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マック愛

みなさんこんにちは。
今から約25年前、私はマクドナルドでアルバイトしていました。当時調理師専門学校に通っていて、レストラン業界に進む予定だったので、他にも2箇所外食のアルバイトをしていてファーストフードにはあまり興味はなかったのですが、友人からの誘いでオープニングスタッフで面白そうだからという単純な理由でアルバイトすることになったのです。

店舗は幹線道路沿いで、高速のインターの入り口横という、交通量の多い、ドライブスルー併設店舗でした。
オープニングスタッフというのは初めての経験だったので、まだオープンしていないピカピカの店舗で研修をするというのはとても新鮮でとてもワクワクしました。正社員3名とアルバイトマネージャー2名が他店から配属になり、それ以外は全て新規入社のクルー(アルバイト従業員の総称)でした。オープンに向けて研修が進む中で、なぜかとても仕事が楽しいと感じるようになり、結果として他の2箇所のアルバイトをやめてマックに集中することにしたのです。その時は何で仕事が楽しいのか具体的にはわかりませんでしたが、今考えると社員の「熱」量が凄かったことに影響されたのではないかと思っています。

今感じる「マックの社員」のイメージとはもしかしたら違うかもしれませんが、当時直営大型店の店長は超花形と言われていました。店長の年収はかなりの金額だと噂されていました。それでも過酷な労働環境で残業代がたくさん出てって話でもないのです。マネージャーチームのシフトは3交代制になっていて、オープン(6〜15)デイ(10〜19)クローズ(15〜24)の3パターンで、きっちりと守られていたのです。社員でも上がり時間の15分後にはもうお店にいないことが殆どでした。そして、アルバイトのマネージャーやフリーターのクルーはみんな直営の社員になることに憧れていたのです。当時大卒者しか採ってなかったので、アルバイト経験者の中途採用でも狭き門でした。なので、社員や特に店長は皆から羨望の眼差しで見られていました。いつかあんな風になりたいと。余談ですが、私の勤務していた店舗の社員は、国産の高級スポーツカーを2台所有していました。羨ましい限りです(笑)

店長や社員の仕事に向き合う姿勢や「マック愛」がとても強くて、それがチームを牽引しているような感じでした。

そんな社員達を支えていたのは、もちろん店舗の業績です。
マックのピークタイムの売り上げは1時間ではなくハーフ(30分単位)でカウントしています。ピークタイムの30分でどれだけ売上を刻んでいくかが業態の生命線でした。週末のお昼はドライブスルーとカウンター6台でハーフ10万の瞬発力がありました。当時の客単価が500円前後であったことを考えると1時間で400名程度のお客様に対応していたことになります。これを実現できるマックのシステムとマニュアルが最大の強みでした。よくマックを語るときに「マニュアル的な対応しかできない」という話があがったりしますが、少なくとも私の認識ではそんなことはありませんでした。ドライブスルーの列が長くなって国道まではみだすようなことがあれば、クルーがメモを持って飛び出していき、どんどん注文を聞いて、キャッシュタイム削減に取り組んでいました。そしてピークタイムには客席をコントロールするフロアー係が必ずいて、お客様を的確な席に誘導したり、下げものをしたり、時には相席をお願いしたりすることでフロアーを管理していました。フロアー係の技量次第で満席率が変わりピークタイムの店内売上は大きく変わっていたのです。そこにはマニュアルを超越した創意工夫があり、それを称えあえる組織文化がありました。

マックには各スタッフの技術力を競う大会が年に1回開催されていました。オールジャパンクルーコンテスト(以下AJCC)という大会で、ブロック予選、地区予選、全国大会というように進んでいきます。優勝者にはなんとハワイ旅行がプレゼントされていました。ブロックの予選は、実際に営業している店舗で行われます。各ポジションに該当者が順番に入って審査員のチェックを受けます。AJCCの地区大会が開催される日は、他店のクルーがみんな見学に来るので物々しい雰囲気になっていました。(違和感を感じるお客様もいたと思います)そして店舗内でもAJCCに抜擢されるのがステイタスでした。1店舗から各ポジションに対して1名しか出れなかったからです。

マックではAJCC以外にもクルーのモチベーションを上げる取り組みが複数行われていました。中でも印象に残っているのがクルーPAMという取り組みで、店舗をヘルプのクルーに全て任せて、店舗全員で集まってレクリエーションをするというものです。BBQとかプールに行ったりしました。当時はなんだかわからないけど楽しいと感じていましたが、今思うとエンゲージメントを高めるための立派な戦略だったんだなと感じます。

当時私が感じていたのはみんなが「マック愛」に溢れていたことです。マックで働くのが楽しいし、やりがいがある。アルバイトクルーでも誇りを持っている人が沢山いました。そして導いてくれるマネージャーが沢山いました。日本の外食産業を牽引している誇りを語っていました。お店や業態に「熱」がありました。

日本マクドナルドの公式本には次のように書いてあります。
<私たちはハンバーガーを提供するビジネスではなく、ハンバーガーを提供する「ピープルビジネス」である>(レイ・クロック氏の言葉)
高いモチベーションやプライドを持って仕事に臨むクルーが、顧客満足の起点であると考え、クルーのエンゲージメントを高める文化や仕組みをつくってきた。これはまぎれもなくマクドナルド 「らしさ」であり、「強み」です。
マクドナルドには、どんなにビジネスモデルを転換し、変革を重ねても、絶対に変わらない企業文化があります。
それはいつでもどこでも同じシステムで動いていること。これはマクドナルド ビジネスの根幹でもあります。
・お客様第一主義 ・QSCV ・ピープルビジネス
マクドナルド のシステムを作り上げている価値観は創業以来変わることなくどこの国であっても同じです。

〜日本マクドナルド「挑戦と変革の経営」(東洋経済新報社)より一部抜粋〜

マクドナルドは長くに渡り、日本の外食業界をリードしてきました。その中では良いことだけではなく、沢山の苦難もあり、もう厳しいかなと思われるような場面もありましたが、それを何度も乗り越えてきたことを考えると「変わらないために変わり続ける」というマクドナルドの考え方の裏には並み外れた企業努力があったのだと考えさせられます。

これからの展望にも期待したいですね。

ブランドを愛する気持ち。それはお客様にとてもよく伝わります。私はマックに関わってそのことを学びました。飲食業界で働く多くの方が、自分達の業態を心から好きになれるように願ってますし、私自身その気持ちを強く持って事業を推進していきたいと思っています。

読んでいただきありがとうございます。

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