見出し画像

北海道立近代美術館で「京都 高山寺展」を鑑賞する

夏季休暇で帰国した間に、3つの展示を鑑賞した。1つは札幌の北海道立近代美術館で開催されていた「鳥獣戯画」、もう1つは皇居三の丸尚蔵館の「いきもの賞玩」、そして森鴎外記念館だ。
他にもリストアップしていた展示が幾つかあったのだが、限られた東京での滞在期間中、ここ数年のメインがアンティーク着物屋巡りになっており、着物の柄を眺めるのも芸術鑑賞の一つだ、と割り切り、美術館巡りからは少し足が遠のいてしまった。


さて、肝心の鑑賞記録だが、
1.観たもの全てが撮影禁止
2.東京の展示には行かれる方も多いかも
3.文庫本もたくさん買ったし、機内でも映画をたくさん見たから、そのうちどれかについて書くかも
という大まかに3つの理由により、、、一番好みだった展示についてのみ記録を残そう、決めた。
もし仮に、「鳥獣戯画」を東京で鑑賞したとしても、結局はこれを選んでいたと思うが(やっぱり一番好みだから)、1年に1度の日本滞在にも関わらず、皇居ではなく高山寺を選んだ自分に、「都として江戸ではなく京都を選んだ」という若干の後ろめたさがあるため(私の都は誰が何と言おうと札幌ですが…😆)、敢えて、後付けで、三大理由を加えてみた次第だ🤫

※展示の概要

まずは展示のリンクを貼ろう(日本語だと、訳の必要がなくなり、ラクですね。その分、写真がないから、転用せねばならない手間がありますが。。。)

京都の高山寺には、中興開祖・明恵上人(1173〜1232)にまつわる文化財が数多く伝わっています。
12,000点にもおよぶ典籍文書、仏画を中心とする多種多様な絵画、優れた仏師たちが手掛けた彫刻、明恵が生きた時代の息吹を感じさせる工芸品や建築など、驚くべき質と量を誇ります。本展では、明恵の生涯とその教えをたどりつつ、最も親しまれている国宝「鳥獣戯画」をはじめとする高山寺の貴重な文化財の数々を紹介するとともに、それらの伝承を担ってきた高山寺という希有な寺院の実像に迫ります。

展示会案内より


※巻物の種類と時代

ご存知の方も多いとは思うが、「鳥獣戯画」は甲乙丙丁の4巻からなる巻物である。シマ子が訪れたのは8月の2週目のため、ちょうど"乙"の後半の巻の原本と、もっとも有名な"甲"の巻の複製が展示されていた。

HPより 展示スケジュール

※各巻の説明

各巻物の簡単な説明をすると以下の通りである。

【甲の巻】
平安時代・12世紀に作成。主に兎や亀等の動物や、着衣の猿等が描かれた12MTの巻物。

前半(HPより)
後半(HPより)

【乙の巻】
平安時代・12世紀に作成。獅子等の空想上の動物を含む11MTの巻物。

後半(HPより)

【丙丁の巻】
丙は平安~鎌倉時代・12~13世紀、丁は鎌倉時代・13世紀に作成。
11MTある丙では人物や首引きの様子が、9MTある丁ではお祭りや楽器等も描かれている。

上述の通り、私は乙の後半の巻の原本を見たのだが、最も有名な甲の巻の複製には各所に説明が付されており、同内容の説明書も配布されていた。
やはり、皆さんも一番馴染みがあり興味があるのがこの甲の巻だと思うので、展示説明から何か所か抜粋して紹介したいと思う。

全23紙から構成されているうちの一番最初の説明部分です。
これ、結構、湯飲みとかに使われている図かな、と。

甲の巻には動物しか描かれていないが、平安時代、鹿は神の遣い、聖獣、神鹿として信仰される尊い存在だったにも関わらず「猿の僧のお供えにされている」ということは、鳥獣戯画内では、暗に猿の方が位が高いことを意味している、と考えてよいのだろうか。

イメージ びんざさら(早稲田大学演劇博物館のサイトより)



※おまけ

おまけとして、異時同図法で有名な他の作品もいくつか紹介しておこう。

1.捨身飼虎図
→困難に窮しているものを見た時に「かわいそう」と思うだけで実際に行動しないことを戒める教え。法隆寺所蔵「玉虫厨子」の、須彌座(しゅみざ・仏像の台)の腰板(下の囲いの部分)に描かれた作品。

ネットより 「捨身飼虎図」

2.Masaccio作 「Pagamento del tributo(貢の銭)」
→「マタイによる福音書」に描かれたペトロのエピソードを題材にし、聖書の記述とは若干異なるが、時間軸が異なる三つのエピソードが同一の画面に描かれた作品。左側に魚を捕るペテロ、中央には魚から銀貨を取るように指示されるペテロ、右側には銀貨を収税吏に渡すペテロが描かれている。

Wikipediaより「Pagamento del tributo(1420年代)」

これ以外にも各種あるが、興味のある方はご自身で検索いただければと思う。

※おわりに

国宝とはいえ、謎に満ちた「鳥獣戯画」。
いつか、描かれている動物たちが当時の暮らしの中でどのような役割を担っていたかが解明される日がくるのだろうか。
知りたいけれど、妄想している方が楽しいかもな、とも思ってしまう、そんな甲の巻と、乙の巻の架空の生き物を堪能した2時間半だった。会場には、鳥獣戯画以外の作品や、明恵上人の裏話(下のリンクをどうぞ)のパネル等もあり、非常に充実した内容だったと思う。
札幌での展示は今日が最終日だが、次回、どこかの町で展示がある際には、2~3時間圏内にお住まいの方には足を運ばれることをお勧めする。

https://event.hokkaido-np.co.jp/kosanji/img/legendofmyoe/legend_of_myoe.pdf


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?