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 私には小学校からのライバルがいる。2人して中学校を受験し、同じ中高一貫校に入学した。
 「算数は俺の方ができる」、「いや、国語は俺の方ができる」、「でも、足は俺の方が早いぞ」などと言い合う仲で、似通ったところが多く、取っ組みあうことや、ぶつかることもよくあった。ぶつかる相手がいたその頃はむしろ楽しかった。
 やがて高校生へと成長すると、そんなことはなくなり、むしろそんな仲が恥ずかしかったのか、お互いに距離感がつかめなくなり、ほとんど話をすることもなくなっていた。お互いに地元の医者の息子で、別々の大学医学部に一浪して進学した。
 お互い離れていることもあり、直接話すことはなくとも、親同士のつながりで、いろんな情報は入ってくるもの。そんななか、大学2年生のとき、私は大病を患い、入院した。入院が約1ヶ月におよび、留年という文字が見え隠れした頃、彼が入院先にやってきたのだ。
 私は入学した大学のある金沢。彼は在学先の神奈川県から遠路夜行バスで駆けつけてきたのだ。「ん?」。お互いに話さない。何を話したらいいのかわからないのだ。しばらく気まずい雰囲気が続いたが、そのうちお互いに笑い出した。涙もお互いに出てきた。ギクシャクしたことはあっても、やはり2人して変わらないのだ。安心した。語り合った。その愛顔でなんだかやっていける気がした。何もやる気がなくなっていたところ、気持ちを立て直すことができ、少しずつ勉強を始めた。
 私は結局、2ヶ月間入院した。1日に4回自己注射をしなくてはならない身体にはなったが、留年することもなく、無事に医師になった。
お互いに学会で会うと、子どもの頃のように楽しく過ごす。無邪気に心の底から笑えるのだ。まさに愛顔だ。元気づけられる。狭い世界。彼が頑張っている話を聞くこともある。無二の親友の嬉しい話だ。
たとえ離れていても同じ空の下。また会う日までお互い頑張ろう!

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