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<フレンチレストラン ミクニ・札幌>『素材』を引き立てるのがソースなら、『お客さま』を引き立てるのはサービス?

みなさんこんにちは。
先日、札幌にあるフレンチレストラン「ミクニ・サッポロ」で食事する機会がありました。

「ミクニ・サッポロ」は、日本のフランス料理界を牽引している三國 清三さんが運営するミクニグループのレストランです。

三国さんのフレンチは素材本来の味をとても大切にしています。そして、三国さんが北海道出身ということもあり、「ミクニサッポロ」では、北海道の旬の食材を活かした料理をいただくことができます。

料理はどれも想像を超える素晴らしいものでした。食材の力強さをしっかり引き立てる味付け。決してソースが主張してくることはありません。素晴らしいバランスです。

主張してこないのは、ソースの味付けだけではなく、接客もそうでした。

今回の食事は、料理の内容も楽しみでしたが、一流のレストランで受けるサービスもとても楽しみにしていいたのです。

お店があるフロアに入ると直ぐに、レセプションの担当者がアイコンタクトをくれます。

廊下があって距離が離れているので声をかけられることはないのですが、しっかりと「お客さまのことを認知して、歓迎しています」ということを表情で伝えてくれます。

予約の名前を告げて、入店すると私達一人ひとり(今回は妻と小学生の娘の3人)に言葉をかけてくれます。簡単な挨拶なのですが、これは一組のお客様ではなく、個人をちゃんと認識していますよというメッセージでもありました。これが実にさりげないのです。

そしてテーブルに付き、私はワインを悩んでいました。
ソムリエの方に相談すると、私の質問に対して的確に答えてくれます。

しかし、スタッフさんの方からおすすめのボトルを押してくることはありませんでした。 私は、おすすめワインのプレゼンがグイグイ来るのでは(笑)と少し期待していたのですが、肩透かしを食らった気分です。

そして、いよいよ料理が運ばれてきます。調理師学校で西洋料理を専攻していたのに、このところ滅多にフレンチのコースなんて食べない自分にとっては興味津々です。(本当はもっと勉強しなきゃと反省しています)

使っている食材や、調理方法などについてあれこれ質問しました。そうすると、どのスタッフも笑顔で答えてくれます。まるで「お客さまの質問を歓迎していますよ」と言ってくれているようです。

でも、もう少し会話したいなと思っても、スタッフさんはサッと立ち去ってしまいます。最初は少し物足りない気がしたのですが、切り替えて料理を楽しむことに集中しました。

フォアグラのトーション 
(※トーションとはサービスマンがワインの扱いなどで使用する布製ナフキンのことです。)

前菜のフォアグラのトーションです。これまた絶妙なネーミングです。

フォアグラのテリーヌの下にはレンズ豆のソテーが敷いてあります。
このレンズ豆を「トーション」に見立てているのですね。

最初にレンズ豆を少し口に入れると、素材の甘みを感じるのですが、なんか少し物足りないような気がしました。続いて、テリーヌを一口いただくと、濃厚でクリーミーな味わいが広がります。とても美味しいですが、味が濃いので白ワインを口の中に流し込みます。

そして、いよいよテリーヌとレンズ豆をあわせて食べてみました。すると、なんと絶妙な味覚。フォワグラの濃厚さをレンズ豆がしっかりと受けてめている。だからトーションって言うのかと感動しました。口の中でピラミッドが作られるとは、まさにこのことだと思いました。

レンズ豆は単品では決して主張してきません。だけどフォワグラのテリーヌと合わさった時に最高の仕事をしています。

ここで、私はあることに気付きました。

あれ?サービスが何か物足りないと思っていたけど、これはもしかして…。

ミクニのサービスマン達は、決して自分からは主張してきませんでした。これは普段カジュアルダイニングなどでのフレンドリーな接客に慣れている私にとっては少し物足りないものでした。

カジュアルダイニングでは、料理はもちろん接客や空間を合わせたトータルの居心地の良さや、気軽さが業態価値です。

カジュアルダイニングでの素晴らしい接客の話はコチラ↓

では、ミクニの最大の価値は何か? それはもちろん三国シェフの絶品料理であるはずです。そうなった時に、サービスが過度な主張を「あえて」していないのではないかと気付きました。

フォアグラのテリーヌという主役を受け止めるレンズ豆のトーションがあってはじめて料理が完成するのであれば、ミクニのサービスマンはあくまでお客様を受け止める「トーション」のような役割を目指しているのではないか。

あくまで、主役は料理を楽しむお客様。サービスマンはお客様のことをよく観察して、受容するのだけど、必要以上に前には出ない。
全ての判断はお客様側に委ねられています。

これは、まさに最高の料理を楽しむための工夫であり、芸術ですね。

とても勉強になりました。

この絶妙な距離感の作り方は、接客技術が高くないとできないと思います。

最高の料理×空間×サービス=レストランが産み出す芸術

レストランって素晴らしいですね。私にとって、最もパワーをくれる場所です。「ミクニ」さんの他のレストランにも機会があれば行ってみたいと思いました。

読んでいただきありがとうございます。

エントランスの壁には、三国シェフの写真が飾られていました。優しい表情ですね。







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