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新版画-日本版画のニューウェーブ-という題の浮世絵の展示を鑑賞する
先日、久しぶりにトリノを訪れた。
真の目的は、年末にLouvre Lensで観て興味を抱いたミイラの棺、及び古代エジプトへの知識を深めるためのエジプト博物館訪問だった。しかし幸か不幸かその10日ほど前に、偶然にもトリノへ行く前日に浮世絵の展示が始まることを知ってしまい、どうしてもそちらに心を奪われ、何とか時間を工面し、巨大なエジプト博物館との梯子に成功した。
真実を語るろうか。。。
エジプト博物館は、海外からの多くの旅行者と小中学生の社会科見学が複数あり、寧ろイタリア人の方が少ないくらいだが、それでも混雑度が酷く、普段のように自由気ままに、時間をかけたり飛ばしたりして観ることが敵わず、次第にストレスを感じ始め、途中でギブアップしたのだ。だから本来なら、平均滞在時間が3時間半とあるところ、私という人は、2時間で飽き始め、3時間で脱落したのだ。。。18ユーロも払ってこのざまである。
それに引き換え、Versaillesなどは朝一から終日いても見終わらず、次回訪れる日を日々楽しみにしているというのに。
好みや相性が混雑時の集中力にかなりの影響を及ぼすことがわかった。
それゆえ、エジプト博物館については、集中力があった部分についてピンポイントに的を絞り、いつか(脱落しなければ)別の記事で紹介したいと思う。
また前置きが長くなってしまったし、その殆どが言い訳だったという恥ずかしい話だが、気を取り直して、新版画の展示へ移ろうと思う。
まずは今回の展示の説明の抜粋をどうぞ。
伊東深水、川瀬巴水、橋口五葉をはじめとする著名な新版画の巨匠たちによる80点以上の原画を展示。彼らは、鮮やかな色彩と美しい女性像で風景を描くことにより、当時の日本の風景と混乱の本質を、郷愁のタッチで捉えた。20世紀初頭、日本の伝統的な浮世絵版画に革命をもたらし、古典的要素とモダニズムの感性を融合させた芸術運動の美と哀愁に浸る特別な機会である。
燦然と輝く顔料、メランコリックで静かな雰囲気、伝統との深い絆ととどまることのない進歩の狭間で宙に浮く。これは、伊東深水や川瀬巴水のような画家たちの作品によって1916年に正式に誕生した運動であり、彼らは浮世絵の流れである、有名な場所を描いた象徴的な風景画から離れ、廃墟や古寺、田園風景、満月や街灯に照らされた夜景など、近代化がまだ進んでいない地方や都市近郊の特徴的な風景を好んだ。
これらの印象主義的な風景は、やがて新しいタイプの美人画に加わった。美人画は、もはや有名で手の届かないモデルに捧げられたものではなく、日常生活の中で髪を結い、化粧をし、感情や夢や後悔がその目から滲み出てくるような姿で描かれ、現代の女性に捧げられた。
では作品へ移ろう。
個人的には、風景画よりも美人画に、そして何より着物の柄にそそられた。風景画も勿論数多く展示されていたので少しは紹介するが、ある程度まとめるには、自分がいいと思ったものに絞るべきだと思うので、美人画の選りすぐりの作品を中心に紹介したいと思う。
まずは入口から。
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少女から大人の女性に変わったように見えるのは私だけでしょうか?
※伊東深水の作品
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こちらはどう見ても"少女"だと思う。
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ほつれた髪にしどけない姿で鏡の前に座り、病に伏した直次郎を想い待ちわびる遊女、三千歳の内面までもが巧みに描き出された作品。
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艶っぽすぎて、うっとり。。。
この作品は2010年に90円切手にもなったようですね。もし日本に住んでいたら買っていたかも。
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新年を祝う準備で髪型を直している女性を描いた作品。
この衣紋の開き具合が絶妙ですよね?差し色の赤色の配置がたまらなく好き。
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白いうなじ…嗚呼エロス(笑)
伊東 深水(1898年2月4日 - 1972年5月8日)
大正昭和期の浮世絵師・日本画家・版画家。娘に女優の朝丘雪路がいる。
幼くして鏑木清方の門に入り、15歳の時に巽画会に入選。歌川派浮世絵の正統を継いでおり、日本画独特の柔らかな表現による美人画が有名。本妻の好子をモデルに大作を数多く発表し評価を高めた。戦後は美人画とも並行し、個人的に独自の題材で日本画を制作することが多かった。
※芸者たち
余談だが、大昔、テレビのどこかのチャンネルのNG集で、中井美穂アナが、「芸達者」を「芸者たち」と読み間違えたのをいまだに覚えていて、芸者が複数いる場面を見るたびに、中井さんのことがチラッと頭をよぎる😂
中井さん、まだアナウンサーをされているのでしょうかね?
地上デジタルになる数年前に日本のテレビを見るのを辞め、数年間映画しか見ず、その後渡伊したため、今や日本のテレビのことがさっぱり。。。
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若いのにお疲れですね😅
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(右)琴と三味線と2人の芸者
※橋口五葉の作品
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こんなのをチラッと見せるセンスと心意気、さすがです。
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歌麿の「婦人相学十躰 髪すき」(1802-03年)や、 ロセッティの「レディ・リリス (※)」の影響がしばしば指摘されるという作品。
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リリス (Lilith) は、ユダヤの伝承において男児を害すると信じられていた女性の悪霊。
ユダヤ教の宗教文書タルムードおよびミドラーシュにおいては、夜の妖怪である。またアダムの最初の妻とされ、アダムとリリスの交わりから悪霊たちが生まれたと言われる。アダムと別れてからも無数の悪霊たちを生み出したとされ、13世紀のカバラ文献では悪霊の君主であるサマエルの伴侶とされた。サタンの妻になったという俗説もある。
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かなり頭が小さく描かれて洋風だけれど、細い目、白いうなじ、なで肩、小さい口…となんと艶めかしいことでしょう。
橋口 五葉(1881年12月21日 - 1921年2月24日)
明治末から大正期にかけて文学書の装幀作家、浮世絵研究者として活躍したが、最晩年、新版画作家として新境地を開こうとした矢先に急死した。アール・ヌーヴォー調の装幀本、「大正の歌麿」と形容された美人画を残している。
※その他の作家の作品
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伊東深水を凌ぐとも言われた美人画の名手だそうだが、そういわれてみれば確かに、上の「高砂染浴衣美人百姿」の女性と雰囲気が似ている気がする。
(日本画には疎いので、シマ子、そんなことも知らないのか、と思われた方、申し訳ありません。大学では主にイタリアの美術と、仏教美術の基本を学び、卒論はロココにしたので---フランスの美術を教える教授が一人としていない中、敢えてフランス、敢えてロココ、というところが、もう既に、破天荒な人生の駆け出しだった気がする(😅)---、美人画は全く無知識なのです。)
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このタイトルなだけあって、白檀とか沈香とか、そいいう香りがほのかに漂ってきそうな作品。
桜とかライラックとかいう爽やかで甘い香りではなさそうな気がする。。。
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こ、これはもう…切れ長の目と大胆ボディが、たっ、大変っ💦
※竹久夢二の作品
夢二の作品は、今回は雑誌等の表紙しか飾られていなかった。
しかし敢えて有名だからこそ、今回は外して、小さなサイズの作品を数点展示した感じがする。というのは、浮世絵と言えば誰もがイメージし、ヨーロッパで展示される定番の北斎・広重・歌麿を完全に扱わない構成にした内容だからだ。だからこそ私も、Noteにも書き残しておこうかと思った次第だ。
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幼い頃に声楽家の母を亡くした少女が父をも失い、万策尽きた時に思いがけなく救いの手が現われ、やがて成功と愛情とを勝ち得るという成功物語を歌劇にしたものらしい。
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※中原淳一の作品
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昭和22年に平凡社で創刊した少女向け雑誌。
"12ヵ月のコーディネートやヘアスタイルなど見どころ満載、日本中の少女たちを魅了した胸がときめく素敵な1冊"という説明がある。
※風景画(少しだけ)
折角なので、風景画も少し載せておこう。四季折々あったので、春から順に好みの作品をまとめてみた。
〈春〉
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〈夏・秋〉
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〈冬〉
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風景画については、青を基調とした最も暗い色調から、夕日や船灯籠の光に照らされた海の風景、満開の桜の木々等、理想的で情緒的な作品が多く展示されていた。
じっと見つめるだけで、描かれた時間・場所の匂いや音が伝わってきそうな素直な作品たちに、束の間、自分が2024年のトリノにいることを忘れさせられたひと時だった。
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