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1番目アタール、アタール・プリジオス

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自作の小説をまとめています。連載中です。 天才占星天文学者を名乗る不思議な『水晶玉』アタール・プリジオスとその弟子たちを巡る物語です。 月3〜4話くらいを目安に書いていきます。
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2024年7月の記事一覧

1番目アタール、アタール・プリジオス(19)吃音

1番目アタール、アタール・プリジオス(19)吃音

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夜明けの光が、カーテンの隙間から差し込む。

真っ黒な東の空に滲んだ白い絵の具が水に溶けてどんどん広がって、太陽の無限の色が究極の青みへと向かっていく…。

パルムはアリエルの目蓋にそっと触れる。

薄い皮膚を透かして、瞳に青白い光が灯っていた。

「アーリェ…き、きれ、い、だよ。す、てき…だよ」

うっすらと目蓋を開けると、青い光が漏れる。
目の周りに光輪が生じる。神秘な瞳が静かに大きく

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1番目アタール、アタール・プリジオス(20)予兆

1番目アタール、アタール・プリジオス(20)予兆

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あ… “神様” が、倒れた…。

ずん、という地響きと共に、肉付きのいい身体は一度だけ弾んだように見えたが、その肉の振動はすぐに収まり、鼻を潰された丸顔の大男は力なく地に沈み、動かなくなった。

アリエルは見開いた目を閉じることなく、パルムを殴ってしまった少年に向けた。

もちろん、事故である。

本当なら殴られるのは、アリエルの予定だった。
受け流して技を掛けてやるつもりだったのに、予定

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1番目アタール、アタール・プリジオス(21)視えるもの

1番目アタール、アタール・プリジオス(21)視えるもの

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全身の震えがようやく収まってきた。

床にうつ伏して、あまりの眼の痛みに思わず知らず打ち付けていた額は切れて、血が床の木目に滴り落ちる。
胃液だろうか。
口に苦味があり、透明な水っぽいものを嘔吐した跡もある。
それをぼんやりと見つめながら、アリエルは肘を付いた状態で胸を上げ、顔をゆっくりともたげた。

「…アーリェ?」

目の前に、パルムの大きな身体を支える膝があり、心配そうな声で彼の名を

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