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ホンネとタテマエ

僕はシフト制で夜勤のある仕事をしている。
だから曜日感覚が薄い。
平日とか休日とかの区別はない。

当然 土曜日や日曜日に夜勤が入ることもある。

15時半頃には家を出発しないといけない。
仕事に備えて少しお昼寝もする。
平日と違うのは家族が家にいるということ。

子どもが遊びたい盛りなので そうやすやすとお昼寝はさせてもらえない。

そんな休日夜勤の醍醐味は 家族にお見送りをしてもらえるというところだ。

いってらっしゃいの一言があるのとないのでは大きな差だ。


なんとかお昼寝を終えて 風呂に入り身支度を整える僕。

長男が「パパバイバイする!」と意気込んでいる。

へへ。
可愛いヤツめ。

ねぇパパまだいかないの〜?はやくバイバイしたい〜

お見送りが楽しい長男。

見送りがあるのはとっても嬉しいんだけど なんだか早く行けと言われているような錯覚を起こす。

いや、錯覚ではない。


実際に長男はパパに早く仕事に行って欲しいのだ。

それにはふたつの理由がある。

ひとつは先も述べた通り バイバイするのが純粋に楽しいから。

それは良い。
微笑ましい。


もうひとつはママとの約束にある。

長男はパパが知らないと思っているだろう。
ママと約束をしていた時 パパはお昼寝中だったから。

でもね パパはちゃんと聞いていたんだ。

「パパが行ってからおやつにしようね」


と話をしているのを。

だから君はパパに早く仕事に行って欲しいんだ。


なんだか複雑。

見送りは素直に嬉しい。

でもその動機には不純なモノがチラついてる。

僕はこれから仕事死地に向かう。

家族僕いがいはこれからおやつタイム。

あれ?
なんだか淋しい。
心がザワザワする。

パパも混ぜてよ。
おやつタイムに。


世の中には知らなくてもいいことが多い。
何も知らずに無邪気に生きたい。

そう思わされる一幕だった。

え?
大袈裟?
たしかに。


これは長男の成長物語として語るべきだ。

彼はパパを見送ってパパを喜ばせたいタテマエを見せて、パパを早く送り出してママとのおやつタイムを楽しみたいホンネを隠していた。

フッ。
大人になったな。

本人はそんな複雑なことは考えていないだろう。
無意識にホンネとタテマエを使い分けている。

素晴らしい。


長男の成長を喜ぶタテマエと おやつに負けた悲しみのホンネを使い分けたこのエッセイ。

素晴らしい。


僕らは似たもの親子だったようだ。

パパはどんな逆境の中でも仕事に邁進するぞ。
ホンネは隠してね。

ふぁいと。


ではまた。


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