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【2024発明工夫展への道】その2:従来製品のリサーチ (前半)

「車輪を再発明する(re-invent the wheel)」という技術用語がある。自分の知識不足のため既にある物を新しく考えることで,不要な作業とか時間の無駄という意味でも用いられる。

発明は新規性が必須であり,何かを新しく考える時は既存技術の調査が欠かせない。「盗難防止ペーパーホルダ」の再発明をしないように,その市販製品を調べてみた。

前回の投稿(その1:テーマを決める)で,そのような製品は身近であまり見かけないと述べた。今回,本当にそうなのか改めて探してみた。

具体的には,近隣の公共施設や商業施設に行った際は必ずトイレに立ち寄りペーパーホルダの形を見て回った。

今まで気が付かなかったが,鍵付き(あるいはそれと等価)のものや,少しの改良で盗難防止が可能なものなど3タイプを見つけたので紹介する。

【タイプ1】引き抜き防止形のペーパーホルダ

ある公共施設の多目的トイレで見つけた(下の写真1)。一見,普通のホルダのように見えるが,簡単な盗難防止対策が施されている。

ホルダにロールを保持する機構として,可動式(バネ)のツメを使う方法がある。ロールを差し込むとツメが倒れ,芯の空洞部に達するとツメが真っすぐになってロールを支える。

その場合,ロールを下から差し込むタイプが多いと思う(私の印象)が,写真1のホルダはロールを前面から押し込むタイプ。ホルダの両サイドのツメが壁の方向にしか倒れない構造になっており,ロールを前面からセットすると手前に引き出すことはできない。

ロールを押し込んで外そうとしても紙が壁にぶつかるので不可能。紙がなくなると壁と芯の間にスペースができ,残った厚紙の芯は奥に押し込んで排出できる。

簡単な構造で,よく出来ていると思うが問題が2つある。1つは,紙が残り少ない時にもロールを押し込んで取り出せること。もう1つは,予備のロールが収容できないこと。

前者の問題は片方のツメを鍵でロックする構造にすればよい。後者の問題は同じホルダを2個設置すれば解決できる。しかし,コスト増に加えて新たな問題が発生する。

2つのロールが同時に使えるようになると,両方の紙の残量が同時に少なくなる状況が発生する。この現象は「両減りょうべり」と呼ばれているらしい。この場合,一方(または両方)のロールを新しくしなければならないので紙の無駄が生じる。

写真1:ロールを前方から押し込むタイプのホルダ
(ロールを前方より押し込んでセットすると引き抜くことができない構造)

【タイプ2】鍵付きペーパーホルダ

地元のJR駅隣接の公共施設(リニューアル直後でトイレも新しい)に設置されていた(写真2)。タイプ1の欠点を鍵を付けることで解決した。

写真2に示すように2連構造で予備ロールを収容できる。また,中央部の下に鍵が付いていてロールの抜き取りができない構造になっている。実際に動作させた訳ではないので,以下の動作説明は私の想像による。

最初に思い付いたのは,ネットで検索したときに見つけた製品(2013年に特許登録)で,鍵を外すとT字型(を逆にした形の)芯棒全体が前方にスライドするもので,2つのロールを左右から差し込める。詳細な構造や動作はこちら(動画あり)を参照。

もう一つの可能性として,写真1に示したホルダの片方のツメを鍵でロックする方法。写真2で言えば,左のロールでは右のツメ,右のロールでは左のツメ(つまり,中央部の隣接する2つのツメ)が1つの鍵で同時にロックできる。

ただし,この2連タイプは2つのロールが同時に使えるので,両減りょうべりの欠点は解消されていない。

写真2:鍵付きペーパーホルダ
(鍵をかけるとホルダがロックされ,紙の残量に依らずロールの抜き取りができない構造)

【タイプ3】カバー付きペーパーホルダ

近くのAショッピングモールのトイレで見かけた(下の写真3の左側)。これも実際に動作させた訳ではないので,以下の説明は私の想像による。

予備のロールが上部のケースに収納されている。下部の現用ロールを使い切ったら右のレバーを下げる。すると,厚紙の芯が最下部の受け皿に排出され,同時に予備のロールが下部にセットされる。

このままでは盗難防止にならないが,現用ロールが厚紙の芯だけになったら排出されるように改良すればよい。例えば,下部のロールの下に小さな隙間(厚紙の芯の直径と同じスリット)が開いたカバーを追加するなど。

ただし,現用ロールが残っているときに誤ってレバーを下げると,予備ロールが現用ロールの上に接触してしまう恐れがある(現用ロールが排出されないため)。こうなると予備ロールの重さのせいで現用ロールが回転できなくなりそう。

この構造は芯ありのロールに限定される。レバー操作によるため子供(特に幼児)が操作できるか疑問が残る。

写真3:上部に予備ホルダを収容できるカバー付きホルダ(左)
(レバーを下げると予備ロールがセットされ,現用ロールの芯を下の受け皿に排出する構造)


 以上,身近で見つけた3タイプのホルダの構造と特徴を紹介した。それぞれ良く出来ていると思うが,残された課題もありそうだ。

ネットで検索すると,もっと多くの盗難防止ホルダが存在する。次回は,それらを整理して(今回のタイプを含めて)まとめてみたい。

その3:従来製品のリサーチ (後半)に続く(下線部をクリック)


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