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■自分の幸せを探した結果
私にとっての医師人生での後悔は、家族計画を見誤ったこと。家庭を持ったことかもしれません。あまり大声では言えないことですが。ですが、どうしてそう思ってしまうのかというと、ちゃんと理由があります。

私は21歳、大学2年生のときに1型糖尿病になりました。だから長くは医師として働けないだろうと考えていました。1型糖尿病を患いながら、医師として働き続けることは困難だからです。だったら、短くなるであろう医師人生に夢を託すのはやめて、別の夢を見ようと思ったのです。

私にとっての夢。私にとっての幸せとは何なのかを改めて考えた時、その頃付き合っていた彼女の姿が頭に浮かびました。彼女と結婚をし、子どもを育てる。その子どもの成長を、彼女と一緒に見守って過ごしていく毎日。それはとても素敵な夢だと思いました。だから私は、研修医を終えた後すぐに、彼女と結婚をしました。

妻は「家を建てる」ことが一人前だと考える富山県の人です。私にとっても、自分の家を建てることは小さい頃からの夢でしたので、結婚をして夫婦で未来について考える時間は幸せでした。また、その頃はどうせ短い医師人生だというネガティブな感情よりも、医師としても自分の夢見た、小児神経科医を目指すぞ!という気持ちが強くなっていたので、行動力も増していました。私は金沢から東京に出て、心機一転の医師人生を歩み始めたのです。

■お金が想像以上にかかる結婚生活
専業主婦である妻は子どもを育てることが好きで、私たちの間には最終的に子どもが4人産まれました。平成21年から出産一時金は38万円です。令和5年からは50万円に引き上げられたとはいえ、有名な産科で出産すれば、時間外加算10万円、休日加算20万円を始め、とてもとても一時金では賄えません。ましてや子どもというのは出産費用だけではなく、大きくなってくると学費、食費もかかりますし、家族旅行に行けばズシンズシンとお金が吹っ飛んでいきます。

私たち夫婦は当初はマンションを買い、住んでいました。その後、子どもが増えて手狭となったので家を買い変えました。これも大きな買い物です。私は40歳になるまで大学医局に所属し、児童精神科研修や派遣病院での勤務をしていたので、貯金などできたもんじゃありません。

50歳になっても当直やバイトの毎日。タイトルである「医師人生の私の後悔」。結婚をし、子どもを4人も持ったからこそ、お金に追いかけられる時間を過ごしていると言えます。もし私が結婚をしていなければ、もし私が子どもを4人も作っていなければ、ここまでお金で苦労することもなかったでしょう。

人生を考えたときにどちらが正解というわけではありませんが、「もし」をどうしても考えてしまうわけです。

■どんな人生も「それなり」なもの
私の友人には遅くまで独身貴族を貫いていた人がいます。その彼が最近結婚し、「そばで認めてくれる人がいる人生の方がいいじゃないか」と言うこともあれば、結婚はしたけれども家庭を顧みず仕事をしていた友人が、奥さんと子どもに三下り半をつきつけられて離婚をしているのを見ると、どういう人生を選んでも、全てが幸せだということはないのだろうと考えます。

結局、何を選んでも後悔をして、くよくよしている人生が私の後悔かもしれません。医師人生を当直やバイトばかりでダメな人生だとか思うのではなく、前向きに「今日も稼ぐぞ」「患者さんのためだ!」と思えば、医師人生に対しても後悔なんて感じないのかもしれませんけどね。

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