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迷子

迷子になってしまった猫を探している、
そんな悲しい貼り紙をたまに見かけることがありますが、
そのチラシがいつか剥がされているのを発見したとき、
無事に発見され、ともに暮らしていた人々の元へ帰ったのだろうか、
その真相が分からないので、
嬉しいような悲しいような、
複雑な気持ちになります。
無事に発見されているのだろうと願いますが。
そんな貼り紙を、先日、
初めて訪れた場所で見かけました。
シマウマのような黒斑の1匹の猫が、
錆びた鉄製の階段から降りてきまして、
その猫を認めたのが、
20mほど離れたところからでございましたので、
例のごとく(kittyに会ってからの習慣です)、
ちちちちちっ
そのように舌を鳴らし、
注意を惹こうと試みました。
その猫は階段の中程で、
しばし僕の方向を眺めた後、
さささっと物置を見える場所に飛び移って、
僕の見えない場所へと去って行きました。
残念だな、
そのように思っておりますと、
その猫が去った場所に、
猫の写真が貼付された貼り紙らしきものが見えまして、
僕は駆け寄るようにその貼り紙を確認しに行きますと、
この場所でいついつからこの猫の行方が分からなくなりました。
見かけた方はご一報願います。
そのような文面とともに、
迷子になった猫の2枚の写真が貼り付けてありました。
さっき見た猫と似ているぞ、
僕はそのように思い、
先の猫が去って行ったであろう場所を隈なく見渡しましたが、
すばしっこく注意深い猫のことでございますので、
残念ながら見つけられず。
このことを報告せねば、
そのような思いに駆られ、
再び貼り紙に目を移しますと、
写真の下にメールアドレスが併記されておりまして、
スマホをさっと取り出して、
早速連絡しようと思ったのですが、
メールのアプリを開いたあたりで、
ん?
記憶を手繰り寄せながら、
目の前に写る猫を見てみますと、
黒斑なのは同じなのですが、
僕が見た猫はシマウマのような黒斑で、
この写真の猫はパンダのような黒斑で、
似ているようで異なるような、
どこか違和感を覚えました。
彼女とkittyと暮らし始めてから、
野良猫を見かけるたびに、
どの毛のパターンがメスかオスか、
ということを彼女から叩き込まれておりますので、
毛色、そのパターンの違いを見分けるのは、
幾分か得意としておりますので、
自身の記憶を信じ、
持っていたスマホをしまいました。
誰かからの一報を受けて、
この場所に飼い主さんは貼り紙をしたのだろうか、
そのように推測すると、
別の猫だと見分けた?僕はなにか連絡すべきだろうか、
そのように思ったのですが、
写真とは違う猫をここで見かけました、
そのような一報は悲しいだけで、
なんの手がかりにもならないだろう、
そのように判断し、
なにもしないことにいたしました。
パソコンでタイピングされ、
メールアドレス、電話番号、写真、いなくなった日時、場所、
そのようなものを明記したものを、
この1箇所だけに貼るだろうか、
そのように想像いたしますと、
そんなわけはないだろう、
そのように思いました。
場所も異なりましたので。
ですので、
無事に発見されるまでは、
この貼り紙はここに貼られたままでいるだろう、
そのように推測しました。
もし僕が見かけた、似たような猫ではなく、
飼い主さんが探しておられる猫がそこに現れる可能性も否定できませんので、
無駄に一報を届け、
その貼り紙を外してしまうことを避けるのが最善だろうと判断いたしました。
kittyは一時の冒険心から、
僕たちが外出するときに、
脇を抜けて行くように、
外に脱走を試みるときがございましたが、
最近ではそのようなことは一切なくなりました。
ですが、いつまた冒険心を取り戻し、
脱走を試みるか分からないので、
外出するときは細心の注意を払い続けております。
kittyを貼り紙を貼って探さなければならないときが来てほしくないですが、
貼り紙を貼っておられる飼い主さんを想像しますと、
非常に心痛いものがございますので、
なによりも無事に帰宅できるよう祈るばかりでございます。
どうかパンダのような黒斑の猫が見つかりますように、
できることは祈ることしかありませんが、
心より無事を祈っております。
最近のコロナウィルスのこともそうですが、
世界に対して僕個人にできることと言いますと、
祈ることくらいですので、
些細なことで心苦しい感はありますが、
人々の安らぎの笑顔を祈っております。
少なくとも、家に帰ると、
彼女とkittyの笑顔があることに、
ほっとしております。
みなさんが同様の気持ちでありますように。

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