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「まなび」が「つながる」社会へ ~豊かな地域知の構築にむけて~

この投稿では、ミライ研の現在進行形のプロジェクト概要(多分に妄想あり)について記載していきます。


探究学習について

近年の学習指導要領改定に伴い、小中高の学校教育の場で「探究的な学習(以下、探究学習)」が取り入れられるようになりました。探究学習とは、「自ら問いを立て、情報を集めて分析し、発表する」学び方を言います。経済のグローバル化やAI等の技術革新により、これまでの常識が通用しないVUCA※と言われる時代に突入しております。そんな時代を生きる子どもたちが、受動的ではなく主体的に考えて行動できる、いわゆる「生きる力」を育むための取組みです。

※ VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語 

世間的には比較的新しい取組みなのですが、私にとっては、息子(今はもう大学生)がたまたま探究的な学習(PBL※)を取り入れていたオルタナティブスクールに通っていたということもあり、「探究学習」は比較的身近な取組みとして眺めてきました。

※PBL : Project Based Learning (課題解決型学習) 課題解決の過程を通じて、課題解決に必要な資質や能力を身に付ける学習方法

その学校は小中一貫校だったのですが、各学期の終わりに、子どもたちが探究成果を発表する学習発表会というイベントがありました。毎回楽しみに参観しておりましたが、時折「こ、これはもう学会レベルでは?」と感服してしまうくらい洞察に富んだ発表に出会うこともありました(多分に私のその分野における知識が浅いため、ということもあるが)。

中学生(小学生だったかも)にして、大人と一緒に山歩きしながら山城考察をしている子がいたり、ツリーハウスを立てるために建築士の方にアドバイスを聞きに行く子がいたり。探究のテーマにもよりますが、その道のプロの知見が反映された内容は、小中学生の学習発表会と侮れない、見応えのあるイベントだったと記憶しています。

とにかく、関心をもったテーマについて学んだことを活き活きと発表する子供達を目にする度、VUCAの時代においては、単に教科書をなぞるだけの教科教育ではなく、いかに子供達の興味関心の幅を広げるか、関心を持ったテーマをより深く探究できるようにいかに伴走するか(面白がって盛り上げてあげるか)が、教育に関わる大人のスタンスとしては大事なのだろうなと感じておりました。

教育現場の課題

反面、探究学習のような機会を活かすのも殺すのも、先生方(と周りの大人)の力量次第とも感じていました。今後先生方への負担はより大きくなるのではと思っておりましたが、やはり、教育の現場においては既に多くの課題が顕在化しているようです。

認定特定非営利活動法人カタリバが、2022年12月から2023年2月にかけて、学校で探究学習をサポートしている教員が感じている課題についてのアンケート調査を実施しています。結果は教員の約95%がカリキュラムの設計や運営体制、生徒が設定したテーマの知識・人脈がない等、何らか課題を感じているとのこと(2023カタリバ調べ)。

子供達に良質な探究学習の機会提供するためには、現場の学校の先生方の努力のみではなく、民間企業はじめ、大人が積極的に教育に関与する仕組みが必須となってきているのかもしれません。

NTT東日本の探究学習に関する取組み

私共NTT東日本でも教育機関と連携し、新たな探究的な教育機会の創出に取り組んでおり、既に以下のような取組みも開始しております。  

①地域の課題解決に向けた産官学連携による探究学習プログラムの実施について ~地域と高校生をつなぎ、新たな価値創造を実現~


②eスポーツで交流する中学生と高齢者——近畿日本ツーリストとNTT東日本グループが作る「探究学習」

特に前者は、NTT東日本が地域の課題解決・価値創造の取り組みから得たノウハウを都市圏の高校生に提供し、高校生がそのノウハウを活用することで、自らが興味関心を持つ地域課題の解決をめざすという営みになります。

課題を抱える地域を生徒が実際に訪問し、住民との対話・生活体験等を行う機会を創出することで、地域社会と繋がったより実践的な学びを推進することを目指しています。

ミライ研究所がめざすもの ~探究学習をトリガーとした地域価値創造~

現在、ミライ研もこの取組みと連携し、地域社会における新たな価値創造モデルの構築を目指しております。

社会課題に関心を持つ都会の高校生が、リアルな地方の課題に触れた時、彼ら彼女らの中にどのような意識変容が生まれるのか? 地域外の子ども達に伝え、対話することで、地域住民の意識はどのように変わるのか?

「探究学習」という営みが、学習者側の地域愛の向上、受入地域のシビックプライドの醸成にどのような影響を与えるのか。それらの意識変容がもたらす社会的価値を検証していこうと思っています。  

また、地域をベースにした探究の成果が、その学習者や学校内にのみ留まらず、きちんと地域に還元される仕組みを作りたいとも考えています。都会の高校生の探究学習のアウトプットは、現地の子供達の地域学習や、住民の生涯学習の有益なインプットとなりえるのではないか。そこから生まれるナレッジが、他の学習者、研究者を刺激することで新たなイノベーションが生み出されるのではないか。

探究学習を契機とした「知の循環」を創出されれば、デジタル空間上に豊かな地域の知識(regional knowledge)が構築されるのではないかと考えています。それにより、ネット上で検索される機会が増えることで、その地域を知り・関心を持つ人が増えるだけではなく、地域の住民にとっても、郷土愛やシビックプライドを育む効果が生み出せるのではないかと、以下のような仮説を立ててみました。

現在この仮説の下、探究学習成果のデジタルアーカイブ化手法や、より多くの方に参照してもらうためのプラットフォームの在り方を調査しております。

地域を学ぶ方、地域で学ぶ方、そんな世代・エリアを超えた探究者同士をゆるやかに繋ぐことで、豊かな地域知を形成させる。それによって地域の魅力を高め、その土地に関わる人、関係人口を増やすことで地域課題の解決を促す。「探究学習」を契機とした知識循環による地方の活性化を実現していきたいです。 


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