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大人の迷子たち

岩崎俊一著「大人の迷子たち」
本棚にある本です。

10年くらい前に買ったはずです。

なぜ買ったのか
タイトルにひかれたのか
Amazonのおすすめだつたのか
私が迷子だったのか
まったく覚えていません。

だけど今では大事な本の一つになってます。

今、Amazonを覗いたら絶版になっていました。

著者はお亡くなりになりましたが、
著名なコピーライターです。

英語を話せると、10億人と話せる。(英会話のジオス)

「残りもの」は嫌い。「最後のひとつ」は好き。(そごう・西武百貨店)

負けても楽しそうな人には、ずっと勝てない。(セゾン生命保険)

などの多くの名コピーを残しました。

この本は、フリーペーパー「SALUS」で連載していたエッセイを書籍化したものです。

うしろ足をなくした犬のこと

正月の著者の帰省を指折り数えて待つ老いた母親

娘の思い出を書いた
「この子の3歳は、たったの1年」

昭和から平成にかけての景色の中に
切なくも心温まるエピソードが綴られています。

夕暮れになると
主婦は食事の準備に立ち
手の空いた子は風呂焚きやお使いをいいつかり
家路を急ぐ父親は窓から流れる夕餉のにおいに出迎えられる
そんなふうにみんなが力を合わせ
一日の終わりに家族が集まるための準備に熱中した時代

平和で
つましく、食べるものに困らず
ほしいものに振り回されず
人と人、家族と家族がガッチリ絡み合い
助け合い、喧嘩し合い
ガチンコで向き合ってた贅沢な時代。

それを「心と物のバランスが取れていた時代」
と著者は言います。

それは、どんなに懐かしがろうが恋しかろうが、
二度と戻れない情景です。

なぜなら、私たちはあまりにも過剰な情報と、
うんざりするくらい便利な道具を持ちすぎたからです。

片付けないといけない仕事
立てた計画
大事な約束

私たちは、常に未来に向かって進む宿命の中で生きています。

それでも過去に心がひかれるのはなぜなのでしょう。

ただの感傷なのでしょうか。

だからこそ我々は、前へ前へと進み続けるのだ。流れに立ち向かうボートのように、絶え間なく過去へと押し戻されながらも。

グレート・ギャツビー/村上春樹訳

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