負い目を抱いていて、それと折り合う術を持っていなかったが、星ばあによって自分から向き合っていく。そんな少女に彼女は「しぶとく生きろよ」と語りかける。変わっていくのは少女だけではない。つかみどころのない星ばあも少女との出会いによって大きく変わっていくのだ。

ひとりの少女の成長物語であると共に、孤独な人間が無二の相手を見つけて、それによって人生をより良きものに変えていく物語と見ることもできる本作は、清原果耶の存在感を見事に掬い取った作品として後から振り返って観ても貴重な作品。


ちなみに、この映画の監督・藤井道人は「デイアンドナイト」で彼女を起用。本作以上に影のある少女を演じているので、そちらも是非。
その時の彼女の演技に感銘を受けた監督が、本作の主人公に抜擢したのだという。

さらに、本作の少女は水墨画の魅力を知り、自分でもやってみることになるのだが、清原果耶は本作のあと、2022年の映画「線は、僕を描く」で水墨画の道を歩む主人公(横浜流星が演じる)の同志的な役を演じているのも何かの縁なんでしょうか…。

「デイアンドナイト」(2019)
「宇宙でいちばんあかるい屋根」(2020)
「線は、僕を描く」(2022)

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