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乳と向き合う#5「精密検査当日②」

あれ、おかしいな。
前回、精密検査のことを詳しく書くはずが、
「ぶらり街探訪(徘徊)」の様子を呈して終わってしまいました。

そして気づけばまた月日が経過している…(既視感)


さささ、とにかく精密検査当日の続きです。

前回、

検査に向けて、「街徘徊」という中強度の運動で身体をあたため、無事に病院受付へとたどり着いた私。

『決して笑顔は見せない』強い意思を感じる受付の方に声をかけ、
「精密検査で乳腺外科を予…」
と言いかけたところで、
「お名前は?」と被せられた。

…お、おっと。私の中では試合会場にたどり着いたところであり、まだ試合開始してない。
急にジャブ喰らったぜ。でも大丈夫。散々歩いて、ウォーミングアップは十分にできてるのだ。

前回ここへ来たのは入籍前だった。
今回、予約センターの案内人には私が夫の姓に改姓したことを伝えており、病院にも予めその情報を共有して貰っていた。
それにより、こちらの病院で前回受けた精密検査結果データと今回の検査予約を連結させてもらえた。
(…改姓すると、こういうちょっとした手続きが多々あるのだと、想像力の乏しい我が夫に伝えたい気持ちが溢れる。ただの愚痴である。)

「久しぶりなので」と言われ、当たり障りのない問診票と体温計を渡された。柱の横にある血圧計で血圧も測るようにと。
ロビーの椅子に腰掛け、体温計を脇に挟みながら問診票を書く。
ピーピーピー!と体温計が割とすぐに鳴った。
脇から取り出した体温計を見る。


37.8℃

およよよ。発熱しとる。大丈夫か私。
よく考えたら、この病院に到着してから、なんだかずっとカラダがポカポカしている。
ままままさか、ここに来てコロナではあるまいな!?

…はっ!!!

先ほどの徘徊で、

すっかりカラダが温まってもうてるんや。


と、生粋の関東人の私は気づいてしまった。
アフターコロナと言われる昨今ではあるが、ここは病院。
きっと、おそらく、絶対、「37.5℃以上はお断り」となるのではないか。

焦る。
焦れば焦るほど、顔が熱くなってくるのがわかる。
普段あまり赤面しない私であるが、今、鏡を見たら茹でダコ状態になっているであろうことがわかる。顔が熱い。


落ち着け私。
今日お断りされたら、また予約を取り直して、また仕事も休まねばならない。そんなことは御免だ。
いやいやいや、今は何も考えるな。また体温上がるだろうが!

まさに「冷静と情熱の間」

1人で居るから頭こそ抱えなかったものの、側から見れば、多分ちょっと様子がおかしかったと思う。

ひとまず、体温計はおいといて血圧をはかろう。
予約時間も迫ってきている。

血圧「135/70」 

謎に上が高いけど、今はそれどころではい。




もう…どうしようもない。

私が一休さんだったら何かうまいこと言えたのに…とハンカチを噛みながら、決して笑顔を見せないクールビューティーが待つ受付へ問診票と37.8℃を示す体温計を持って行った。

「あ、書けました。へへへ…お願いします。あ、あと体温計も。へへへ…」

まさに、

笑ってごまかす


という古典的手法である。

クールビューティーは私のヘラヘラ顔には一瞥もせず、問診票と体温計を見る。

「ありがとうございま……お熱が随分と高いですね!?」

と、彼女は今度は自らのセリフに被せていた。そして私と出会ってから一番の感情の昂りを見せてくれた。

はー。もう逃げられない。

私は急に早口で身振り手振りを交えながら、
「さっき、病院の周りを結構歩いてて、カラダがかなり温まっちゃってるみたいでして…!」
と、説明した。
手で外を指差して、グルーっという手振り、更に両腕を交互に振り、歩く様子を見せた。
最後の「温まってる」の表現には、手うちわで顔をパタパタとあおいだ。おばちゃんのそれである。

クールビューティーは相変わらず無表情で、私のオーバーアクションを最後まで見つめてくれた。

そして、時計を確認し、少し困った表情を見せながら、

「もう一回測っていただけますか?」

とチャンスをくれた。セカンドチャンス到来。

このチャンス、必ずものにせねば!!

と意気込む私。
渡された体温計を挟みこむ前に、脇をパタパタ、シャツの前側をつかんでパタパタ、とにかく風を送り込んでカラダを冷やすことに専念する。



ピーーーーーー!!



脇に挟み込む前の体温計が長く鳴った。

電源を入れてから測り始めるまでに時間が経ってしまい、エラー(測定不能)となったのだ。

体温計についているボタンを押すが、アラーム音は止まったものの、エラー表示は直らない。

すごすごと受付に持っていく。
近寄る私に気付いたクールビューティーが
「測れましたか!?」と、希望に満ちた笑顔を向けてくれた。

不甲斐ない。
あなたの期待に答えられず、実に不甲斐ない。

「すみませんごめんなさい。なんか、エラーが出ちゃったみたいで。ボタン押しても直らなくって。」

ここに来て、「私は悪くなくて、なんだか体温計が不具合みたいだ」感を出す、卑怯者の私。

クールビューティーは私が差し出した体温計を見て、
「あー、、、一回エラーになると、こちらでリセット処理しないと使えないんです」といって、新しい体温計を渡してくれた。











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